Chromeに垂直タブ、5年先行のEdgeは再宣伝に追われる
Google Chromeが垂直タブとイマーシブ・リーディング・モードを発表し、ブラウザ界隈は沸いている。だが同じ機能をEdgeは5年前から提供していた。それでもシェアは5〜8%のままだ。
Google Chromeが垂直タブとイマーシブ・リーディング・モードを発表し、ブラウザ界隈は沸いている。だが同じ機能をEdgeは5年前から提供していた。それでもシェアは5〜8%のままだ。
Chromeがついに垂直タブを導入した
ブラウザをめぐる議論が、奇妙な形で再燃している。2026年4月7日、GoogleはChromeに垂直タブとイマーシブ・リーディング・モードを導入すると公式ブログで発表した。タブを右クリックして「Show Tabs Vertically(タブを縦に表示)」を選ぶだけで、画面上部に並んでいたタブが左側のパネルに移動する。
Googleの説明はシンプルだ。ブラウザウィンドウの横にタブを移すことで、タブ名の全文が読めるようになり、タブグループの管理もしやすくなる。タブ数が二桁に達しても見失わずに済む、という触れ込みである。
Today we are beginning to roll out two new features designed to streamline your browser and help you maximize productivity in Chrome.(本日、ブラウザをすっきりさせ、Chromeでの生産性を最大化するための2つの新機能の提供を開始する)
ところが、この発表がテック界隈で歓迎されたこと自体、別のブラウザにとっては複雑な光景だった。垂直タブは、Chromeが「ついに」手に入れた機能だからだ。
Edgeは5年前から同じ機能を持っていた
Microsoft Edgeが垂直タブを一般提供したのは、2021年3月のEdge 89。Chromiumベースのブラウザとして初めて、タブを縦に並べる選択肢をユーザーに与えた主流ブラウザである。
つまりEdgeはChromeに5年先行していた。にもかかわらず、この事実が広く知られているとは言えない。Windows Latestの記事の書き手は、4年以上Edgeで垂直タブを使い続けていたため、Chrome導入へのお祭り騒ぎを見て呆気にとられたと書いている。
垂直タブの歴史を整理すると、もう少し話は遡る。最初に実装したのは2015年のVivaldiだった。その後、2021年にEdge、2023年にArcがローンチ時から搭載、2025年にFirefoxが136で導入、そして2026年にChromeが追随した、という順番になる。
「主流ブラウザ初」の肩書きは残った
VivaldiやTree Style Tab拡張機能を使えばもっと早くから垂直タブは実現できた。しかし主流ブラウザに最初に統合したのはEdgeで、この肩書きは誰にも奪えない。問題は、肩書きがシェアに転換されなかったことだ。
Edgeの世界シェアは2026年時点で 5〜8%の帯 から抜け出せずにいる。デスクトップ限定で10〜13%程度を行き来する水準だ。対するChromeは世界シェア65%超、デスクトップでも65〜76%を占める圧倒的な王者である。5年の先行は、この格差の前では飾り以上の意味を持てなかった。
Microsoftは慌てて自社アピールを始めた
Googleの発表から2日後、公式のMicrosoft Edge X(旧Twitter)アカウントが投稿を出した。内容は「横タブと縦タブ、どちらが好きか」というアンケートである。タイミングからして、Chromeの発表を強く意識したものだと見るほかない。
Horizontal tabs for the classics. Vertical tabs for the power‑organizers. Pick your fighter 👇 pic.twitter.com/fhBQOrVC7d
— Microsoft Edge (@MicrosoftEdge) April 9, 2026
Windows Latestの記者によれば、4月10日のEdgeアップデート後、ブラウザを開くと最初に目に入ったのは垂直タブの機能紹介ページだったという。カルーセル形式の案内の先頭に、5年前から存在する機能が置かれていた。
この行動には既視感がある。機能そのものは新しくないのに、競合が追いついた瞬間に「うちも持っていますよ」と声を上げる。第三者から見ると、自社の沈黙が報われなかった悔しさが滲んで見える光景だ。
もう一つの「逆輸入」
Googleが同時に発表したイマーシブ・リーディング・モードも、Edgeに先例がある。Edgeでは2019年からリーダーモードが搭載されており、F9キーでオンにできる。広告や余計な装飾を取り除き、本文だけを読める状態にする機能だ。
Right-click on any page and select "Open in reading mode" to remove visual distractions.(ページ上で右クリックして「リーディングモードで開く」を選ぶと、視覚的な雑音を取り除く)
Chromeの新機能の説明文だが、Edgeのリーダーモードを説明する文章としてもそのまま通用する。機能の名前までEdgeから借りてきた、と見るのは意地悪だろうか。
「機能の問題」ではなく「印象の問題」
ここで立ち止まって考えたい。Edgeの機能は悪いのか。答えはノーだ。垂直タブもリーダーモードも実装は熟成されており、AIによるタブ自動整理機能「Organize tabs」の評判もいい。中身を使い込めばEdgeはよくできたブラウザだと分かる人が多い。
それでもシェアは伸びない。理由は機能ではなく、Edgeに付きまとう印象にある。
Windows起動時に出てくる「既定のブラウザに設定しませんか」のポップアップ。Chromeをダウンロードしようとすると出現する問い合わせ。そして最近目撃されたのが、Edgeモバイルアプリを既定ブラウザにすると最大200万ドル相当の報酬が当たるというプロモーションだ。自動車が当たる、1億5000万円相当が当たる——こうなると広告というより、景品表示の限界を試す挑戦のように映る。
記者の指摘は辛辣だ。これほどの過剰な報酬でブラウザを宣伝するとまるで詐欺のように見える、と。一般ユーザーがそこで感じ取るのは「自分のデータにどれほどの値段がついているのか」という疑念だろう。
押しつけが押しのけを生む
Microsoftはブラウザの使用を「お願い」するのではなく、「誘導」してきた。デフォルト変更を面倒にし、リンクを強制的にEdgeで開かせ、Bing検索をCopilotに結びつける。ユーザーの体感としては選択を奪われている感覚に近い。
皮肉なのは、Chromeが同じアイデアを採用した瞬間に人々が便利だと反応することだ。同じ機能でも、誰が出してくるかで受け止められ方がまったく違う。
先行しても負けるという現象
垂直タブを最初に実装したのは2015年のVivaldi。2021年にEdge、2023年にArc、2025年にFirefox、そして2026年にChrome。主流ブラウザ初の肩書きはEdgeにあるが、シェアは5年経っても5〜8%の帯から動かなかった。
この現象には、業界で何度も見てきたパターンがある。Windowsがタッチ対応PCで先行してもiPadに奪われ、Windows Phoneのタイル型UIも寡占を揺るがせなかった。Cortanaが音声アシスタントで先行してもAlexaやGoogle Assistantに抜かれた。
Edgeもこの系譜に連なろうとしている。良いブラウザを作るだけでは足りない。使いたいと思わせる文脈がなければ先行は意味を失う。Chromiumエンジンを採用してもInternet Explorerの亡霊は消えない、というのが現状かもしれない。
今回の垂直タブ騒動は小さな機能の話に見えて、ブランドの積み上げ方への教訓だと思う。製品に語らせるのと、自ら声を上げるのでは届き方がまるで違う。届かないまま5年が経つと、後から来た者に気づかれないまま追い越される。
参照元
他参照
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