岬 徹

テクノロジー分野を中心に2024年からYouTubeで約3,000本の動画を制作。登録者4万5千人超、Xフォロワー1万人超、noteフォロワー千人超。AI、半導体、PC、ゲーム業界について、一次資料やデータを基に分析を続ける。

岬 徹
Windows 10延長サポート再延長、ユーザーが突きつけた問い

Windows 10

Windows 10延長サポート再延長、ユーザーが突きつけた問い

MicrosoftがWindows 10のESU(拡張セキュリティ更新プログラム)を2027年10月まで1年延長した。歓迎はされている。ただしWindows 11への疑念を伴う歓迎だ。 歓迎と疑念 ESU延長のニュースを扱ったRedditのとあるr/technologyスレッドで、最も多く支持を集めたコメントがある。 「5年近く経って、ようやくWindows 11が十分じゃないと認めるのか?」 Comment by u/Hungry__Hornet from discussion in technology Microsoftが延長を発表したのではない。ESUの公式ページを書き換えただけで、正式なアナウンスはなかった。それでもユーザーが読み取ったのは、Windows 11がWindows 10を置き換えられていない現実だった。 Windows 10のサポートが終了したのは2025年10月14日。約4億台のPCがWindows 11のハードウェア要件を満たせず、行き場を失った。Microsoftはその対応として個人向けESUを用意し、Microsoftアカウントでの

Microsoft Authenticator、改造端末を検知して仕事用アカウントを強制削除へ

セキュリティ

Microsoft Authenticator、改造端末を検知して仕事用アカウントを強制削除へ

Microsoft Authenticatorが、脱獄やルート化された端末で職場・学校アカウントの使用を段階的に遮断する。対象はMicrosoft Entra ID資格情報のみで、個人アカウントやサードパーティの2FAコードは対象外だ。Microsoftが管理ポータルで対象範囲を明確にしたことで、3月の初報以来続いていた「結局、誰が困るのか」という疑問に一応の答えが出た。 対象はEntra IDのみ。個人アカウントは無関係 対象になるのは、Microsoft Entra ID(旧Azure Active Directory)の資格情報だけだ。Microsoftは公式サポートページでこの点を明示している。会社・学校・大学から発行されたMicrosoftアカウントでMicrosoft 365、Teams、Outlook、Azure、Intuneなどにログインしている場合に影響が及ぶ。 個人のMicrosoftアカウント(Outlook.comやHotmail)は対象外で、Authenticatorに登録したサードパーティの2FAコードにも制限はかからない。GitHubやCloudf

ソニー西野社長、PS6の「大幅な赤字販売はしない」と明言

PlayStation

ソニー西野社長、PS6の「大幅な赤字販売はしない」と明言

PS6の製造コストが1000ドルに迫るという試算が出回る中、SIE社長の西野秀明(Hideaki Nishino)氏が投資家向けの場で次世代機の価格方針に踏み込んだ。コスト増を全額は吸収できないと認めつつ、メモリ高騰を逆手に取るクラウド戦略にも言及している。 核心は「大幅な赤字では売らない」 6月5日に開催されたソニーグループのゲーム&ネットワークサービス(G&NS)部門の事業説明会のQ&Aサマリーが、6月末に公開された。投資家との質疑応答で、西野氏はハードウェアの価格戦略について問われ、二つの原則を示した。 一つ目は、部品コストの上昇を全て吸収することは現実的でないという認識。PS5はすでに値上げを実施しており(日本では4月2日に最大1万8000円の値上げ)、それでも販売は計画どおりに進んでいるという。 二つ目は、ハードウェアを大幅な赤字で販売する意思がないこと。 この二つを並べると、方向性がはっきりする。PS3のように1台あたり数万円の逆ザヤを覚悟して市場に投入するやり方は、もうやらない。かといって、コスト増をそのまま小売価格に転嫁するとも言い切っていない。西野氏が繰り

