英国NCAとIWFが保護者向けガイダンスを公開。学校脅迫の実例も

英国NCAとIWFが保護者向けガイダンスを公開。学校脅迫の実例も

子どもの写真をSNSに投稿する行為が、AI画像生成の素材として狙われている。英国の国家犯罪対策庁(NCA)とインターネット監視財団(IWF)が、保護者向けのガイダンスを公開した。


学校サイトの写真が性的虐待画像に変わるまで

発端は英国の中等学校で起きた。犯罪集団が学校のウェブサイトやSNSから生徒の写真を収集し、AIで100件以上の児童性的虐待画像を生成した。学校に画像を送りつけ、公開すると脅して金銭を要求した。

IWFはこの画像のうち約150件を英国法上のCSAM(児童性的虐待素材)と判定し、デジタルフィンガープリントを作成してテクノロジー企業と共有した。拡散を防ぐための措置だった。

この事件は孤立した事例ではない。英国オンライン被害早期警戒作業グループ(EWWG)は、同様の手口で学校が標的になるのは「時間の問題」と警告している

こうした脅威の拡大を受けて、NCAとIWFは2026年7月3日、保護者・養育者向けのガイダンスを公開した。

8029件の画像と動画。260倍に跳ね上がった動画

IWFの2025年実績報告によれば、同年に確認されたAI生成の児童性的虐待画像・動画は8029件で、前年から14%増加した。

とくに急激な変化を見せたのが動画だ。2024年にIWFが確認したAI生成の児童性的虐待動画は13件だった。2025年は3443件。260倍を超える。

AI生成の児童性的虐待動画(IWF確認件数)
※IWF(インターネット監視財団)2025年実績報告

この3443件のうち65%は、英国法で最も深刻なカテゴリAに分類された。非AI生成の動画におけるカテゴリAの割合は43%で、AI生成素材のほうがより過激な内容を含む傾向が明らかになっている。

背景にはオープンソースの動画生成モデルの拡散がある。2025年に複数のモデルが公開され、技術的な障壁が大幅に下がったとIWFは報告書で指摘している。IWFのアナリストによれば、最近のAI生成動画は実際の映像との区別がつかない水準に達している。

ガイダンスが求める3つの行動

ガイダンスは、子どもの写真のオンライン投稿を禁じてはいない。リスクを把握したうえで判断できる状態を目指している。

求められる行動は3つに分かれる。

第一に、SNSのプライバシー設定の見直し。プロフィールを非公開にし、投稿の閲覧範囲を限定すること。写真を共有したい場合は「親しい友達」グループの作成や、閲覧者を選別する機能の利用が推奨されている。

第二に、既存の投稿のチェック。子どもの顔、制服、学校名が識別できる写真が公開状態のまま残っていないか。友人や親族が過去に投稿した画像も含めて確認し、必要なら削除や非公開化を依頼する。

第三に、画像使用の同意の再確認。学校やクラブに署名した同意書を見直し、自分の考えが変わっていれば同意を撤回してよいと明記されている。

「シェアレンティング」がAIに拾われる構造

親が子どもの写真や動画をSNSに投稿する行為を、英語圏では「シェアレンティング」と呼ぶ。2016年にコリンズ英語辞典に収録されたこの言葉は、以前からプライバシーの観点で議論されてきた。

AI画像生成技術の普及により、その議論の質が変わった。ヌーディファイアプリ(衣服除去アプリ)は公開設定の投稿から顔写真を抜き取り、服を消す加工を施す。参照画像が1枚あれば足りる。ディープフェイク技術を組み合わせれば、実在する子どもの顔を架空の身体と合成することもできる。

IWFのケリー・スミス(Kerry Smith)CEOは、NCA公式サイトでの発表の中で、写真の公開を一律に止めるよう求めているのではなく、リスクを知ったうえで判断してほしいと述べている。

法は動いている

英国では2026年2月6日、データ利用・アクセス法2025の第138条が施行され、同意なきディープフェイクヌードの生成行為自体が犯罪となった。4月29日には犯罪・治安法2026(Crime and Policing Act 2026)が成立し、ヌーディファイツールの製造・改変・供給を犯罪化。同意なき親密画像の48時間以内の削除もプラットフォームに義務付けた。

英国法では、AIで生成された児童性的虐待画像は、漫画やイラストのような非写実的なものも含めて違法と規定されている。

法の整備は進んでいる。IWFの報告書が突きつける数字は、その法整備を上回る速度で被害が拡大している現実だ。

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