パランティアCEOがAI業界を「完全に狂っている」と攻撃。NVIDIAと組む
パランティアCEOのアレックス・カープ(Alex Karp)氏が現地時間7月1日、米AI業界を「完全に狂っている(effing insane)」と激しく批判した。NVIDIAとの提携発表に合わせた約20分間の出演は、企業向けAIの価格構造から米軍の技術外注問題まで、広範な攻撃に発展した。
トークンに注いだ費用は、どこへ消えるのか
カープ氏の批判は、AIラボのトークン課金モデルそのものに向いている。
| クローズドモデル | オープンウェイト | |
|---|---|---|
| データの行先 | 提供元を経由 | 顧客環境で完結 |
| モデルの重み | 開発元が管理 | 顧客が所有 |
| コスト | トークン課金 | 自社で運用 |
| IP保護 | 流出リスクあり | 外部に出ない |
企業がOpenAIやAnthropicのAPIにトークン単位で費用を払うとき、生成結果と引き換えに自社のデータとプロンプトがモデル提供元の環境を通過する。カープ氏はこれを「企業に対する富の税金」と呼んだ。トークンを買い続けても企業には何も残らず、AIラボだけがデータを蓄積してモデルを改良できる非対称性を指摘した。
取引先のCEOたちが非公式の場で「トークンに費用を注いでもまったく価値が生まれない」と訴えていると明かし、番組の共同司会者ベッキー・クイック(Becky Quick)氏から「かなり怒っているように聞こえる」と指摘されると、こう返した。
「いや、これは私を通じてアメリカの企業が声を上げているんだ」(カープ氏のCNBCでの発言)
嘘ではないかもしれない。パランティアが前日に公開した9項目の「AIソブリンティ宣言」は、同じ論点を文書化したもので、tokenmaxxing(トークンの大量消費)は「偽りの進歩への中毒」を生むと断じている。Microsoft CEOのサティア・ナデラ(Satya Nadella)氏も6月中旬に長文エッセイを投稿し、少数のAIモデルに産業全体の知識がコモディティ化される事態に警鐘を鳴らした。企業のAI支出に対する不満が、異なる立場の経営者から同時期に噴出している。
NVIDIAと組んだ「対案」の中身
批判だけなら6月10日のインタビューと変わらない。今回は具体的な代替案を携えている。
パランティアは6月29日、NVIDIAとの提携拡大を発表した。NVIDIAのオープンモデルNemotronを、パランティアのソブリンAIオペレーティングシステム(AIP、Foundry、Ontology、Apolloで構成)に統合し、エアギャップ環境(外部ネットワークから完全に隔離されたセキュリティ構成)で運用するエンジンを構築する。
仕組みを端的に言えば、クローズドモデルのAPIを叩くのではなく、オープンウェイトモデルを顧客の管理下に置き、自社データで学習させ、モデルの重みも含めて顧客が所有する。NVIDIAのジェンスン・フアン(Jensen Huang)CEOは「オープンソースAIは国家安全保障と米国の技術的リーダーシップの基盤だ」とコメントした。
カープ氏がCNBCで強調したのは、この構造によって企業と政府機関が「計算資源、モデル、データスタック、競争優位のすべてを自分で管理できる」という点だ。
「戦場をシリコンバレーに外注するのか」
批判のもう一つの軸は、安全保障だった。
カープ氏は米軍がAI技術をOpenAIやAnthropicに依存している現状に対し、「この国の戦場を、シリコンバレーの合意的見解に外注するのか。完全に狂っている」と発言した。機密環境で運用されるAIモデルの重みを、モデル開発元が管理し続ける構造への懸念を繰り返し述べている。
この発言の背景には、直近数か月の政府とAIラボの摩擦がある。国防総省は3月にAnthropicを「サプライチェーンリスク」に指定した。Anthropicが自社技術の軍事利用に制限を設け、その撤廃を拒否したことが理由とされる。6月にはトランプ大統領がAIモデルの公開前に連邦政府の監査を求める大統領令を発出した。6月30日にはAnthropicのClaude Fable 5とMythos 5に対する輸出規制が解除されている。
パランティアは国防総省のMavenシステム(AIを使った標的識別プラットフォーム)の主要インテグレーターであり、米陸軍の次世代指揮統制システムNGC2のデータ基盤にもFoundryが採用されている。AIラボのモデルを仲介して軍に届ける立場から、「自分たちの閉域環境でオープンモデルを使う方が安全だ」と主張するのは、商業的に理にかなっている。
批判か、セールスか
カープ氏の発言が強烈であるほど、一つの事実が際立つ。パランティアはAIモデルを自社で開発していない。NVIDIAやAnthropicを含む他社のモデルを統合・運用する「中間層」に位置している。フロンティアモデルの価値を否定するほど、中間層としてのパランティアの存在意義は強調される。
株式市場はこのメッセージを好感し、パランティア株は7月1日に9%上昇して約125.73ドルで取引を終えた。年初来では約40%下落しており、今回の反発は一連の契約発表(NVIDIA提携、米陸軍NGC2、Zeta Global、Surf Air Mobility)が集中した週に重なっている。
カープ氏の主張にすべて同意するかどうかは別として、「AIに費用を払っているが、その費用が自分たちの資産になっているのか」という問いは、企業の経営者が避けて通れない論点になりつつある。
参照元:Palantir's Karp bashes token-based AI model as 'completely wrong'
他参照:Open Models, Closed Environments: Palantir Brings Secure AI to US Agencies With NVIDIA Nemotron、'You Sound Pretty Angry': CNBC Anchor Left Stunned as Palantir CEO Blows His Stack During Wild Interview