Windows 11 4月更新、SACの再インストール縛り撤廃
4月14日配信のWindows 11月例更新KB5083769は、派手な目玉こそないが、長年の制約を静かに片付けた。Smart App Controlを無効化するのに、OSの再インストールは要らなくなった。
4月14日配信のWindows 11月例更新KB5083769は、派手な目玉こそないが、長年の制約を静かに片付けた。Smart App Controlを無効化するのに、OSの再インストールは要らなくなった。
目玉はないが、地味に効く更新
KB5083769は、Windows 11 バージョン25H2と24H2向けに配信された累積更新で、ビルド番号はそれぞれ26200.8246と26100.8246に上がる。いつもの第二火曜日、いつもの段階的ロールアウト(CFR)。今回は「これが新機能だ」と言える派手な看板はない。
しかし、中身を開けてみると、長年の小さな不満を一つずつ潰していく姿勢が見える。アクセシビリティの拡張、設定アプリの現代化、ディスプレイ周りの信頼性改善。どれも単体では記事になりにくいが、日常的にWindowsを触る人間ほど効いてくる類の修正だ。
そして、その中に一つだけ、性質の違う変更が混じっている。
Smart App Controlの「クリーンインストール縛り」が外れた
Windows 11のSmart App Controlは、信頼できないアプリや有害な可能性のあるアプリの実行をOSレベルでブロックする機能だ。便利な機能ではある。ただし、一度有効にしたら最後、無効化する唯一の手段はOSのクリーンインストールだった。今どき信じがたい仕様だ。
開発者やパワーユーザーにとっては罠でしかなかった。業務で必要なツールがSACに引っかかった瞬間、選択肢は二つ。SACを切るためにWindowsを入れ直すか、そのツールを諦めるか。
今回の更新で、この縛りが消えた。「設定 → Windowsセキュリティ → アプリとブラウザーコントロール → Smart App Controlの設定」から、いつでもオン・オフを切り替えられる。
なぜ最初からそうしなかったのか、という問いは残る。おそらく「一度オフにされたら再度オンにされる保証がない」というセキュリティ設計の都合だろう。ただ、その理屈はユーザーの現実より仕様の純度を優先していた。今回ようやく現実と折り合いがついた形だ。
この変更はCFR経由で段階的にロールアウトされる。更新を当ててもすぐに表示されない場合がある点に注意したい。
Narratorが全PCでCopilotと連携、画像説明が解禁
アクセシビリティ面での今回の主題は、スクリーンリーダー「ナレーター」のAI画像説明機能だ。
これまで、ナレーターの詳細な画像説明はオンデバイスAIを搭載したCopilot+ PCに限定されていた。つまり、視覚に障害のあるユーザーが高機能な画像説明を使うには、新しいNPU搭載機を買うしかなかった。今回の更新で、この制限が撤廃される。
すべてのWindows 11機で、ナレーターキー+Ctrl+Dでフォーカス中の画像を、ナレーターキー+Ctrl+Sで画面全体を説明させられる。ショートカットを押すとCopilotが画像を読み込んだ状態で開き、追加のプロンプトを入力すれば、より細かい説明を引き出せる。
Microsoftはここで一つ重要な注記を添えている。画像がCopilotに送信されるのは、ユーザーが「説明する」を選択した後のみ、という点だ。自動送信ではない。プライバシー設計としては妥当な落とし所だろう。
Copilot+ PCではオンデバイス処理による即時応答が引き続き利用できる。クラウド経由になる一般PCとは応答速度に差が残るが、機能そのものが使えるかどうかの差は消えた意義が大きい。
Copilot+ PC限定で囲い込むより、アクセシビリティの裾野を広げる方を選んだ。こういう判断は淡々と評価していい。
設定アプリのモダナイズ、一区画ずつ進む
Microsoftは設定アプリを延々と作り替え続けている。今回手が入ったのは「アカウント → 他のユーザー」のダイアログと「バージョン情報」ページだ。
ダイアログはようやくWindows 11のビジュアル言語に揃い、ダークモードにも正しく追従するようになった。これまでは、システム全体をダークモードにしていても、このダイアログだけが白い紙のように光って出てくるという、地味だが不愉快な不整合が残っていた。
