米CISA長官候補のプランキー、13カ月の審議停滞を経て辞退
米国のサイバー防衛を担う中核機関CISAが、常任長官不在のまま漂流を続けている。トランプ大統領から二度指名されたショーン・プランキーが4月22日、自らの指名の撤回をホワイトハウスに要請した。議会審議が1年を超えて動かず、本人が見切りをつけた形だ。
米国のサイバー防衛を担う中核機関CISAが、常任長官不在のまま漂流を続けている。トランプ大統領から二度指名されたショーン・プランキーが4月22日、自らの指名の撤回をホワイトハウスに要請した。議会審議が1年を超えて動かず、本人が見切りをつけた形だ。
13カ月の停滞の末に
プランキーの書簡はホワイトハウス宛に送られ、翌23日にはニューヨーク・タイムズが全文を公開した。本人は「上院が自分を承認しないことは明白になった」と記し、指名から13カ月が経過した現実を認めた上で撤回を願い出ている。
トランプ大統領が最初にプランキーをCISA長官候補に指名したのは2025年3月。2025年中に承認が得られず、 2026年1月に再指名 されたが、流れは変わらなかった。上院は一度も採決に進まないまま時間だけが過ぎた。
プランキー自身は書簡で「国土安全保障長官のマークウェイン・マリン(Markwayne Mullin)には、承認を受けたCISA長官がこれ以上遅れることなく必要だ」と書き、自ら退くことでポストを空ける選択をしたと説明している。13カ月の滞留が示したのは、本人の資質ではなく、米国の確認プロセスそのものの機能不全だった。
ブロックした2人の上院議員
停滞の核心にいたのは、同じ共和党の リック・スコット上院議員 (フロリダ州)だ。スコット議員は、サイバーセキュリティと無関係な沿岸警備隊の契約問題を理由にプランキーの指名を保留していた。プランキーはクリスティ・ノーム前国土安全保障長官の下で、沿岸警備隊関連のアドバイザーを務めた経歴がある。
指名の承認には過半数が必要だが、スコット議員の反対を崩すだけの票は最後まで集まらなかった。上院では個別議員の「ホールド」が実質的な拒否権として機能する。
もう一人のブロック役は民主党の ロン・ワイデン上院議員 (オレゴン州)だった。こちらは2022年に作成された米通信事業者のセキュリティ問題に関する非機密報告書の公開をCISAが拒んでいることを問題視し、その開示と引き換えでないと前に進めないとする姿勢を崩さなかった。
指名者の人柄や経歴の話ではない。2つの異なる政治案件の人質になったポストが、1年以上空席のまま放置されたという事実だけが残った。
長官不在のままのCISAで起きていること
CISAは連邦文民機関のネットワーク防衛と重要インフラ保護を議会から任された機関だ。ところが、プランキー指名が宙に浮いている間にCISA自体が様変わりしていた。
昨年5月から暫定長官を務めていたマドゥ・ゴットゥムカラ(Madhu Gottumukkala)が、わずか1年足らずで2026年2月に退任。在任期間にはトラブルが相次いだと指摘されており、現在は後任としてニック・アンダーセン(Nick Andersen)が暫定長官を務めている。
CISAは昨年以降、少なくとも3度の政府閉鎖、複数回の一時帰休、ホワイトハウスの指示による予算と人員の削減に直面している。
この1年、米政府とその同盟国に対するサイバー攻撃は止まっていない。イランの関連勢力が米重要インフラを狙い、中国系とされるソルトタイフーン(Salt Typhoon)による世界の通信大手への侵入も明らかになっている。防御の司令塔が弱っていく間に、攻撃側は動きを速めた。
予算3割カット案が追い打ちをかける
4月上旬には、トランプ政権が2027会計年度予算案でCISAの予算を 7億ドル以上 (約1110億円)削減する方針を示したことも判明している。全体の約3割に相当する規模で、CISAの運営予算は約20億ドルまで圧縮される見通しだ。
政権側の理屈は、CISAが「検閲」に関与しているというものだ。具体的には、2020年大統領選で同庁が取り組んだ偽情報対策を指しているとされる。つまり、トランプ大統領が敗れた選挙で同庁が果たした役割への、遅れてやってきた清算だ。
CISAは2018年にトランプ第一期政権下で発足した機関である。 自らの防衛機関を自ら削る という転倒がここにある。
誰の利益になる空白か
プランキーはサイバー作戦の第一人者として評価が高い人物だった。沿岸警備隊出身でアフガニスタンでは攻撃的サイバー作戦を担当し、ブロンズスター勲章も受けている。業界団体も繰り返し彼の速やかな承認を求めていた。
優秀な候補者がいても承認されない。承認されない空席が恒常化する。その間に予算と人員は削られていく。一連の流れは、サイバー防衛という機能そのものが米政府内で優先順位を落としていることを示している、と見ることもできる。
ランサムウェア、選挙セキュリティ、通信事業者の脆弱性、連邦ネットワーク全体の防御。どれも来年の中間選挙までに判断を迫られる課題だが、その舵取り役は当面決まらない。プランキーは書簡の最後で「次のCISA候補を支持する」と述べたが、ホワイトハウスは誰を次に出すのか明らかにしていない。
サイバー防衛の司令塔が、もう1年以上船長不在で漂っている。その静けさこそが、どの攻撃者にとっても最も好ましい状況かもしれない。
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