ExcelのCOPILOT関数、1年で廃止。数値計算は非推奨だった
セルに入る数式の顔をしていたが、数値計算は推奨されず、同じ入力でも違う答えが返ってきた。5月に機能強化したばかりのMicrosoftが、ロードマップから抹消した。
セルに入る数式の顔をしていたが、数値計算は推奨されず、同じ入力でも違う答えが返ってきた。5月に機能強化したばかりのMicrosoftが、ロードマップから抹消した。
表計算に入ったAI関数、ロードマップから消える
Microsoftは現地時間8月13日、ExcelのワークシートにAIを埋め込む =COPILOT() 関数を9月14日で廃止すると通知した。Insider(早期テスト参加者向け)およびFrontier(先行テスト)プログラムで提供されていたプレビュー機能で、一般提供は2027年1月を予定していた。
その予定は消えた。Microsoft 365のロードマップはステータスを「Cancelled」(取り消し)に変更し、説明文にはこう記されている。
この機能の開発を進めないことを決定しました。ご不便をおかけし申し訳ありません
代替手段として案内されているのは、Excelの右側に表示されるCopilotサイドペインだ。テキストの要約、データの分類、コンテンツの生成、Web検索といった機能はサイドペインで引き続き使えるとMicrosoftは説明している。
セルに数式を書く感覚で、AIに話しかける
=COPILOT() 関数は2025年8月に導入された。構文はシンプルで、自然言語の指示文と、文脈として渡すセル範囲を指定するだけ。A2からA50に入った顧客フィードバックを要約させたり、コメントに感情ラベルを付けたり、Webから情報を引いてセルに返したりできた。
=SUM() や =VLOOKUP() と同じ場所に並ぶAI関数。見た目は従来の数式と変わらない。だが性質はまるで違う。
Microsoftの公式ドキュメントには、この関数を使うべきでない用途が並んでいた。数値計算、ブック内データの参照、法規制に関わるタスク。表計算ソフトの根幹である数値計算が非推奨という時点で、この関数の居場所は最初から狭かった。
さらに決定的な特性がある。ある数式をあるセル範囲に対して繰り返し実行しても、AIモデルの更新によって異なる結果が返る可能性があった。従来の数式であれば、入力が変わらなければ出力も変わらない。再現性がないということは、Excelの数式としての信頼の前提を欠いている。Microsoftは結果を値として保存するよう利用者に促していたが、それは自動再計算というExcelの利点を自ら手放すことを意味する。
呼び出し回数にも上限があった。10分あたり100回まで。大量のデータを一括処理するには向かない。
| 特性 | Excel数式 | =COPILOT() |
|---|---|---|
| 再現性 | 確定的 | 変動あり |
| 数値計算 | 対応 | 非推奨 |
| ブック内参照 | 対応 | 非対応 |
| 自動再計算 | 対応 | 値保存推奨 |
| 呼び出し制限 | なし | 100回/10分 |
| 法規制対応 | 制限なし | 非推奨 |
5月に強化して、8月に撤退する
この関数の1年を振り返ると、奇妙な時系列が見える。
2026年5月、MicrosoftはCOPILOT関数にWeb検索機能を追加した。従来はAIモデルの学習データの範囲でしか回答できなかったが、リアルタイムのWeb情報を参照して回答できるようになった。天気や最新の企業情報を返せるという触れ込みで、機能強化として発表されたばかりだった。
3ヶ月後に廃止が決まった。
Microsoftの説明は端的だ。サイドペインで同等の機能が使えるから、セルに埋め込む関数は不要になった、と。
だがサイドペインと関数は別物だ。関数はセルに残り、入力が変われば再計算される。ワークブックの計算の流れの中に組み込まれる。サイドペインのチャットは対話であり、結果を得るためには毎回操作が要る。
プレビュー段階だったから本番環境で使うべきではなかった、というのはMicrosoftの立場として正しい。だがFrontierプログラムの趣旨は、先行して試してフィードバックを返すことだ。試した結果ワークフローに組み込んだ利用者は、9月14日までに数式を書き換えることになる。
2025年8月 Beta Channel向けに導入 Microsoft 365 Copilotライセンス保有者のInsider向けにプレビュー提供開始 2026年5月 Web検索機能を追加 リアルタイムのWeb情報を参照して回答できるよう機能強化 2026年8月13日 廃止を通知 ロードマップのステータスを「Cancelled」に変更 2026年9月14日 関数が利用不可に 既存の=COPILOT()数式も動作しなくなる |
Copilot、居場所を探し続ける
MicrosoftはここしばらくCopilotの「見せ方」を模索し続けてきた。Excelの作業領域にCopilotボタンが消せない形で常駐して利用者の反発を招き、その後リボンへの移動オプションを追加する部分撤回に追い込まれた。タスクバー、設定アプリ、ノートパッド、Snipping Toolと、あらゆる場所にCopilotの入口を増やし、そして減らしてきた。
=COPILOT() 関数の廃止は、そのパターンの最新版だ。「AIをどこに置くか」の試行錯誤の中で、セルという場所は結局うまくいかなかった。理由は明快で、Excelのセルが求める再現性・正確性と、AIの不確定性が噛み合わない。
一方、Googleスプレッドシートには同種のAI関数が残っている。Googleが2025年6月にテスト提供を始めた =AI() 関数は、対象を広げながら提供を続けている。その矛盾を抱えたまま走り続けるのか、Microsoftと同じ結論に至るのか。
Microsoftが1年で下した撤退の判断は、少なくとも問題の所在を認識している証拠ではある。表計算ソフトの数式欄は、AIが座るべき席ではなかったのだろう。
関連記事
- Outlook受信トレイにCopilot通知が常駐。オフにする手段がない
- 英豪伊3か国がMicrosoftのCopilot値上げ手法を調査。売上高10%の制裁も
- Microsoft、Outlookの検索に割り込むCopilotを撤回
- Microsoft 365有料ユーザーに消せない広告。Officeのタイトルバーに常駐
- Microsoft 365法人向け値上げが施行。最大43%増の全容
- MicrosoftがCopilotの統一デザイン体系を構築中
- Office Copilotボタン、批判殺到で部分撤回・拭えぬ押し付け体質
- Excelの消せないCopilotボタン、利用者が反発
- Microsoft、Copilotを1つのアプリに統合。機能廃止は8月18日から
- Teamsライブチャット、「次のレベル」18ヶ月で廃止