Pwn2Own 2日目、Exchangeが3つのバグで陥落

Pwn2Own 2日目、Exchangeが3つのバグで陥落

ベルリンで開催中のPwn2Own 2日目、Microsoft ExchangeがSYSTEM権限のRCEに屈した。Orange Tsai氏が3つのバグを連鎖させ、単独で20万ドルを手にした。


Exchangeが3つのバグの連鎖で陥落

Pwn2Own Berlin 2026の2日目が終わった。研究者たちは新たに15件のゼロデイを暴き、38万5,750ドルの賞金を分け合った。1日目と合計すると、2日間で39件のゼロデイと総額90万8,750ドル。3日目を残しての数字だ。

会場の主役は再びOrange Tsai氏だった。DEVCORE Research Teamに所属する台湾の研究者で、ProxyLogon・ProxyShellの発見者として知られる。今回はExchangeを標的に、3つのバグを連鎖させてSYSTEM権限のリモートコード実行(RCE)を成功させた。報酬は20万ドル、Master of Pwnポイントは20。

ExchangeのRCEは、企業の電子メール基盤を丸ごと掌握できる類の脆弱性だ。ProxyLogonの記憶が新しいセキュリティ担当者なら、この一報で背筋が冷えたはずだ。

ProxyLogon(2021年)はExchangeのアーキテクチャレベルの欠陥を突いた攻撃連鎖で、世界中の数万台のオンプレミスExchangeサーバーが侵害された。Orange Tsai氏はその発見者であり、今回のExchange攻略はその系譜に連なる。

Windows 11は別ルートから陥落

Siyeon Wi氏は、整数オーバーフローのバグでWindows 11の権限昇格に成功した。報酬は7,500ドル。前日の攻撃で同じバグが報告されていたため、この金額に減額されている。同じ穴を別の研究者が独立に見つけている。Windowsの完全なパッチ適用済み環境でも、まだ拾い切れていない脆弱性が複数の研究者の視界に入っている。

1日目には3チームがWindows 11をそれぞれ別の権限昇格バグで陥落させた。DEVCORE Internship ProgramのAngelboy氏とTwinkleStar03氏、GMO CybersecurityのKentaro Kawane氏、そしてMarcin Wiązowski氏が、それぞれ3万ドルずつ獲得している。

2日間でWindows 11は計4回陥落した。同じOSに対して4つの独立した権限昇格ゼロデイが90日以内に消化される速度を、ベンダーのパッチサイクルが追いきれるかが今後の焦点になる。

Linux・NVIDIAも標的に

Red Hat Enterprise Linux for WorkstationsではTeam DDOSのBen Koo氏がUse-After-Freeバグでroot権限を取得し、1万ドルを獲得した。1日目にもIBM X-Force Offensive ResearchのValentina Palmiotti氏が同OSをレースコンディションで陥落させており、2日連続でエンタープライズLinuxが地に落ちた格好だ。

NVIDIA Container Toolkitには0xDACA氏とNoam Trobishi氏がそれぞれUse-After-Freeバグを当てた。Container ToolkitはAIワークロードをコンテナで動かす際の標準ツールで、ここが破られるとコンテナ脱出を経てホスト側への侵入経路が開く。AIインフラの足場がそのまま攻撃面になる構造を、今年のPwn2Ownは正面から扱っている。


AIエージェントが新たな主戦場に

今年のPwn2Ownで露骨に変わったのは、AI関連カテゴリの厚みだ。AIデータベース、コーディングエージェント、ローカル推論、NVIDIA AI製品が独立カテゴリとして設けられた。

2日目のAIカテゴリでは、Viettel Cyber SecurityのLe Duc Anh Vu氏がCursorのAIコーディングエージェントを陥落させて3万ドル、SinSinology氏ことSina Kheirkhah氏(Summoning Team)がOpenAI Codexのゼロデイで2万ドル、Compass SecurityがCursorを別経路で攻略して1万5,000ドルを獲得した。

開発者の手元で動くAIアシスタントが、企業ネットワークへの新しい入口になりつつある。CursorやCodexはローカルファイルにアクセスし、外部APIを呼び、シェルコマンドを実行する。脆弱性が一つでもあれば、それがそのまま開発者マシンへの足場になる。

Pwn2OwnのAI関連カテゴリは2025年から拡張され続けている。ベンダーは数千件のスタートアップを買収・統合するスピードで機能を追加しているが、セキュリティレビューの工程は同じ速度では伸びていない。今回の結果は、その時間差を示すスナップショットだ。

失敗もあった

すべてが成功したわけではない。Palo Alto NetworksのTao Yan氏とEdouard Bochin氏はApple Safariのレンダラー単体攻撃を時間内に成立させられなかった。Rapid7のStephen Fewer氏もMicrosoft SharePointで時間切れ。Viettel Cyber Securityの@rewhiles氏と@gnas0x0018氏も、Mozilla Firefoxのレンダラー攻撃で同じく時間切れとなった。

Pwn2Ownは制限時間内にデモを完走しなければ報酬が出ない。これは脆弱性が存在しないことを意味しない。ステージ上で動かせなかっただけで、後日パッチの裏側に同じバグが残っている可能性は十分ある。

Pwn2Own Berlin 2026 Day 2 成功事例
標的 研究者・所属 カテゴリ 報酬
Microsoft
Exchange
Orange Tsai氏
(DEVCORE)
サーバー $200,000
Cursor Le Duc Anh Vu氏
(Viettel Cyber Security)
AIエージェント $30,000
NVIDIA Container
Toolkit
0xDACA氏
Noam Trobishi氏
NVIDIA $25,000
OpenAI
Codex
Sina Kheirkhah氏
(Summoning Team)
AIエージェント $20,000
Cursor Compass Security AIエージェント $15,000
Red Hat Enterprise
Linux
Ben Koo氏
(Team DDOS)
権限昇格 $10,000
Windows 11 Siyeon Wi氏 権限昇格 $7,500
※ 出典:Zero Day Initiative Pwn2Own Berlin 2026 Day Two Results。Windows 11は前日のバグと衝突したため減額。

DEVCOREが暫定首位

2日目終了時点のMaster of Pwnランキングは、DEVCOREが40.5ポイント・40万5,000ドルで首位を独走している。2位のOut of Boundsが10.75ポイント・7万5,750ドル、3位のChompie氏(IBM X-Force)が7ポイント・7万ドルと続く。

Master of Pwn 賞金獲得額(Day 2終了時点)
※ 出典:Zero Day Initiative Pwn2Own Berlin 2026 Day Two Results。DEVCOREはOrange Tsai氏のEdge脱出($175,000)とExchange RCE($200,000)を含む。

DEVCOREの稼ぎ頭は明確にOrange Tsai氏だ。1日目のMicrosoft Edgeサンドボックス脱出(17万5,000ドル)に続いて、2日目のExchange RCE(20万ドル)。一人で37万5,000ドルを稼ぎ出している。

3日目には、Microsoft Windows 11、VMware ESXi、Red Hat Enterprise Linux、Microsoft SharePoint、そして複数のAIコーディングエージェントが控える。STARLabs SGのNguyen Hoang Thach氏は、ESXiのクロステナント・コード実行を狙う。成功すれば20万ドルだ。

ベンダーは公開から90日以内にパッチを出さなければならない。エンタープライズ全体に並ぶ製品の名前を見れば、夏までに修正に追われるチームの顔ぶれは、おおむね見えている。


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