サムスン電子の半導体工場、18日間ストを前日夜に回避
約4万8000人の組合員を抱えるサムスン電子の労働組合が、2026年5月21日から18日間にわたるゼネストを前日夜に留保した。賃金交渉で労使が暫定合意に達したのは、ストが予定されていた当日の数時間前だった。
約4万8000人の組合員を抱えるサムスン電子の労働組合が、2026年5月21日から18日間にわたるゼネストを前日夜に留保した。賃金交渉で労使が暫定合意に達したのは、ストが予定されていた当日の数時間前だった。
崖っぷちの合意
合意の場となったのは、京畿道水原市にある雇用労働部京畿地方雇用労働庁。労組共同闘争本部のチェ・スンホ(Choi Seung-ho)委員長と、サムスン電子DS(デバイスソリューション、半導体部門)側の交渉責任者ヨ・ミョングウ(Yeo Myeong-gu)が暫定合意案に署名した。仲介に立ったのは、雇用労働部のキム・ヨンフン(Kim Young-hoon)大臣だ。
サムスン電子は声明で「労使は賃金と労働協約に関する暫定合意に達した」と発表。労組も予定していたスト(5月21日〜6月7日)を留保する方針を組合員に通知した。
ただし、この合意はまだ仮のものだ。労組員による賛否投票が5月22日から5月27日にかけて行われ、可決されれば正式合意となる。否決されれば、スト再燃の可能性が残る。
「5月21日から6月7日までの全面ストライキは、別途指針があるまで留保する」 (労組共同闘争本部が組合員に通知した内容)
5カ月続いた対立の核心
今回の交渉が長期化した背景には、部門間のボーナス格差という複雑な事情がある。
AIブームによるメモリ需要の急拡大で、サムスンのDRAM部門は記録的な利益を上げている。その一方で、ファウンドリ(受託製造)や半導体設計部門は依然として厳しい状況が続く。労組はAI特需で潤うメモリ部門の実績に見合う報酬を求めてきたが、サムスン側は「事業ごとに業績が大きく異なる中での利益分配は複雑だ」と抵抗した。
労組が求めていたのは、年間営業利益の15%を社員ボーナスに充てること、そして年収の50%というボーナス上限の撤廃だった。サムスンはこれを拒否した。
比較対象として意識されたのが、競合のSKハイニックスだ。同社は今年中に1人当たり約47万7000ドル(約7,580万円)、来年はほぼ90万ドル(約1億4,300万円)超のボーナスが見込まれると伝えられており、サムスン社員の不満を高める一因となっていた。
交渉は2月と3月にも決裂。5月12日の最後の協議でも合意に至らず、この間に流出した会議の内容では、メモリ部門607%・ロジック部門50%という大幅な格差が示されていたとされる。労組はこの提案を拒否し、人材流出を招くと訴えた。
ストが持つ重さ
今回のゼネストが単なる労使交渉にとどまらなかった理由は、サムスンの経済的な存在感にある。
サムスン電子は韓国の輸出総額の約4分の1を占め、世界最大のメモリチップメーカーでもある。ゼネスト突入の場合、韓国の首相は「最大100兆ウォン(約660億ドル)の経済損害が生じうる」と警告した。サムスン側はスト開始6日前から生産の段階的縮小に着手し、法的な立場を確保するための仮処分命令も裁判所から取得していた。
組合が今年すでに行った1日ストでは、4万人以上が参加し、ファウンドリの夜間シフト生産が 58% 落ち込んだと報じられた。サプライチェーンへの影響は現実だった。
サムスン電子は韓国の輸出の約4分の1を担う。半導体ラインの長期停止は、国内経済にとどまらずグローバルなAIチップ供給にも波及しうる。
「回避」から「解決」へ
5カ月以上続いた対立が合意に向かった直接のきっかけは、政府の直接介入だった。5月19〜20日、キム・ヨンフン大臣が水原での交渉に加わり、膠着した協議を動かした。
合意内容の詳細は開示されていないが、会社側交渉担当のヨ・ミョングウは「メモリ部門もファウンドリ部門も半導体製造の現場で働く技術者であり、両方を適切に動機づける方法を話し合った」と述べており、一定のボーナス適用範囲拡大が含まれているとみられる。
ストの「留保」は、スト問題の「解決」と同じではない。投票結果しだいでは交渉がゼロに戻る。それでも、AI向けHBM(高帯域幅メモリ)の需要が世界的に過熱するこのタイミングで、主要な生産停止リスクがいったん退いたことは間違いない。
賛否投票の期限は5月27日。その結果が、サムスン最大の労使危機の幕引きとなるか、ストへの再点火となるかを決める。
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