ClaudeがWindowsで壊れ続けている──Anthropicの死角

評価額60兆円超のAI企業Anthropicが、デスクトップOS市場の7割近くを占めるWindowsでまともに動かない。アプリは起動すらできず、VS Code拡張の重大バグは「対応予定なし」で閉じられた。

ClaudeがWindowsで壊れ続けている──Anthropicの死角

評価額60兆円超のAI企業Anthropicが、デスクトップOS市場の7割近くを占めるWindowsでまともに動かない。アプリは起動すらできず、VS Code拡張の重大バグは「対応予定なし」で閉じられた。


インストールすらできない、起動してもクラッシュする

AnthropicClaudeデスクトップアプリが、WindowsWindows 10で深刻な不具合を抱え続けている。症状は多岐にわたるが、どれも「たまに起きる」レベルではない。インストール時にMicrosoft Storeへリダイレクトされるが、Store上にアプリは存在しない。運良くインストールできても、起動直後にクラッシュする。OAuth認証の不具合でアプリ全体が無限ロードに陥る。

Cowork機能に至っては、Windows 11 Homeで Hyper-V の壁にぶつかり、Proエディションでも仮想ネットワークのNATルールが消失してAPI接続に失敗する。つまり、有料プランで使おうとしたユーザーが最も期待する機能が、最も壊れている。

問題の根は単純だ。CoworkのLinux VMがインターネットに出られない。WindowsがNATルールを消し、仮想アダプタのDNSが壊れ、仮想ディスクが破損する。どの障害も違う症状を出すから、原因が見えない。

あるWindows開発者がブログに書いた診断がこの状況を的確に表現している。「2026年にHyper-VのネットワーキングをPowerShellでデバッグしている。何もかもおかしい」。これは個別のバグ報告ではなく、プラットフォーム対応の構造的な欠落を示す声だ。

Redditで炎上した「対応予定なし」の6件

この問題が大きな反響を呼んだのは、r/ClaudeAIに投稿された一つのスレッドだった。有料ユーザーが、VS Code拡張機能に関する6件の重大バグがGitHubで「not planned(対応予定なし)」としてクローズされた事実を突きつけた。

Claude Code on Windows: 6 critical bugs closed as "not planned" — is Anthropic aware that 70% of the world and nearly all enterprise IT runs Windows?
by u/Critical_Ladder3127 in ClaudeAI

投稿者が列挙した問題は具体的だ。VS Code拡張が600行以上のファイル書き込みでフリーズする。2026年3月のWindows Update(KB5079473)がWSL2セッションを4.6GBのヒープ消耗でクラッシュさせる。Claude CodeがWSL起動のたびにPowerShell38回生成 し、入力可能になるまで30秒かかる。メモリリークが通常セッションで21GB以上に膨張する。WSLとWindowsのパス混同がサイレントに失敗する。

このうち 6件すべて が「platformwindows」タグ付きでGitHub Issuesに報告され、大半が「対応予定なし」で閉じられた。

投稿者の主張の核心はスペックの羅列ではない。「シリコンバレーMacで動く。でも世界はそうじゃない」という一文だ。Fortune 500企業の開発環境はWindowsが主流であり、企業がAIコーディングツールを導入評価するとき、まずWindowsで試す。そこで動かなければ、GitHub CopilotCursorに流れる。

Anthropicは「Mac企業」なのか

このスレッドがr/ClaudeAIで大量の賛同を集めた背景には、構造的な理由がある。AnthropicCowork機能は当初macOS専用で、Windows対応は2026年2月10日に後追いで開始された。だが初日からHyper-V関連の不具合が噴出し、GitHub Issuesには数百件の報告が積み上がった。

AnthropicはビルドとテストをmacOSで行っている。Macユーザーはこれらの問題を一つも報告していない。

Redditのモデレーターによるスレッドまとめも、この構図を裏付けている。VS Code拡張の問題は「platformwindows」タグが付けられたIssueに集中しており、多くが「closed as stale(放置によりクローズ)」か「not planned」で処理されている。数にして 数百件Anthropicがこのプラットフォームをどれだけ軽視してきたかの証左だ。

公平を期せば、KB5079473の問題はMicrosoftWindows Update側に原因がある可能性が高く、6件すべてがAnthropicの責任とは言い切れない。だが投稿者自身も認めているように、残る5件はAnthropicのコード品質とテスト体制に直結する問題だ。

「動かない製品を売るな」という当たり前の要求

コメント欄で最も賛同を集めたのは、開発者ではないビジネスユーザーの声だった。「ボーイングのビジネスアナリストがレポートを自動化したい。ゴールドマン・サックスのプロダクトマネージャーがダッシュボードを作りたい。彼らはDockerが何かも知らない。50個のプロンプトパッチも知らない。WindowsノートPCClaudeサブスクリプションがあるだけだ」。

この指摘は、Anthropicが掲げる「AIの民主化」という理念との矛盾を鋭くえぐっている。Claude Codeの年間ランレート収益は 25億ドル を超え、法人契約は年初から4倍に成長した。Fortune 10のうち8社がClaude顧客であり、Anthropicの企業向け売上比率は約80%に達する。その企業顧客の大半が使うWindowsで、致命的なバグが「対応予定なし」で閉じられる。

品質問題は「Windows」だけではない

Windowsの不具合は、Anthropicが現在直面しているより広い品質問題の一断面でもある。3月下旬以降、有料プランのセッション制限が突然厳格化され、Max 20xプラン(月額200ドル)のユーザーですら 5時間枠が1〜2時間 で枯渇する報告が相次いだ。Fortuneの報道によれば、Anthropicは急増するユーザーに対してGPU計算資源が追いついておらず、モデルのデフォルト「推論コスト」を下げる変更を静かに実施していた。

ユーザーの不満とAnthropicの透明性への疑念は、IPOを控えた同社の急成長を脅かしかねない。

Anthropicの評価額は 3800億ドル(約60兆4000億円)。年間ランレート収益は190億ドルに達し、2026年10月のIPOが視野に入っている。その企業が「Windowsで動かない」と言われている。些細な問題ではない。GitHub CopilotはWindows上でネイティブに動く。CursorもWindowsで動く。Amazon Qも動く。競合が当たり前にクリアしている条件を満たせないまま、Anthropicは企業市場のシェアを拡大し続けられるのか。

ツールがフリーズしたとき、ユーザーはGitHubにIssueを立てない。ノートPCを閉じて、別のツールを開くだけだ。


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