Intel、PCメーカーに18Aチップ採用を強く要請 契約条件を検証
旧世代CPUの供給が絞られるなか、PCメーカーは高コストなリデザインを迫られている。
旧世代CPUの供給が絞られるなか、PCメーカーは高コストなリデザインを迫られている。
「断れば他社に回す」
IntelがPCパートナーに対し、最新の18Aプロセスで製造したCPUの採用を強く求めている。米国・中国・台湾の主要メーカーが対象で、旧世代プロセス「Intel 7」で製造されたCPUよりも18A製品の方が供給に余裕があると説明しているという。
背景にあるのは、AI需要の急増だ。サーバー向けCPUの需要が爆発的に伸び、IntelもAMDも製造キャパシティをサーバー側に振り向けている。その結果、コンシューマー向けの旧世代CPUが逼迫した。
あるPCメーカー幹部の証言が、事態の深刻さを物語る。
Intel 7プロセスのCPUを100個注文したところ、届いたのは30個。しかもそのうち10個は18Aで製造された最新チップだった。18Aを受け取らなければ、別のPCメーカーに回すと告げられた。
「受け取るか、失うか」の二択。これはもはや提案ではなく、通告に近い。
リデザインというコスト爆弾
問題は、18Aチップを採用するだけでは済まないことにある。
台湾のセンサー・ディスプレイチップ開発企業の幹部はこう語った。最上位CPUを搭載するなら、ディスプレイなどの周辺部品もプレミアムグレードに引き上げなければならない。そうしないと消費者に価格を納得してもらえない、と。つまり18Aチップを載せるには、ノートPC全体のリデザインが必要になる。
ディスプレイの高品質化、部品構成の見直し、設計検証のやり直し。どれも時間とコストがかかる工程だ。製品の発売スケジュールにも影響が出る。PCメーカーにとっては、歓迎できる話ではない。
18A採用によるリデザインには少なくとも3か月が必要だと業界関係者は指摘する。その間、新製品の投入は遅れ、市場機会を逃すリスクがある。
Intelの狙いと業界の現実
Intelの立場から見れば、合理的な判断でもある。
18Aプロセスは、Intelが社運を賭けて開発した最先端の製造技術だ。RibbonFETとPowerViaという2つの新技術を商用化した初のプロセスで、TSMCへの対抗手段として開発が急がれてきた。Core Ultraシリーズ3(Panther Lake)やCore Series 3(Wildcat Lake)はすでに製品化されており、Intelとしては18Aの量産を加速させたい時期だ。
旧ノードの供給が細る以上、パートナーに18A製品を使ってもらう方がIntelにとっては一石二鳥だ。供給問題の緩和と、18Aエコシステムの拡大を同時に進められる。
ただし、PCメーカーの受け止め方は違う。CPUの供給不足に対処するために注文を出したら、想定と違うチップが混ざって届き、しかもそれを受け入れなければ残りも失う。これでは「パートナーシップ」とは呼びにくい。
価格転嫁のゆくえ
18Aチップ自体の性能は高い。Panther Lakeは前世代からCPU性能を大幅に引き上げ、Wildcat Lakeもエントリー向けながらIntel 18Aの恩恵を受けている。製品としては正当な進化だ。
問題は価格に跳ね返る部分にある。チップの変更に伴うリデザイン費用、プレミアム部品の採用、設計検証の追加工数。リデザイン費用は最終的にノートPCの価格に上乗せされる。メモリ価格の高騰、CPU全体の供給不足も重なり、消費者が店頭で目にする値札はさらに上がりそうだ。
3月にはCPUの平均価格が10〜15%上昇したと複数の業界筋が伝えており、Intel・AMDともに値上げを通告済みだ。18A強制採用の動きは、この価格上昇トレンドをさらに押し上げかねない。
つまり、Intel 18Aへの切り替えは単なるチップの世代交代ではない。ノートPC全体の設計思想とコスト構造を変える力を持っている。
PCメーカーの選択肢
ではPCメーカーにはどんな選択肢があるのか。
AMDのRyzenプラットフォームへの切り替えは一つの手だが、AMDもTSMCの製造キャパシティを巡ってNVIDIAやGoogleと競合している。余裕があるわけではない。QualcommのSnapdragon XシリーズやNVIDIAのArm系チップという選択肢も存在するが、x86ソフトウェア資産との互換性という壁がまだ残る。
結局、多くのPCメーカーはIntelの条件を受け入れざるを得ない状況に追い込まれている。選択肢がないから従うのであって、納得しているわけではない。
ファウンドリ事業の再建を急ぐIntelが、自社の都合をパートナーに押し付ける形になっている。短期的には18Aの普及が進むかもしれないが、パートナーとの信頼関係にひびが入れば、長期的なコストは小さくない。
100個頼んで30個届く世界で、PCメーカーが次にどこへ注文書を出すか。答えはまだ出ていない。