EdgeがCopilot Mode廃止、AIが標準装備に
Microsoftが実験ラベルを外した。タブ横断・履歴参照・音声・画面共有といったAI機能はEdge本体に組み込まれ、モバイル版にも揃って降りてくる。
Copilot Modeという「実験」は終わった
Microsoftは2026年5月13日、Microsoft Edgeのアップデートを公開した。複数の開いたタブを横断して内容を比較・要約するAI機能や、閲覧履歴と過去のチャットを参照して回答精度を上げる仕組みが、デスクトップとモバイルの両方で全ユーザーに開放された。同時に、2025年7月から実験機能として提供されてきたCopilot Modeは廃止される。
廃止という言葉だけ見ると後退に見えるが、実態は逆だ。Copilot Modeに収められていた機能は、新しい標準のEdgeにそのまま流れ込んでいる。実験用の囲いを外し、囲いの中にあった道具を店頭に並べ直した、というのが今回の動きに近い。
Copilot Modeは1年も持たなかった。Microsoftが「実験」と呼んでいた期間に何を観察していたのか、その答えがこの統合にあらわれている。
タブを横断するAIが標準機能になる
今回のアップデートで全Copilot対応地域に展開されるのは、複数タブを横断して質問に答える機能だ。たとえばナパへの旅行を計画していて、ワイナリー・レストラン・移動経路のページを10数枚開いているとする。右上のCopilotアイコンを押すだけで、開いているタブから情報を引き、選択肢を比較してくれる。
Copilot in Edgeは、ユーザーの許可のもと、開いているすべてのタブを読み取り、選択肢を比較し、重要なポイントを浮かび上がらせ、タブを行き来する手間を減らして判断できるようにする。
これまでCopilot Modeを有効化していなければ使えなかった機能が、設定を切り替えずに使えるようになった。閲覧履歴を参照する長期メモリ機能もデスクトップとモバイルに登場し、過去のチャットを踏まえた応答を返せる。アクセス対象はユーザーが個別に許可する形だ。
新しいタブページも刷新された。チャット・検索・通常のWebナビゲーションが1つの入力欄に集約され、過去の閲覧をトピックごとにまとめるJourneysもそこに並ぶ。
モバイル版に降りてきた「画面共有」
今回の発表でもっとも変化が大きいのはモバイル版だ。スマートフォンのブラウザは、タブを切り替えるたびに画面が丸ごと入れ替わるため、複数のページを見比べる作業に向いていない。そこにタブ横断のAIが入ると、使い勝手の不便さに直接効く。
加えて、Vision and Voiceがモバイルにも届いた。許可を与えると、Copilotが画面を共有しながら音声で対話できる。見ているページについて質問し、説明を聞き、ハンズフリーで判断を進められる。Copilotがアクティブな間は視覚的な合図が常に出るため、AIがいま見ているのか・聞いているのか・操作しているのかが区別できる。
何を見ているのか、ハンズフリーで話しかけて聞ける。質問しても、説明を求めても、声に出して考えても構わない。それは、どこにいても「もう1つの目」を貸してくれるようなものだ。
スマートフォンでJourneysが使えるようになったのも今回が初めてだ。提供は米国のみにとどまる。出先で中断していた調べものを、画面の小さい端末から再開しやすくなる。
学習と執筆の道具も増えた
デスクトップ側には、学習と執筆をAIで支える機能が追加された。Study and Learn modeは、開いているWebページを題材にしてガイド付きの学習セッションやクイズを生成する。Copilotに「このトピックでクイズを出して」と頼むだけで、読んでいる内容から問題が組み立てられる。
Writing assistantは、Edge上で文章を書いているときに青いドットが現れ、下書きの生成や、明瞭さ・トーンの調整を手伝う(米国のみ)。Copilot quizzesはフラッシュカードやガイド付きセッションを作り、開いているページの内容を試験形式で復習できる。
そして、開いているタブをそのままポッドキャストに変換する機能も加わった。調べものを耳で聞いて進められる。英語圏のみ、Microsoftアカウントへのサインインが前提となる。