「バージョン情報」ページはレイアウトが整理され、デバイスのスペック情報が読みやすくなった。ストレージ設定など関連コンポーネントへの導線も改善されている。設定ホーム画面のデバイス情報カードも同様に更新され、主要スペックが一貫した形で表示される。
加えて、設定ホーム画面の読み込みが高速化され、設定内で更新を求められた際の処理も改善された。失敗や詰まりが減るはずだ、というのがMicrosoftの説明だ。
設定アプリは未だにコントロールパネルを完全には置き換えきれていない。Windowsの構造的な負債そのものだ。その負債を一区画ずつ返済していく作業が、今月も続いている。
ファイルエクスプローラーとディスプレイ、細かい改善の積み重ね
ファイルエクスプローラーには、小さいが効く修正がいくつか入っている。
インターネットからダウンロードしたファイルのブロック解除がより確実になり、プレビューの失敗が減る。Windowsキー+Hで起動する音声入力が、ファイル名変更中にも使えるようになった。この機能が今まで使えなかったこと自体が不思議だったが、ようやく埋まった穴だ。フォルダーの詳細セキュリティ設定ダイアログでは、アクセス許可エントリを「プリンシパル」でソートできるようになった。これは管理者向けの地味な改善だが、権限整理の作業効率は確実に上がる。
ディスプレイ周りでは、モニターが1000Hz超のリフレッシュレートを報告できるようになった。ゲーミングモニターの高リフレッシュレート化競争がそろそろ四桁の壁を越えつつある現状に、OS側が追いついた形だ。
USB4モニター接続時には、PCがスリープ中にUSBコントローラーを最低消費電力状態へ遷移できるようになった。USB4ディスプレイを繋いだノートPCで地味に削られていたバッテリーが、今後は多少マシになる。スリープ復帰後の自動回転の信頼性向上、DisplayID 2.0非準拠のディスプレイでのHDR安定化など、個別には細かいがユーザーの「なんとなく不安定」を一つずつ潰す修正が並ぶ。
Secure Boot証明書、6月から期限切れが始まる
今回の更新と並行して、Microsoftはある警告を改めて強調している。大半のWindows端末で使われているSecure Boot証明書が、2026年6月から順次期限切れを迎える。
証明書が更新されないまま期限を迎えると、個人用・業務用を問わず一部のデバイスで安全な起動に問題が出る可能性がある、というのがMicrosoftの説明だ。家庭用PCの多くはWindows Updateによる自動更新で対応されるため、通常利用のユーザーが自分で何かをする必要はない。
問題になるのは、独自の更新インフラを運用している組織、カスタムSecure Boot構成を使っている環境だ。3月更新で導入された証明書移行の下地を、今回の更新がさらに進めている。6月の期限切れ開始までに、自組織のPCが新しい証明書を受け取っているかを確認しておくべき時期に来ている。
放置しても大半のPCは勝手に移行するが、全部がそうとは限らない。後から「起動しない」で慌てるより、今のうちに点検しておく方が安い。
その他の修正と既知の問題
今回の更新では、他にもいくつか目を引く修正が入っている。
sfc /scannow実行時に問題がなくても表示されていた余計なエラーメッセージが消えた- ARM64デバイス上の回復環境(WinRE)でx64アプリをエミュレーション実行した際の安定性が改善
- Windows Update スタンドアロンインストーラー(WUSA)で、.msuファイルのダブルクリックやネットワーク共有経由の実行時に発生していた
ERROR_BAD_PATHNAMEエラーが解消 - ナレーターのNatural Voicesのセットアップ信頼性が改善
- グループポリシー経由のスタートメニューレイアウト適用の安定化(法人向け)
既知の問題は、現時点で報告されていない。サービシングスタック更新(SSU)も同梱されている。
どれも単体では記事になりにくい。だがこの種の「表に出ない修正」こそ、日常使いの安定性を支えている本体だ。
派手な機能追加を期待していた人には物足りない更新だろう。しかし、SACの長年の縛り解除と、ナレーター画像説明のCopilot+ PC限定解除。この二つは、「できなかったことを、できるようにする」という種類の仕事だ。目玉を作るより、こういう小さな棘を抜いていく方が、最終的にOSの評価を支える。
来月、6月に始まるSecure Boot証明書の期限切れが、次の山場になる。
参照元
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