EXPO ULL対応メモリ、CL26キットは約17万8000円。AMD「同価格」発言との落差
G.SkillのEXPO ULL対応メモリ「Trident Z5 NeoX」が北米で販売を開始した。Computex 2026でAMDのデビッド・マカフィー(David McAfee)氏が口にした「既存のEXPOキットと実質同じ価格帯になる」という見通しを、最初の値札が否定した形になる。最上位のDDR5-6000 CL26キット(32GB)は1099.99ドル、日本円に換算すると約17万8000円。通常のEXPO対応Trident Z5 Neoの同等品(CL26、699.99ドル)より57%高い。
「同じ値段」の約束と、最大80%の現実
EXPO ULLの技術的な仕組みや600系マザーボードへのBIOS展開については既報のとおりだ。今回明らかになったのは実売価格であり、ここに焦点を絞る。
G.SkillはTrident Z5 NeoXを4つのSKUで投入した。すべてDDR5-6000、32GB(16GB×2)構成で、違いはCASレイテンシと価格にある。
CL26モデルが1099.99ドル(通常版比+57%)、CL28が999.99ドル(+79%)、CL30が619.99ドル(+14%)、CL36が549.99ドル(+9%)。低レイテンシのSKUほど価格差が急激に広がる。CL28が最も上乗せ率が高く、約80%に達する。

| CL | NeoX (ULL対応) | Neo (通常版) | 上乗せ |
|---|---|---|---|
| CL26 | $1,099.99 | $699.99 | +57% |
| CL28 | $999.99 | $559.99 | +79% |
| CL30 | $619.99 | $544.44 | +14% |
| CL36 | $549.99 | $499.99 | +9% |
1099.99ドルという数字にはもう少し具体的な像がある。ミドルクラスのゲーミングPCが一台買える金額だ。マザーボード、CPU、GPUを合算した額にメモリ1セットが迫る。メモリ高騰が続く2026年の市場でも、これは異質だ。
マカフィー氏の発言を正確に振り返ると、AMDはモジュール価格を直接コントロールしていないと断ったうえで「パートナーからは、既存と実質同じ価格帯で投入できるとの見解を得ている」と述べていた。ULLの仕組み自体はSPDプロファイルにサブタイミングを追加するだけで、原理的にコストを押し上げる要素はない。それがAMD側の立場だった。
価格差の正体はチップ選別
価格を決めたのはG.Skillだ。ULL対応キットは通常版と同じDRAMチップを使うが、出荷に至るまでの選別工程が根本的に違う。
tRASの値がそれを物語る。NeoXの4モデルはすべてtRAS 32で統一されている。対する通常版Trident Z5 NeoのtRASは96。DDR5はデュアルサブチャネル構成とバースト長の倍増により、本来tRASが大きくなる規格だ。tRAS 32はハイエンドDDR4の水準まで引き下げた値であり、この数値で安定動作するチップを量産レベルで確保するには、相応の選別が必要になる。
動作電圧にも差がある。NeoXは全モデル1.35V。通常版はCL26で1.45V、CL28で1.40Vを要求する。低電圧で低レイテンシを両立させるには、チップの品質マージンがさらに求められる。NeoXの価格には、この選別のコストが乗っている。同じスペック帯のチップから基準を引き上げて選別すれば、通過率は下がる。不合格品が増えた分だけ、合格品に転嫁される。
ただ、CL30の上乗せが14%、CL36が9%にとどまっている事実は見落とせない。レイテンシの制約が緩い領域では選別の難易度が下がり、価格差も急速に縮まる。80%の上乗せはCL26〜CL28の超低レイテンシ帯に限った話であり、EXPO ULLという技術そのものに80%の税がかかるわけではない。
見えないサブタイミングという問題
EXPO ULLの価値を消費者が購入前に判断しにくい構造的な問題もある。
小売の商品ページに表示されるのは従来どおりCL、tRCD、tRP、tRASの4項目だけだ。EXPO ULL認証の核であるtREFI、tRRDS、tWR、VDDP電圧といったサブタイミングは公開されていない。CL26の通常版とCL26のULL版を並べたとき、表面上の違いはtRASと電圧だけで、その差がゲームで何fpsの違いになるのかを、買う前に判断する材料がない。
AMDが公表したEXPO ULLのベンチマークは、Ryzen 7 9700X環境で30タイトル以上を測定し、JEDEC標準比で平均FPS+13%、通常EXPO比で+4%という結果だった。+4%がCL26帯の57〜80%という価格上乗せに見合うかどうかは、数字を並べれば答えが見える。性能あたりのコストとしては厳しい。
ただし、EXPO ULLが狙う市場はコストパフォーマンスではない。手動チューニングに時間を割けない、あるいは割きたくないがレイテンシには妥協したくない。そういうユーザーにとって、サブタイミングまで含めた最適設定をワンクリックで適用できることが、この技術の対価になる。
メモリ高騰の中の「高級品」
DDR5メモリの市場全体が高騰している。DDR5-6000 32GBキットの最安ラインは国内で5万5000〜6万円前後まで下がってきたものの、1年前の2万円台後半からは依然として2倍以上の水準だ。
この相場の中に、CL26で約17万8000円のキットが投入された。通常版のCL26でさえ約11万3000円であることを考えると、EXPO ULLの最上位モデルは二重の意味で高い。メモリ高騰による底上げと、ULL選別によるプレミアムが重なっている。
一方で、CL36のNeoXは549.99ドル(約8万9000円)。通常版との差額は50ドル(約8000円)にすぎない。ULLのサブタイミング最適化を受けつつ、価格の上乗せを最小限に抑えたいなら、この選択肢がある。CL36でもtRASは32であり、サブタイミングの調整はプライマリタイミングとは独立して機能する。
マカフィー氏の「同価格」発言は、このCL36帯を念頭に置いていたとすれば、完全な嘘ではない。だが、消費者が「EXPO ULL」と聞いて思い浮かべるのは、技術のアピールで前面に出されたCL26やCL28の低レイテンシモデルだろう。そこに最大80%の上乗せがかかっている。「同価格」の印象からは遠い。
G.Skillは現時点でTrident Z5 NeoXの日本向け販売を発表していない。キングストン、KLEVV、TeamGroupなど他のEXPO ULLパートナーの製品も未発売であり、競合製品が出揃うことで価格が変動する可能性はある。
参照元:G.SKILL Trident Z5 NeoX RGB Series 32GB DDR5 6000 CL26
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