| 機能 | 全地域 | 英語圏 | 米国限定 |
|---|---|---|---|
| 複数タブ横断 | ○ | ○ | ○ |
| 閲覧履歴の参照 | ○ | ○ | ○ |
| 長期メモリ | ○ | ○ | ○ |
| Vision / Voice |
○ | ○ | ○ |
| Copilot quizzes |
○ | ○ | ○ |
| 新タブページ | ○ | ○ | ○ |
| Journeys (デスクトップ) |
— | ○ | ○ |
| Podcasts | — | ○ | ○ |
| Journeys (モバイル) |
— | — | ○ |
| Writing assistant |
— | — | ○ |
| Browse with Copilot |
— | — | ○ |
機能を全部使いたい人もいれば、一部だけ残したい人もいる。Microsoftは「使いたいものを選び、不要なものは切れる」と説明しており、設定からいつでも個別に切り替えられる。
「実験」という名のテスト期間は何だったのか
Copilot Modeは2025年7月、Microsoftが「ブラウザを操縦する新しい方法」として打ち出した実験機能だった。当時の発表では、AIに新しいタブページの主役を譲り、複数タブをまたいで内容を引き出す検索、エージェント的なタスク実行といった、当時としては挑戦的な構成が並んでいた。
それから1年経たないうちにラベルが消える。Microsoftは廃止の理由として「Edge本体に直接組み込まれたから不要になった」と説明している。Copilot Modeで集めたフィードバックを踏まえて、残すべき機能と残さない機能を選別し、残す側を標準機能として水平展開した、という建て付けだ。
既存のCopilot Modeユーザーは、Copilot in Edge Previewを通じて新機能への優先アクセスを引き続き受けられる。設定はいつでも変更可能だ。
エージェント的な機能、つまり予約代行のようなタスク実行は、米国のMicrosoft 365 Premium加入者向けに「Browse with Copilot」として別建てになった。Copilot Actionsという仮称で限定プレビュー中だった機能が、ここに整理されて入った形だ。
Copilot Modeを使っていたユーザーが追い出されるわけではないが、エージェント機能を継続して使うには有料サブスクが必要になったことになる。実験期間に無料で触れていた人にとっては、機能の一部が境界線の向こうへ移動した、と感じる場面もありそうだ。
Edgeが変わるのか、ブラウザの定義が変わるのか
今回の動きは、Edgeという1製品のアップデートにとどまらない。ChromeにはすでにGeminiの統合がアナウンスされており、SafariもApple Intelligenceで生成AIをブラウザ側に取り込んでいる。Perplexityは独自のAIブラウザCometを発表し、OpenAIもブラウザ領域に踏み込んでいる。
ブラウザがAIを「機能の1つ」として持つ段階は、すでに終わっている。今は、ブラウザ全体をAIが操縦する側になるのか、ユーザーが操縦してAIが補助に回るのか、その境界線が引き直されている時期だ。Microsoftは前者に寄せている。タブを開く、検索する、リンクを踏む、という動作のすべてが、Copilotにとっての「文脈の入力」になる設計になっている。
そして、その境界線の引き直しは、プライバシーの問題と切り離せない。AIに見せる範囲、聞かせる範囲、覚えさせる範囲を、ユーザーがどこまで把握して切り替えられるか。Microsoftは「データは利用者のもの」「ユーザーの許可なしに共有しない」と繰り返しており、設定から個別オフにできる導線も用意した。とはいえ、AIが背景で動き続ける時代に、その境界線をユーザーが日々意識し続けるのは難しい。
実験ラベルが外れたいま、Edgeを開くたびにAIの存在感が前提になる。便利か、わずらわしいか。その判断材料は、設定画面の中にある。
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