BISが1兆ドルのAI投資ブームに崩壊リスクを警告

AI

BISが1兆ドルのAI投資ブームに崩壊リスクを警告

国際決済銀行(BIS)が6月28日に公開した2026年版年次経済報告は、AIへの設備投資の急膨張を1830年代の運河狂騒からドットコムバブルまでの過剰投資と同列に並べ、投資の反転が世界的な景気後退を招きうると指摘した。 「中央銀行の中央銀行」が出した診断 BISは各国の中央銀行を束ねる国際機関であり、年に一度の経済報告は金融政策の方向性に影響を及ぼす。その報告が、AI投資の現状を「進歩と危機」と題した章の中核に据えた。 5大ハイパースケーラー、アルファベット、アマゾン、メタ、マイクロソフト、オラクルが2025年から2026年にかけてAI関連の設備投資に1兆ドル(約162兆円)超を注ぎ込む見通しだと、報告書は集計している。 報告書が踏み込んだのは、この投資の規模そのものより、収益を超えた資金流出が常態化しているという構造の指摘だった。設備投資は各社の利益とフリーキャッシュフローを上回り、一部は社債発行で不足分を埋めている。利益で賄いきれない投資を借金で補い、それでも減速できない。降りた側が市場を失うと全社が信じている構図だ。 歴史が繰り返すと言っているのではない BISが

Adrenalin 26.6.4、FSR 4.1のクラッシュを修正

GPU

Adrenalin 26.6.4、FSR 4.1のクラッシュを修正

6月だけでRadeonドライバが4本出た。FSR 4.1をRX 7000シリーズに正式対応させたAdrenalin 26.6.2が不具合を2つ抱えたまま世に出て、AMDは1週間で修正を終えた。26.6.4はそのWHQL認証版で、FSR 4.1有効時のゲームクラッシュに初めて対処している。 修正された2つの問題 AMDは現地時間6月29日、Adrenalin Edition 26.6.4を公開した。修正内容は2件のみ。新機能やゲーム対応はない。 1件目は、Adrenalin 26.6.2をWindows 10環境のRadeon RX 7000シリーズ以降にインストールした際の断続的な不具合。デバイスマネージャーにCode 43エラーが出てGPUが認識不能になる症状で、6月24日のホットフィックス26.6.3で既に対処済み。26.6.4はこの修正をWHQL認証版に統合した。 2件目が今回の本題だ。Radeon RX 7000シリーズでFSR Upscaling 4.1を有効にした際、一部のゲームで断続的にクラッシュが発生する問題が解消された。26.6.

Apple、iOS 26.5.2で29件の修正を前倒し配布

Apple

Apple、iOS 26.5.2で29件の修正を前倒し配布

Appleが現地時間6月29日にリリースしたiOS 26.5.2は、29件のセキュリティ修正だけを載せたアップデートだ。だが注目すべきは修正の中身ではなく、このアップデートが出たこと自体にある。 セキュリティ修正の前倒しという異例 iOS 26.5.2で修正された29件の脆弱性は、すべてiOS 26.6のベータ版に先行投入されていたものだ。WebKit関連が大半を占め、カーネルの修正も3件含まれている。iPadOS 26.5.2、macOS Tahoe 26.5.2も同日リリースされた。 従来、Appleはセキュリティ修正を次のバージョン(iOS 26.6など)にまとめて配布してきた。例外はゼロデイ脆弱性が実際に悪用されている場合で、そのときだけ緊急パッチが出る。今回修正された29件はいずれも悪用が確認されていない。にもかかわらず、AppleはiOS 26.6を待たずに修正を前倒しで切り出した。 Appleが語った理由 Appleは、AIがハッキングツールの開発を加速させており、修正の公開からユーザーの端末に届くまでの時間を圧縮する必要があると説明した。従来のリリースサイ

日産、従業員の給与・口座・社会保障番号が流出した可能性を公表

セキュリティ

日産、従業員の給与・口座・社会保障番号が流出した可能性を公表

OracleのPeopleSoftを標的としたゼロデイ攻撃の波紋が、大学から民間企業に広がった。日産北米法人が従業員データの侵害をカリフォルニア州司法長官局に届け出た。自社システムは破られていない。使っていたソフトウェアが破られた。 「数百社が標的になった攻撃で、日産は名指しされた」 日産北米法人(Nissan Americas)は現地時間6月25日付でカリフォルニア州司法長官局にデータ侵害通知を提出した。通知によれば、日産はOracleから「サイバー事象が発生し、数百社の人事記録が脅威アクターに取得された可能性がある」との連絡を受けた。その後、日産がこの攻撃で名指しの標的にされていたことが判明したという。 侵害期間は2026年5月27日から6月9日。日産がPeopleSoftで管理していた従業員情報には、給与、税務管理、人事記録が含まれる。 盗まれた可能性のあるデータは広範囲に及ぶ。連絡先情報、銀行口座情報、社会保障番号(米国)、社会保険番号(カナダ)、国民識別番号、財務・税務情報、扶養家族・受取人の情報。米国・カナダ・メキシコ・ブラジルの現職および元従業員が影響を受ける可

