FSR 4.1.1がValveの手違いで流出。RDNA 3.5でも動く

FSR 4.1.1がValveの手違いで流出。RDNA 3.5でも動く
AthleteDependent926氏

AMDが「決定していない」と言い続けたRDNA 3.5へのFSR 4対応が、Valveのうっかりミスであっさり証明された。


Proton Experimentalから消えた62MBのDLL

6月22日、Valveが配信するLinux向け互換レイヤーProton Experimentalの最新ブランチに、あるファイルが追加された。amdxcffx64.dll。AMDのFSR 4アップスケーリングを司るDLLで、バージョンは2.3.0。AMDによるデジタル署名の日付は6月20日。ファイルサイズは62.6MB。

この変更をいち早く検出したのが、SteamDBを定常的に監視しているブラッド・リンチ(Brad Lynch)氏だ。同氏が投稿した直後、Valveは直後にファイルを引き上げたが、削除前にダウンロードしたユーザーがいた。r/radeonのRedditユーザーu/AthleteDependent926氏だ。同氏はFSR 4のリーク品をこれまでも繰り返しテストしてきたコミュニティの常連で、今回も入手したDLLをOptiScaler経由で即座に検証し、結果を公開した。

FSR 4.1.1 Int8 has leaked through Proton Experimental of all places.
by u/AthleteDependent926 in radeon

これがFSR 4.1.1 Int8だった。AMDが7月に公式リリースを予定しているFSR 4.1のさらに先を行くバージョンが、Valve経由で世に出てしまった。

「対応未定」のRDNA 3.5で動いた

テスト結果で注目すべきはRDNA 3.5への対応だ。

公式発表では、AMDはFSR 4.1の後方互換を以下のスケジュールで発表している。2026年7月にRDNA 3(Radeon RX 7000シリーズ)、2027年初頭にRDNA 2(Radeon RX 6000シリーズ)。RDNA 3.5については、Computex 2026でAMDのデヴィッド・マカフィー(David McAfee)氏が「現時点では予定していない」と述べ、その後フランク・アゾール(Frank Azor)氏が「そのような決定はなされていない」と火消しに回る混乱が起きていた。

今回の流出DLLは、その宙ぶらりんの状態に事実で回答を出した。Strix PointのハイエンドAPUに搭載されるRadeon 890M(RDNA 3.5)で、FSR 4.1.1 Int8が動作している。OptiScalerのバージョン0.10.0-pre1を使用したテストで、画面上にFSR 4.1.1の表示が確認されている。

RDNA 3のRX 7800 XTでは安定動作。同カードの1440pクオリティモードでは従来のFSR 4.1 Int8比約8.3%速いとの報告があり、画質もFSR 3のアンチエイリアシングを上回ると評価されている。

GPU世代別 FSR 4.1対応状況
GPU世代公式対応リーク版備考
RDNA 4対応済みFP8ネイティブ
RDNA 32026年7月Int8、約8%高速
RDNA 3.5未定Radeon 890Mで確認
RDNA 22027年初頭シマー発生
※ リーク版はFSR 4.1.1 Int8(バージョン2.3.0)によるコミュニティテスト結果

一方、RDNA 2では状況が分かれる。RX 6900 XTで動作するものの、移動時にシマー(画面のちらつき)が出るとの声が複数ある。以前のFSR 4.0.2c Int8でもRDNA 2では同じ症状が起きており、今回のバージョンでも解消には至っていない。LinuxまたはAMDの旧ドライバー23.9.1で軽減できるとの報告もあるが、根本的にはAMD公式の最適化を待つ段階だ。

リークが繰り返す構造的な理由

FSR 4にまつわるリークは、これが初めてではない。

2025年8月、AMDがFidelityFX SDKのリポジトリにFSR 4のソースコードを誤って公開した。ここにInt8モデルファイルが入っていた。RDNA 3やRDNA 2でもFSR 4を動作させる鍵だ。コミュニティはこれをもとにDLLをコンパイルし、OptiScalerを介して旧世代GPUでの動作を実現。2026年2月にはAMDのVanguardテストプログラムからFSR 4.1のDLL(バージョン2.1.0)が流出。3月にはAMDの公式CDNサーバー上でさらに新しいバージョン(2.2.0)が発見された。

FSR 4 リーク・流出の経緯
25年8月
FidelityFX SDKソースコード誤公開
Int8モデルファイルが含まれ、旧世代GPUでの動作が可能に
26年2月
Vanguardテスト版DLL流出
FSR 4.1(v2.1.0)、RDNA 3で動作確認
26年3月
AMD公式CDNでDLL発見
v2.2.0、AMDサーバー上で複数バージョン確認
26年5月
AMD公式がRDNA 3/2対応を発表
7月にRDNA 3、2027年初頭にRDNA 2
26年6月
Proton ExperimentalからDLL流出
FSR 4.1.1(v2.3.0)、RDNA 3.5でも動作確認

そして今回、Valveのproton-experimentalブランチから2.3.0が流出した。AMDが署名したバイナリがValveの配信インフラに載ったということは、両社の間でFSR 4の統合作業が進んでいることを意味する。来月のRDNA 3公式サポート開始と、この夏に予定されるSteam Machineの発売に向けた準備と考えるのが自然だ。

今回のDLLにはRDNA 4ユーザー向けのFSR 4.0.1 MLFG(Machine Learning Frame Generation、機械学習ベースのフレーム生成)も含まれるとの報告がある。従来のアルゴリズムベースのフレーム生成に対し、MLモデルで生成する方式だ。

AMDの沈黙がコミュニティに語らせた

この1年を振り返ると、FSR 4の旧世代対応はずっとコミュニティが先行し、AMDが後追いしてきた。ソースコードの誤公開、DLLの流出、OptiScalerによる非公式動作、そしてユーザーからの批判。AMDがようやく5月に公式対応を発表したのは、こうした圧力の蓄積が限界に達した結果だ。

今回のRDNA 3.5動作確認も、同じ力学で動いている。AMDが「決定していない」と言っている間に、リーク品が「技術的には動く」と証明してしまう。Computex 2026でマカフィー氏がRDNA 3.5への非対応を示唆した直後にアゾール氏が否定に回ったのは、まさにこの流れを恐れてのことだろう。そしてその恐れは、2週間で現実になった。

RDNA 3.5はゲーミングハンドヘルドの心臓部だ。ROG Ally X、Legion Go 2、MSI Claw A8。これらのデバイスのユーザーにとって、FSR 4対応の有無はゲーム体験を左右する。RDNA 3の半カスタムGPUを積むSteam Machineも、公式サポートの範囲が気になるデバイスの一つだ。NVIDIAがRTX SparkでDLSSのフルスタックを薄型ノートに持ち込み、その先にハンドヘルドを見据えているこのタイミングで、AMDが自社のiGPUを見捨てる選択肢はないはずだ。

次の焦点は7月のRDNA 3公式サポート開始だ。AMDがRDNA 3.5をそこに含めるかどうかは、まだ分からない。ただ、今回の流出が示したのは、含めない理由が技術的なものではないということだ。

参照元: Reddit - r/radeon: FSR 4.1.1 Int8 has leaked through Proton Experimental

関連記事

この記事を共有する