SteamOS 3.8安定版公開。Steam Machine発表直前のOS整備が完了
3月にプレビューとして姿を見せたSteamOS 3.8が、現地時間6月17日、バージョン3.8.10として全ユーザーに届いた。Steam Machine対応、Linuxカーネル6.16、デスクトップモードのWayland標準化。3ヶ月のベータ期間を経た変更量は、パッチノートの長さだけで異例だと分かる。
発表5日前のOS整備
リーク情報によれば、Steam Machineの価格・発売日は6月23日に発表される可能性がある。6月30日に予約開始とも伝えられている。あくまで未確認の情報だが、発表の5日前にOS安定版を全ユーザーへ配信した事実は、ソフトウェアを先に仕上げる動きとして筋が通る。
パッチノート冒頭の「Steam Machineハードウェアの初期サポート」は、3月のプレビュー時点から存在していた一行だ。だが当時は言葉だけだった。安定版に載ったことで、ソフトウェア側の準備は完了段階に入った。
問題はハードウェア側にある。Valveは2025年11月の発表時、小売価格を1,000ドル前後で想定していたとされる。それがAI需要によるDRAM価格高騰で計画が崩れた。リーク情報では1,300〜1,500ドル(約21万〜24万円)にまで跳ね上がる可能性が取り沙汰されている。当初の「2026年前半」が「2026年夏」に後退した経緯を考えれば、Valveが価格発表を引き延ばしてきた理由は想像に難くない。
2025年11月 Steam Machine発表 「2026年前半」の出荷を予定 2026年3月 SteamOS 3.8プレビュー公開 Steam Machine初期サポートが記載 2026年6月 出荷時期を「2026年夏」に後退 Verified拡張の告知で確認 6月17日 SteamOS 3.8.10安定版リリース 3ヶ月のベータを経て全ユーザーに配信 6月23日 Steam Machine価格発表か リーク情報。予約は6月30日とも |
SteamOS 3.8の中身
安定版の変更履歴はSteamOS 3.7からの差分すべてを含むため膨大だが、柱は3本ある。
Linuxカーネル6.16とグラフィックスドライバの更新。 Steam Deckとサードパーティハンドヘルドの両方で、パフォーマンスと安定性が底上げされた。HDMI VRRの予備対応、VRRフレームペーシングの改善、ゲームごとのパフォーマンス設定が起動時に反映されない問題の修正など、日常的な体験に直結する修正が多い。
デスクトップモードのWayland標準化。 KDE Plasmaが6.2.5から6.4.3に更新され、デスクトップモードがWaylandをデフォルトで使うようになった。外部HDRディスプレイ対応、VRR対応、ディスプレイごとの個別スケーリング、回転ディスプレイの改善。X11は開発者設定から引き続き選択できる。ゲーミングモードとデスクトップモードのパフォーマンス差を縮める修正も入っており、ドック接続でデスクトップ用途に使う層には恩恵が大きい。
サードパーティハンドヘルドの大幅対応拡大。 Lenovo Legion Go 2、ROG Xbox Ally、MSI Claw、OneXPlayer、GPD Win 5、Anbernic Win600、OrangePi NEOと、対応機種は一気に広がった。中でも目を引くのは入力レイテンシで、ハンドヘルドのコントローラー応答が5〜8ミリ秒から100〜500マイクロ秒に短縮された。桁が変わっている。
ハンドヘルド対応はSteamOSを「Steam Deckの専用OS」から「汎用ゲーミングLinux」に変える鍵だ。ASUS、Lenovo、MSIのハンドヘルドがSteamOSで公式に動くなら、Windowsを選ぶ理由がまた一つ減る。
細部に宿る成熟
大きな柱の陰で、地味だが実用的な修正が積み重なっている。
オーディオ周りでは、HDMI接続時にサラウンド構成を自動検出するようになった。Bluetoothヘッドセットのマイク使用も設定で有効にできる(再生品質は低下する)。Steam Deck OLEDで再起動後にスピーカー出力が消える問題、スリープ復帰後の音声アンダーランも潰した。
ファームウェアも更新された。Steam Deck LCD用BIOS v133、OLED用BIOS v114。OLED版は充電制限に達した時点でLEDの色が変わるようになった(従来は100%到達時のみ)。
開発者向けには、LAVD(Latency-criticality Aware Virtual Deadline)CPUスケジューラの初期対応が加わった。ゲーミングワークロードのレイテンシ特性を分析し、遅延に敏感なタスクを優先処理するスケジューラで、steamosctlコマンドから有効にできる。仮想マシンゲストとしての動作(VirtIOドライバ)にも初期対応しており、SteamOSの用途が広がる余地を作っている。
Steam Deckを取り巻く空気
SteamOS 3.8の出来は良い。だが、それを受け取るユーザーの懐事情は厳しくなっている。
Steam Deck OLEDは2026年だけで2度の値上げを受けた。3月に1万5,000円、6月にさらに約3万8,000〜5万3,000円。1TBモデルは16万7,980円。発売当初の84,800円から2年で約2倍になった。
海外でも最大300ドルの値上げで、再販時には24時間以内に売り切れたと報じられている。Steam Machineの価格がリーク通り1,300ドル超なら、日本では20万円を超える計算になる。
一方で、SteamのLinuxユーザー比率は伸び続けている。3月の調査では5.33%に達し、5月でも4%弱を維持した。Linuxへの関心を押し上げているのは、Windows 10のサポート終了と、Windows 11へのAI機能統合に対する反発だ。
ValveがSteamOSをSteam Deck以外のハンドヘルド、据え置き機、そして将来的にはデスクトップPCにまで広げようとしているのは明らかだ。SteamOS 3.8はその土台として、技術的には十分な水準に達した。あとは、メモリ市場が許す価格で、それを載せるハードウェアを届けられるかどうか。6月23日に発表されるのは、OSのバージョン番号ではない。値札だ。
参照元:SteamOS 3.8 - Steam Community
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