主要サイトの87%がHTML標準に違反。5000ドメインを検証
ウェブの最も巨大なサイトたちが、自分たちが拠り所とする標準をほとんど守っていない。
ウェブの最も巨大なサイトたちが、自分たちが拠り所とする標準をほとんど守っていない。
10万件の違反、68の合格
フランスの個人開発者テオ・デュクルー(Théo Ducreux)氏が、ValidateHTMLというプロジェクトでウェブの実態を数字にした。調査対象は、学術研究用のランキングプロジェクト「Tranco」が算出した、世界で最も利用されるドメイン上位5000件。Google、YouTube、Akamaiといった名前が並ぶ。
5000件のうち、人間が読めるトップページを返したのは2656件。残りの多くはCDNやリダイレクト用のドメインで、そもそもページが存在しない。
その2656件に対して、HTMLとCSSの標準準拠を2026年8月14日時点で検証した結果がこうだ。HTML違反の総数は10万305件にのぼる。CSS違反が1万8863件。サイト単位で見ると、87.2%が違反を抱えている。完全に有効なHTMLを返したのは12.8%。違反もベストプラクティス上の警告もゼロだったサイトは、わずか68件だけだった。

中央値は1サイトあたり11件のエラー。平均は37.8件。最悪のサイトは1392件。大半は数個のミスの繰り返しで、一部のサイトがテンプレート1つの不具合を全コンポーネントに複製して数字を押し上げている。
デュクルー氏は自作のクローラーとオープンソースの構文解析ツール群(html-validate、csstree-validator、Lightning CSS、fast-xml-parser)を使って検証を実行した。チームはいない。資金もない。企業の後ろ盾もない。1人のプロジェクトだ。
壊れているのに、見えない
この数字を見て「でもサイトは普通に表示されているじゃないか」と思うなら、それがまさに問題の核心になる。
現代のブラウザは壊れたHTMLを黙って修復する。W3C(World Wide Web Consortium)とWHATWG(Web Hypertext Application Technology Working Group)が定めたHTMLの仕様に違反していても、Chromeは開発者が何を意図したのかを推測し、つじつまを合わせてページを描画する。かつてXHTMLが厳格なエラー処理を要求した時代は短命に終わり、今のブラウザは寛容さを売りにしている。
エラー回復に優れたブラウザのおかげで、誰もコードを直す必要に迫られない。だからこそ違反が積み重なる
デュクルー氏は自身のサイトにそう書いている。
検証で最も多く検出された違反は、要素の不正な入れ子(全サイトの59.5%)だった。<div>の中に<style>要素を入れる、<a>の子要素に<button>を置く、といったHTML仕様が禁じる組み合わせだ。デュクルー氏によれば、これは人間が手で書いたコードの問題ではない。フロントエンドフレームワークがビルド時にコンポーネントを組み合わせる過程で、どの要素の内側に配置されるかを知らないまま出力した結果だという。
つまり、ウェブの標準違反のかなりの部分は、開発者個人のミスではなく、開発ツールが構造的に生み出している。
「ブラウザ以外」は推測してくれない
ブラウザが壊れたHTMLを補修してくれるなら、問題はないのか。デュクルー氏自身も、不正なHTMLがウェブの存亡に関わるとまでは考えていない。ただ、一つの例外がある。アクセシビリティ(障害のある人や高齢者を含む誰もがウェブを利用できること)だ。
調査では20.4%がalt属性を欠き、41.6%がARIAラベル未設定だった。alt属性は画像の内容を文字で伝える属性、ARIAラベルはページの領域(ナビゲーション、本文、サイドバーなど)を識別する属性で、どちらもスクリーンリーダー(画面読み上げソフト)が必要とする情報だ。これがなければ、視覚障害のあるユーザーにとってページは構造の分からない断片の羅列になる。
スクリーンリーダーには、Chromeほどのエラー許容力がない。開発者には完璧に見えるHTMLコードでも、支援技術の利用者にとっては壊れている可能性がある
デュクルー氏はそう述べている。
| 項目 | 発生率 |
|---|---|
| 見出しの順番飛ばし | 46.5% |
| 入力欄の説明なし | 42.7% |
| ページ領域のラベルなし | 41.6% |
| リンクの説明文なし | 38.0% |
| 埋め込み枠のタイトルなし | 27.2% |
| ボタンの説明文なし | 22.1% |
| 画像の説明文なし | 20.4% |
| ボタンの種類未指定 | 13.4% |
| ページの言語未指定 | 9.5% |
| 空の見出し | 8.4% |
| 表のヘッダーなし | 0.8% |
調査対象の3分の1以上がアクセシビリティチェックに不合格だった。EUでは2025年6月に欧州アクセシビリティ法(European Accessibility Act)が施行され、民間企業のデジタルサービスにもアクセシビリティ対応が義務付けられている。
日本でも2024年4月に改正障害者差別解消法が施行され、民間事業者にも合理的配慮の提供が法的義務となった。ウェブアクセシビリティの不備は、見た目の問題から法的リスクへと変わりつつある。
そしてもう一つ、デュクルー氏が指摘する「ブラウザ以外」の存在がある。AIエージェント、音声アシスタント、翻訳ツール。Chromeが20年かけて蓄積した「開発者の意図を推測する力」を、これらは持たない。
Shopifyは最近、AIエージェントが読みやすいクリーンなHTMLへの回帰を進めている。仕様に沿って書かれたページだけが、あらゆる読み手に対して一貫した意味を伝えられる。Chromeで開いたときだけ正しく見えるページは、すでに「正しいページ」とは言えなくなりつつある。
ValidateHTMLは自らのサイト全104ページをこの検証にかけ、エラーも警告もゼロであることを確認した上で調査結果を公開している。調査の過程で4件の問題を発見し、公開前に修正したという。検証の対象はトップページのみ、かつ人気上位のサイトに限られるため、ウェブ全体の縮図とは言えない。それでも、最もリソースの潤沢なサイトですらこの状態であるという事実は、標準が「守るもの」から「無視しても困らないもの」に変わった現在地を示している。
関連記事
- MozillaがChromeのPrompt API搭載に反対、ウェブの中立性に懸念
- ChromeとEdge、AIモデル用に20GBの空き容量を要求へ
- OpenAI、Atlasを9か月で終了。機能はChromeとデスクトップへ
- Chrome設定から消えた「データを送らない」の一文
- Claude Desktopが無断で架ける、7ブラウザへの橋
- Gemini in Chromeが日本にも来たが、iOS版だけ置いていかれた
- Chromeが「スキル」搭載、Geminiプロンプトがワンクリック化
- Chrome 148で動画・音声のネイティブ遅延読み込みが解禁される
- Google独占是正の矛先、最後の独立ブラウザに向く皮肉
- OpenAI、セキュリティ要求の95%に応じるAIモデルを公開