Red HatのArmエンジニア、80コアを捨て6コアに帰還する

Linux

Red HatのArmエンジニア、80コアを捨て6コアに帰還する

Red HatでAArch64のサポートを担当するシニアソフトウェアエンジニア、マルチン・ユシュキェヴィチ(Marcin Juszkiewicz)氏が、約11か月にわたるAArch64デスクトップ実験の終了を宣言した。80コア・3.0GHzのAmpere Altra Q80-30と128GBメモリ、AMD Radeon RX 6700 XTを組み合わせた自作マシンで日常業務をこなし続けた連載全7回の、これが最終回になる。 毎週カーネルをビルドする生活 ユシュキェヴィチ氏が2025年6月に組み上げたマシンの構成は、サーバー向けマザーボードASRock Rack ALTRAD8UD-1L2Tを軸にしたものだ。Ampere Altraはデータセンター向けプロセッサであり、デスクトップ用途は本来想定されていない。動作確認済みデバイスのリストにAMD Radeon GPUは含まれていなかった。 The end of the AArch64 desktop experiment – Marcin JuszkiewiczAfter about eleven months of using a

米最高裁、スマホの位置情報に憲法上の保護を認める。6対3でジオフェンス令状を制限

プライバシー

米最高裁、スマホの位置情報に憲法上の保護を認める。6対3でジオフェンス令状を制限

警察が地図上に円を描き、テック企業に「この範囲にいた全員のデータを出せ」と命じる。容疑者の特定が先ではなく、まず無差別にデータを集め、そこから容疑者を絞り込む。この手法に、米連邦最高裁が初めて憲法上の歯止めをかけた。 カーペンター判決の先へ 連邦最高裁は現地時間6月29日、Chatrie v. United States(事件番号25-112)において、携帯電話の位置情報の取得は合衆国憲法修正第4条が定める「捜索」に該当するとの判断を示した。6対3。法廷意見はケイガン判事が執筆し、ロバーツ長官、ソトマイヨール、カバノー、ジャクソンの各判事が加わった。ゴーサッチ判事は結論に同意しつつ、位置情報をユーザー個人の「財産」と位置づける独自の同意意見を付している。 2018年のカーペンター判決は、通信事業者が保管する基地局位置情報(CSLI)の取得に令状を義務づけた。今回の判決はその射程をさらに広げた。争点になったのはGoogleのロケーション履歴、つまりスマホのアプリが生成する位置データだ。CSLIは基地局単位で1日約101回の記録にとどまるが、ロケーション履歴は約2分ごとに位置を記録

ZLUDA v6公開。3度目の資金喪失と32bit PhysX対応

GPU

ZLUDA v6公開。3度目の資金喪失と32bit PhysX対応

ZLUDAがバージョン6をリリースした。NVIDIA以外のGPUでCUDAアプリケーションを無改変で動かす互換レイヤーが、32bit PhysXのプリアルファ対応、Blender動作、Windows対応の大幅改善を引っ提げて戻ってきた。同時に、プロジェクトを支えていた匿名スポンサーからの資金が途絶え、開発者アンジェイ・ヤニク(Andrzej Janik)氏の個人プロジェクトに回帰したことも発表された。ZLUDAが商業的な後ろ盾を失うのは、Intel、AMD、匿名スポンサーに続いて3度目になる。 核心の判断: 今回の新しい情報は、資金喪失と32bit PhysX対応の両方だが、記事の芯は「企業に繰り返し切られながら、切られるたびに技術的な成果を出して戻ってくるプロジェクトの構造」にある。 AMD GPUでPhysXが動く ZLUDAバージョン6の目玉は、32bit PhysXへのプリアルファ対応だ。 PhysXは2008年にNVIDIAが買収した物理演算エンジンで、以降はNVIDIA GPU専用のアクセラレーション機能として提供されてきた。2000年代後半から2010年代前半に

