米国土安全保障省の情報共有基盤にサイバー攻撃。W杯開催中

米国土安全保障省の情報共有基盤にサイバー攻撃。W杯開催中

米国の安全保障機関が脅威情報の共有に使うプラットフォームHSINが、外部から侵害された。FIFAワールドカップ2026の警備を支えている最中の出来事で、上院情報特別委員会の幹部は国家安全保障への影響を警告している。


ワールドカップの裏で起きたこと

国土安全保障省(DHS)が運用する国土安全保障情報ネットワーク(HSIN)が、サイバー攻撃を受けた。侵害は2026年5月下旬から6月初旬にかけて発生したとみられ、DHSが7月1日に認めた。

HSINは、連邦・州・地方自治体・法執行機関・民間の重要インフラ事業者が、機密扱いではないが機微な情報を共有するためのプラットフォームだ。20年以上にわたって運用され、大規模イベントの安全確保や緊急時の対応調整、脅威情報のリアルタイム共有を担ってきた。

攻撃者はHSINのサーバーと、連携に使われるSharePointシステムの両方を標的にした。誰が、何のために侵入したのかは分かっていない。盗まれたデータの内容や量も不明のままだ。

DHSの情報分析局は被害評価を実施済みだが、調査は継続中とされる。DHS側は声明で「非機密のレガシー情報共有環境に関するサイバーインシデント」と表現し、機密ネットワークへの影響はないと強調した。

タイミングの問題

マーク・ウォーナー(Mark Warner)上院議員(民主党・バージニア州選出)が、7月1日に声明を発表した。上院情報特別委員会の副委員長を務める同議員は、HSINに保管される情報が「非機密であっても極めて機微であり、漏洩は国家安全保障を脅かす」と指摘している。

ウォーナー氏が懸念を強める理由は明確だ。HSINは現在、米国・カナダ・メキシコの3カ国にまたがるFIFAワールドカップ2026の警備調整を支えている。警備計画の策定、機関間の連携、脅威情報の共有。すべてがこのプラットフォーム上で動いている最中に侵入を受けた。

ウォーナー氏はさらに、2025年1月にワシントンD.C.上空でアメリカン航空5342便と米陸軍ブラックホークヘリコプターが衝突し67人が犠牲になった事故の対応にも、HSINが使われたことに言及した。

日常の情報共有だけではない。大規模な危機が起きた瞬間に機能するためのシステムが、侵害を受けた。

繰り返される問題

HSINの脆弱性が露呈したのは今回が初めてではない。

2023年3月から5月にかけて、HSINのインテリジェンスセクション(HSIN-Intel)で設定ミスが起きていた。委託先のコーディングエラーが原因で、アクセス権限が「全員」に設定され、本来閲覧できないはずの情報を数万人が開ける状態になった。

FBIや国家テロ対策センターの資料を含む439件の情報に、認可外ユーザーが1525回アクセスしていた。

2023年のインシデントは内部の設定ミスであり、2026年の侵害は外部からの意図的な攻撃だ。原因は異なるが、運用上極めて重要なデータを扱いながらセキュリティ基盤が任務の重さに追いついていない点は共通している。

DHS自身が今回のシステムを「レガシー環境」と呼んでいる事実が、それを裏づける。

連鎖するインシデント

HSINの侵害は、トランプ政権発足以降に連邦政府を襲ったセキュリティ上の失態の最新事例でもある。

2025年3月には、政権幹部がSignal上で機密情報や作戦計画を共有していたことが発覚した。政府効率化局(DOGE)のメンバーがアメリカ人の個人情報を格納する連邦データベースにアクセスした問題も続いた。

2026年5月には、CISAの委託先企業がパスワードやクラウドの認証情報を公開状態のまま放置していたことが判明。FBIは2026年前半、監視対象者の電話番号が漏洩した件で「重大サイバーインシデント」を議会に報告している。

CISA自身も予算削減と人員整理を受け続けてきた。米国のサイバー防衛を支える機関と基盤が、同時に弱体化している。

HSIN侵害の調査は継続中で、攻撃者の正体も持ち出された情報の範囲も確定していない。分かっているのは、ワールドカップの最中に安全保障の共有基盤が破られたこと。そしてそれが、ここ1年あまり連邦政府で続くセキュリティ上の失態と同じ地続きにあるということだ。

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