Outlook for Macで返信すると会話が消えるバグ。修正の見通しなし

Outlook for Macで返信すると会話が消えるバグ。修正の見通しなし

返信ボタンを押した瞬間、メールの会話履歴が消える。6月中旬以降、Mac版Outlookのレガシークライアントで起きている不具合だ。直前のやりとりも、その前の経緯も、返信ウィンドウには何も残らない。メールクライアントとして最も基本的な機能が壊れている。


何が起きているのか

バージョン16.110(ビルド26061317)へのアップデートが原因だ。6月18日前後に自動更新で配信されたこのビルドを適用すると、返信や転送の際に元のメッセージ本文が一切表示されなくなる。件名と差出人のヘッダーだけが残り、肝心の本文は空白。転送に至っては、中身のないメールを相手に送ることになる。

影響を受けるのはHTML形式のメールだ。プレーンテキストのメールでは症状が出ない。Microsoftのサポートフォーラムには5月中旬から散発的に報告が上がっていたが、ビルド26061317の自動配信が広がった先週から投稿が一気に増えた。Microsoft Q&Aには少なくとも10件以上の個別スレッドが立ち、いずれも同じ症状を訴えている。

Microsoftは6月17日付でサポートページを公開し、バグを「調査中」と認めた。修正ビルドの提供時期は示されていない。

回避策はあるが、どれも代償がある

公式の回避策は一つ。レガシーOutlookのチェックを外して新しいOutlook for Macに切り替えろ。それだけだ。

だが切り替えは単純にいかない。新Outlookに移行したら1万件以上あるフォルダが空と表示された、という報告がフォーラムに上がっている。アカウント間のメールが混在する問題に直面したユーザーもいる。レガシー版を好んで使い続けてきた人には、それなりの理由がある。

実際にユーザー同士で共有されている対処法は、バージョン16.109.3へのロールバックだ。手順はOutlookをいったんアプリケーションフォルダから削除し、16.109.3のインストーラーを手動で入れ直す。その上で自動更新を無効にしなければ、すぐに16.110へ戻ってしまう。Microsoftのフォーラムモデレーターも、結局はこの方法を案内している。

ただし会社支給のMacなど、IT管理者がアプリを一括管理している環境ではこの手が使えない。組織が新Outlookへの移行を許可していなければ、壊れたまま使うか、Outlook on the webで凌ぐしかない。

なお、ベータ版の16.111(ビルド26061710)でも同じバグが確認されている。修正が次のビルドですぐ降ってくる保証はない。

品質管理への疑問が消えない

メールの返信に前のやりとりが含まれる。これが1990年代から続くメールクライアントの前提条件だということは、説明するまでもないだろう。この水準の機能がテストをすり抜けて本番環境に出たという事実が、問題の本質だ。

レガシーOutlook for Macに品質上の問題が出るのは今回が初めてではない。5月には16.109.1へのアップデートで検索とフィルタリングが機能しなくなるバグが報告された。Windows版のクラシックOutlookでも同月、埋め込み画像が消えるレンダリングバグが確認されている(6月時点で「調査中」のまま)。プラットフォームを問わず、レガシー系クライアントの品質が揺らいでいる。

レグレッションテストの工程が今回のリリースで省かれたように見える

フォーラムに寄せられた投稿は、テスト品質への疑念を率直に語っている。

Macユーザーに迫る二重の期限

レガシーOutlook for Macのユーザーには、もう一つ差し迫った問題がある。2026年10月1日にExchange Web Services(EWS)が廃止されると、レガシー版はExchange Onlineへの接続を失う。新Outlookへの移行が事実上の必須になる期限だ。

加えて、Office 2019 for Macのユーザーは7月13日にさらに厳しい現実と直面する。ライセンス検証に使われるデジタル証明書が失効し、Word・Excel・PowerPoint・Outlook・OneNoteが編集不能の「機能制限モード」に入る。Microsoftは証明書を更新済みだが、サポート終了済みのOffice 2019にはそのアップデートを配信しない。買い切りの「永続ライセンス」で購入した人が、ある朝突然ワープロをビューアーに格下げされる。

Microsoftは2023年のサポート終了時に「すべてのOffice 2019アプリは引き続き機能する」と明記していた。その文言は2026年5月に、告知なく削除された。

今回のバグ自体は修正されれば解消する類いの話だ。だが返信スレッドが消えるバグが出荷され、回避策は「別のアプリを使え」。修正の日程も見えない。その間にOffice 2019は証明書ごと無効化され、レガシーOutlookは10月にExchange Onlineから切り離される。

Mac版Outlook/Officeユーザーが直面する期限
2026年5月
返信スレッド消失バグの報告開始
バージョン16.110でHTML形式メールの返信・転送時に元メッセージが消える不具合が散発的に報告される
6月17日
Microsoftが「調査中」と認定
サポートページを公開。修正ビルドの提供時期は未定
6月18日
ビルド26061317が自動配信で拡大
被害報告が急増。ベータ版16.111でも未修正
7月13日
Office 2019 for Macが編集不能に
ライセンス検証用デジタル証明書が失効。Word・Excel・Outlookなどが「機能制限モード」に移行
10月1日
レガシーOutlook MacのExchange Online接続終了
EWS廃止により、レガシー版はExchange Onlineへの接続を失う。新Outlookへの移行が事実上必須に

Macユーザーが自分の選択でソフトウェアを使い続けられる余地は、月を追うごとに狭まっている。


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