AIデータセンター、ご近所には来てほしくない47%
新しいAIデータセンターが自宅の近くに建つことを、米国民のおよそ半数が望んでいない。新築アパートよりも、複合施設よりも、嫌われている存在として浮かび上がってきた。
新しいAIデータセンターが自宅の近くに建つことを、米国民のおよそ半数が望んでいない。新築アパートよりも、複合施設よりも、嫌われている存在として浮かび上がってきた。
47%という数字が意味するもの
不動産仲介大手のRedfinが2026年5月4日に公表した調査で、米国住民の47%が自宅近くへのAIデータセンター建設に反対していることが明らかになった。支持はわずか38%にとどまる。調査は2025年11月にイプソス(Ipsos)が 4,000人 を対象に実施したもので、信頼区間はプラスマイナス1.9ポイント。
この数字が示すのは、AIインフラへの拒絶反応が一般的な開発反対の水準を超えているということだ。新築アパート建設に反対する人は37%、複合用途開発(ミックスドユース)に反対する人は31%。AIデータセンターはこれらを上回り、最も歓迎されない建築物として位置づけられた。住宅供給を増やすために一戸建てを集合住宅に転換することへの反対が46%だから、それすら超えている。
私が最初にこの数字を見たとき、ありそうな結果だと感じた。だが立ち止まって考え直すと、これは単なる景観や騒音への懸念ではなさそうだ。米国にはすでに3,000以上のAIデータセンターが稼働しており、さらに数千件が計画段階にある。受け入れ側の住民が、もう自分たちの暮らしと引き換えにするのは割に合わないと判断し始めている、その第一波と読むのが妥当だろう。
世代と政治で割れる賛否
支持率は世代で大きく分かれた。ミレニアル世代の 50%、Z世代の48%が建設を支持する一方で、X世代では38%、ベビーブーマー世代では22%まで落ち込む。年齢が上がるほど反対に傾く構図が、はっきり数字に出ている。
政治的傾向で見ると、共和党支持者の49%が建設を支持し、民主党支持者は36%にとどまった。共和党支持地域は地方部が多く、雇用創出への期待が反対感情を上回りやすい背景があると考えられる。
持ち家か賃貸かでも差が出た。意外なことに、データセンター建設を支持する割合は持ち家保有者(39%)のほうが賃貸住まいの人(36%)より高かった。
「不動産価値が下がるから持ち家層のほうが反対するのでは」という直感は、少なくともこの調査では裏切られている。
住民の苛立ちはどこから来るのか
Redfinの調査で名前が挙がったメリーランド州プリンスジョージズ郡には、すでに5つのデータセンターが稼働している。さらに1つが、かつて人気だったショッピングモールの跡地に計画中だ。同郡で住宅売買を担当するヘイゼル・シャクール氏は、住民の声をこう伝えている。
「郡の役人たちは、長期的なコミュニティのビジョンと生活の質を、地元住民に直接利益をもたらさないプロジェクトと引き換えにしているのではないか。住民はそう疑い始めている」
ここで私が引っかかるのは、「直接利益をもたらさない」という表現だ。データセンターは確かに建設段階では雇用を生むが、稼働後の常駐スタッフは多くて100人程度にとどまる。一方で、電力消費・水資源消費・冷却ファンの騒音・大型産業構造物による景観の変化は、稼働してからずっと続く。建設段階の祭りが終わったあとに残るのは、住民にとっては重荷だけ、という構図が見えている。
実際、AIデータセンター1カ所の電力消費は、米国の一般家庭200万戸分に匹敵するという試算もある(Food & Water Watchの推計)。これだけのエネルギーを地域から吸い上げる施設が、地元の電気代を押し上げない方が不思議だ。
反対が「票」になり始めた
数字が動けば、政治も動く。
ミズーリ州キャムデントンでは、2026年5月5日にAIデータセンター建設を一時停止するモラトリアム条例が市議会で可決された。傍聴席は埋まり、消防法の収容人数制限により25人が会場に入れなかったほどの関心の高さだったという。住民の1人は会場でこう発言している。
