サムスン電子、ボーナス100倍格差に「黒い服」で抗議が拡大

サムスン電子、ボーナス100倍格差に「黒い服」で抗議が拡大
Samsung

サムスン電子のスマートフォン・家電部門の社員が、全身黒ずくめで出勤するという異例の集団行動に出ている。半導体部門との成果給格差への抗議は組合の急成長を呼び、法的闘争にまで発展しながら全国へ広がりつつある。


「同じ会社、同じ権利」

6月18日、京畿道水原のサムスン電子本社に、黒い服と黒いマスクを着用した社員の列ができた。スマートフォン、テレビ、家電を担うDX(Device eXperience)部門の社員による「黒い服出勤キャンペーン」だ。

韓国で黒い服は、葬儀や哀悼の場で身につけるものでもある。その色を職場に持ち込んだ意味は、説明するまでもない。

キャンペーンは6月10日にソウル江東の事業所で始まり、16日に慶北亀尾、18日に水原本社へと拡大した。昼食時には水原モバイル研究所前で社員が沈黙デモを続けている。今後も23日に光州、24日にソウル牛眠と、全国の事業所へ展開する予定だという。

1か月で10倍に膨れ上がった組合

キャンペーンを主導するのは、DX部門の社員を中心に結成された第3労組「動行(トンヘン)」だ。

5月の賃金合意をめぐる混乱の中で、約2600人だった組合員が1か月で2万1000人を超えた。DX部門全体の約5万1700人に対する加入率は41%に達している。6月19日付の報道では「DX全体人員の半分にあたる2万5000人が加入した」とも伝えられており、数字は日ごとに膨らんでいる。

組合は社内メッセンジャーのプロフィール名を「같은 회사 같은 권리(同じ会社、同じ権利)」に変更するよう呼びかけ、年俸契約書の署名を保留するよう促している。静かだが、確実に社内の空気を変えている。

格差100倍の構造

抗議の根にあるのは、5月に成立した賃金合意の報酬構造だ。

サムスン電子は半導体(DS)部門の営業利益の10.5%を財源とする「特別経営成果給」を新設した。営業利益300兆ウォン(約31兆9000億円)の前提で試算すると、メモリ事業部の社員は1人あたり最大6億ウォン(約6400万円)を受け取る計算になる。

一方、DX部門の社員に支給されるのは、合意金名目の自社株約600万ウォン(約64万円)にとどまる見込みだ。

サムスン電子 部門別ボーナス格差(2026年見込み)
※ 2026年営業利益300兆ウォン前提の試算。1ウォン≒0.106円で換算

同じサムスン電子の社員証を持ちながら、ボーナスに100倍の差がつく。Galaxyを設計し、テレビを製造している社員が、隣の事業部の100分の1しか受け取れない。怒りが目に見える形になったのは、むしろ遅すぎたくらいだろう。

投票から排除され、法廷でも退けられ

この構造に怒ったDX部門の社員は、合意案の賛否投票に参加して反対票を投じようとした。ところが、投票を実施したサムスン電子最大の労組は、動行労組が共同交渉団から離脱したことを理由に投票権を認めなかった。

動行労組は5月26日、水原地方裁判所に投票手続きの中止を求める仮処分を申請した。しかし裁判所はこれを退けている。投票は予定通り進み、73.7%の賛成で合意案は可決された。

DX部門の声は、交渉の場にも投票箱にも届かなかった。

株主も「違法」と主張

社内だけではない。韓国株主行動本部は、サムスンのイ・ジェヨン(Lee Jae-yong)会長の自宅前で記者会見を開き、成果給合意が商法に違反すると主張している。営業利益の12%を株主総会の決議なく従業員に配分する仕組みは、事実上の「隠し配当」にあたるとの論理だ。訴訟も予告している。

半導体ブームの利益をめぐって、社員と社員、社員と株主が同時に争っている。同じ利益の取り分を、労組も、他部門も、株主も求めている。

サムスン電子 成果給紛争の経緯
5月20日
賃金合意が暫定妥結(ストライキ回避)
DS部門に営業利益10.5%の特別成果給を新設
5月26日
動行労組、投票中止の仮処分を申請
裁判所は棄却
5月27日
賛成73.7%で合意案可決
動行労組の組合員は投票から排除
6月10日
「黒い服出勤」キャンペーン開始
江東を皮切りに亀尾→水原と全国展開
6月18日
水原本社で沈黙デモ
動行労組の組合員2万人突破(1か月で約8倍)
6月23〜24日
光州・牛眠でキャンペーン予定
DX部門の過半数加入を目標に拡大中
※ 全て2026年。日付は韓国現地時間

沈黙が語ること

黒い服に黒いマスク。声を上げない抗議は、ストライキよりも静かで、だからこそ無視しにくい。

動行労組は過半数の加入を目標に掲げている。DX部門の5万1700人の過半を押さえれば、今後の交渉の地形そのものが変わる。黒い服のキャンペーンは、その入口にすぎない。

5月の合意でストライキは回避された。しかし合意が刻んだ亀裂は、消えるどころか日ごとに深くなっている。

参照元

Samsung seals strike-averting wage deal amid bonus backlash - The Korea Herald

他参照

Samsung bonus deal faces shareholder revolt - The Korea Herald

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