Firefox、iOS版に広告ブロックを内蔵。拡張なしで動く

iPhoneのFirefoxに広告ブロック機能が追加された。拡張機能なしで動く。初期設定では無効だが、設定から数タップで有効にできる。

Firefox、iOS版に広告ブロックを内蔵。拡張なしで動く

iPhoneのFirefoxに広告ブロック機能が追加された。拡張機能なしで動く。初期設定では無効だが、設定から数タップで有効にできる。


iPhoneでは拡張機能が使えなかった

iPhoneのブラウザには、根本的な制約がある。

Appleは多くの地域で、iOS上のすべてのブラウザにWebKit(Safariと同じ描画エンジン)の使用を義務づけている。Chrome、Edge、Brave、Firefox。名前が違っても、中身はすべてWebKitで動いている。この制約のもとでは、Firefox本来のGeckoエンジンも、デスクトップ版で動くuBlock Originのような拡張機能も使えない。

iPhoneでFirefoxを使う人にとって、広告対策の手段は限られていた。「強化型トラッキング防止」(ETP)を「厳格」モードにすれば一部のトラッカーや侵入型広告を減らせるが、広告そのものを消す機能じゃない。Safariにはコンテンツブロッカー用のAPIが用意されているが、Firefoxはそれを使う仕組みを持っていなかった。

広告を消したければBraveに乗り換えるか、Safari用の広告ブロックアプリを使うか。iPhoneのFirefoxユーザーが置かれてきた状況はそういうものだった。

EasyListを使う内蔵型

Mozillaがサポートページを公開したのは現地時間2026年8月中旬だ。iOS版Firefoxに、広告ブロック機能を内蔵した

ブラウザ本体の機能として組み込まれている。フィルタリストにはEasyList(広告遮断の定番リスト)を採用し、読み込み前の段階でネットワークレベルで広告を遮断する。

遮断対象はサードパーティーの広告ネットワーク、広告関連トラッカー、Webサイトが配信するサードパーティー広告、ポップアップやオーバーレイのような侵入型の広告フォーマットだ。

有効にするには、Firefox for iOSのメニューからSettings(設定)を開き、Browsing(ブラウジング)の中のContent(コンテンツ)セクションにあるAd Blocker(広告ブロッカー)をオンにする。

個別のWebサイトで切り替えたい場合は、ページを開いた状態でサイトメニューからAd Blockerを直接オン・オフできる。

初期設定では無効になっている。ユーザーが自分で選んで有効にする設計だ。

「ブロックしないもの」に意図がある

この広告ブロッカーには、意図的に遮断しない対象がある。

Google、Bing、DuckDuckGoなど検索エンジンの結果ページに表示される広告はブロックしない。Firefoxのホーム画面や新しいタブに表示されるスポンサーコンテンツもブロックしない。

iOS版Firefox 広告ブロックの遮断対象
対象遮断
ブロックする
外部広告ネットワーク
広告関連トラッカー
Webサイトの外部広告
ポップアップ・オーバーレイ
ブロックしない
検索エンジンの広告×
Firefox内スポンサー枠×
※EasyListベースのフィルタリストによる遮断。初期設定は無効。段階的に配信中で全ユーザーには未提供

検索広告を除外する理由は、Mozillaの収益構造と直結している。2025年5月の米国司法省のGoogle反トラスト訴訟で、MozillaのCFOはFirefoxの収入の約85%がGoogleからの検索契約であり、失えば「恐ろしい」下降局面に入ると証言した。

広告を消す機能を作りつつ、自分たちの収入源になっている広告には手をつけない。矛盾に見えるかもしれないが、ここにMozillaのリアルが詰まっている。検索広告の対価を失えばFirefoxの開発資金が消える。Firefoxが消えれば、AppleとGoogleに属さない最後のブラウザエンジンGeckoが消える。消すべき広告と、消してはいけない広告の線引きは、きれいごとでは済まない。

デスクトップの広告ブロック戦争とつながっている

このタイミングには文脈がある。

GoogleのChromeは2025年7月に安定版でManifest V2(MV2)を完全に無効化し、uBlock Originの完全版を事実上排除した。2026年8月31日にはChromeウェブストアからすべてのMV2拡張が削除される予定だ。EdgeもMV2の廃止を正式に発表し、年末までの完了を目指している。

この流れの中で、Firefoxは現地時間8月10日に宣言した。

Our support for uBlock Origin isn't going anywhere(uBlock Originへのサポートはどこにも行かない)

デスクトップのFirefoxは、MV2とMV3の両方をサポートし続ける唯一の主要ブラウザだ。

デスクトップではuBlock Originを守り、iOSでは拡張機能が使えない代わりに内蔵の広告ブロックを提供する。プラットフォームの制約に合わせて手段は変えるが、広告を遮断する選択肢をユーザーに渡すという方向性は一貫している。

Mozillaは今年に入って、Firefox 149にBrave製の広告ブロックエンジン「adblock-rust」を密かに同梱していたことが発覚している。デスクトップ版でもブラウザ内蔵の広告ブロックへの布石は打たれており、iOS版はその最初の実装が表に出たものと見ることもできる。

まだ全員には届いていない

Mozilla自身がサポートページで明記している通り、この機能は実験的な段階的展開の途中にある。すべてのiOS版Firefoxユーザーに一斉に配信されるわけではなく、段階的に配信されている。設定画面にAd Blocker(広告ブロッカー)の項目が表示されていなければ、まだ配信対象に入っていない。

技術的にもすべての広告を消せるわけじゃない。Webサイトによって広告配信の仕組みが異なるため、EasyListでカバーしきれない手法で配信される広告は表示される。Mozillaもこの点を認めた上で公開している。完璧を待たずに出す判断だ。

ChromeとEdgeが広告ブロッカーの動作基盤を潰していく中で、Firefoxがブラウザ本体に広告ブロックを組み込み始めた。拡張機能が使えるデスクトップでは拡張機能を守り、使えないiOSでは自分で作る。広告に依存しながら広告を消す機能を作る。その矛盾を抱えたまま前に進んでいるのが、いまのMozillaだ。

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