「成長は時として良いものだ。子供が成長するのは良いこと。だが、がんの成長は良くない。AIデータセンターはがんだ」("growth is not good in cancer, and an AI data center is cancer")
メイン州議会では、全米初の州レベルでのデータセンター建設停止法案が両院を通過した。ジャネット・ミルズ知事による拒否権行使で成立は阻まれたが、州レベルでこの種の法案が可決にこぎつけた事実そのものが、地殻変動の予兆だと言える。
連邦議会レベルでも、バーモント州選出のバーニー・サンダース上院議員と、ニューヨーク選出のアレクサンドリア・オカシオ=コルテス下院議員が「AIデータセンター建設停止法案」を提出している。この法案は、AIが労働者や消費者に与える害から守る連邦法が成立するまで、新規建設を全面的に停止することを求めている。
非営利団体Good Jobs Firstの集計によれば、2026年3月時点で少なくとも12州で同種のモラトリアム法案が議会に提出されている。サウスダコタ、バーモント、バージニア、ウィスコンシン、ジョージア、メリーランド、ミシガン、ミネソタ。こうしたリストは、もはや一部の例外的な動きではない。
反対の声が施設の計画を止めている
世論の硬化は、すでにビジネスに影響を及ぼしている。Bloombergが2026年4月に報じたところによれば、米国で2026年に計画されていたデータセンター建設のうち、およそ半数が遅延または中止になっている。原因は中国製の電力変圧器不足など供給網の問題に加え、地元議会と住民からの反発が無視できない比重を占めるようになってきた。
ミズーリ州の小さな町では、60億ドル規模のAIデータセンター承認に踏み切った市議会が、住民の怒りで半数追放されるという事態まで起きている。賛成した政治家を選挙で落とす、という最も古くて最も効く意思表示が、AI時代に再発見された格好だ。
私がこの調査で最も注目したいのは、47%という反対率そのものではなく、その内訳が示している「世代を問わず広がっている」という事実のほうだ。ベビーブーマー世代の反対が強いのは予想通りとしても、データセンター支持率がZ世代で48%にとどまっている点は重い。生まれたときからスマートフォンを使い、AIネイティブとして育ったはずの世代の半数が、自宅の隣にAIインフラが来ることを歓迎していない。
技術への抽象的な期待と、自分の生活圏に実体として現れたインフラへの拒絶。この乖離はこれから何年も埋まらないだろう。
ハイパースケーラーは何を見落としたか
OracleやMicrosoftといったハイパースケーラー、そしてOpenAIのようなAI開発企業は、AIブームの初期段階で「とにかく場所を確保し、電力を確保し、計算資源を積み上げる」という戦略を走らせてきた。だが2025年から2026年にかけて、その戦略の前提が崩れ始めている。
場所は住民の同意なしには確保できない。電力は地域の電気代を押し上げる。計算資源は、それを必要とするAI企業が思ったほど儲かっていないという現実に直面している。
データセンター建設で恩恵を受けるのは、結局のところAIを開発している企業群と、半導体を作る企業に限られる。地元住民にとっては、電気代の上昇と環境負荷というデメリットだけが残る。47%という反対率は、その不公平さを住民が肌で感じ始めた結果なのではないか。
メイン州の州法案、12州のモラトリアム提案、市議会の更迭。動き出した動向は、止まる気配を見せていない。
地域住民が「もう要らない」と言い始めたとき、技術の進歩はどこまで押し通せるのか。47%という数字は、その問いを米国社会に突きつけている。
参照元
他参照
- Good Jobs First - Data Center Moratorium Bills Are Spreading in 2026
- Bloomberg - America's AI Build-Out Hinges on Chinese Electrical Parts