Anthropicが課金モデル変更、AmazonはClaude依存を再考

AI

Anthropicが課金モデル変更、AmazonはClaude依存を再考

80億ドルを注ぎ込んだ出資者が、出資先から値上げを告げられた。Anthropicが両社の契約における課金体系を変更し、AmazonにとってClaudeの利用コストが上昇する可能性が出てきた。AmazonはOpenAIや自社開発のNovaへの切り替えを検討しているという。 コンピューティング時間からトークン課金へ Anthropicは今年に入り、Amazonとの契約の一部を再交渉した。従来のコンピューティング時間に基づく課金から、トークン単位の課金へ移行するという内容で、新しい課金体系は来年から適用される見通しだという。 Amazonは自社のAI製品群に広くClaudeを組み込んでおり、トークン課金への移行はコスト増に直結しうる。この変更が成立した背景には、エンタープライズ顧客の急拡大がある。Amazon Bedrockを通じてClaudeを利用する顧客は10万社を超え、年間経常収益は2025年末の約90億ドルから300億ドル超へと急伸した。Anthropicは最大の出資者に対しても値上げを通せる立場になった。 「リセラーに見えるリスク」 報道によれば、AWS幹部はAmaz

Meta、退役サーバーのDDR4を独自チップで再生。サーバー25%削減

メモリ

Meta、退役サーバーのDDR4を独自チップで再生。サーバー25%削減

メモリが足りないなら、新しく買えばいい。それがデータセンターの常識だった。Metaはその前提を捨てた。退役したサーバーから引き抜いたDDR4メモリを、独自設計のCXLチップで新型サーバーに接続する。数百万台規模で、すでに稼働している。 40%のサーバーが「メモリ不足」 Metaが6月29日、コンピュータアーキテクチャの国際学会ISCA 2026で発表した論文は、同社のインフラが抱える現実から始まる。 数百万台のサーバーを運用するMetaで、約40%がメモリ容量の不足に制約されている。CPUやネットワークには余裕があるのに、メモリが先に尽きる。結果としてCPUリソースの25〜40%が遊んでいる状態になる。 サーバーの設計寿命は3〜5年。だがメモリモジュールの寿命は7〜10年ある。サーバーを退役させるたび、まだ十分に使えるDDR4メモリが一緒に廃棄されてきた。 新品のDDR5を買い増せば容量の問題は解決する。だが2026年現在、DRAMの供給は逼迫している。AI向けHBMの生産にメーカーの製造能力が集中し、汎用DRAMの供給は絞られている。DDR4のスポット価格はDDR5やHB

Linuxゲーミングのアンチチート問題にオープンソースの対案が出た

Linux

Linuxゲーミングのアンチチート問題にオープンソースの対案が出た

PCゲームのオンライン対戦で不正行為を防ぐアンチチートは、現在ほぼすべてがカーネルレベルで動作する。Windowsカーネルにドライバとして常駐し、プレイヤーのシステム全体を監視する。Easy Anti-Cheat、BattlEye、Riot Vanguardといった主要アンチチートはいずれもこの方式を採り、搭載タイトルは380本を超える。この設計のせいで、Linuxからはこれらのゲームを起動できない。TLACは、その構造に対するオープンソースの対案として登場した。 カーネルに入らないアンチチート TLAC(Tuncor's Local Anti-Cheat)はLinux向けに開発されたユーザーレベルのアンチチートツールで、2026年6月28日にバージョン2.0がリリースされた。開発言語はRust。MITライセンスのもとGitHubで公開されている。 既存のアンチチートとの最大の違いは、カーネル空間に侵入しない点にある。TLACはユーザー空間で動作し、ptraceとprocfsを使って対象ゲームのプロセスメモリだけを読み取る。ptraceはLinuxのデバッグ用システムコールで、

EXPO ULL対応メモリ、CL26キットは約17万8000円。AMD「同価格」発言との落差

メモリ

EXPO ULL対応メモリ、CL26キットは約17万8000円。AMD「同価格」発言との落差

G.SkillのEXPO ULL対応メモリ「Trident Z5 NeoX」が北米で販売を開始した。Computex 2026でAMDのデビッド・マカフィー(David McAfee)氏が口にした「既存のEXPOキットと実質同じ価格帯になる」という見通しを、最初の値札が否定した形になる。最上位のDDR5-6000 CL26キット(32GB)は1099.99ドル、日本円に換算すると約17万8000円。通常のEXPO対応Trident Z5 Neoの同等品(CL26、699.99ドル)より57%高い。 「同じ値段」の約束と、最大80%の現実 EXPO ULLの技術的な仕組みや600系マザーボードへのBIOS展開については既報のとおりだ。今回明らかになったのは実売価格であり、ここに焦点を絞る。 G.SkillはTrident Z5 NeoXを4つのSKUで投入した。すべてDDR5-6000、32GB(16GB×2)構成で、違いはCASレイテンシと価格にある。