Windows 11エクスプローラー、ついに本体改修へ

Windows 11のエクスプローラーが遅い問題で、Microsoftが昨年導入したのはプリロードという対症療法だった。RAMで遅さを覆い隠す手法に批判が殺到するなか、Windowsシェルの製品責任者がその裏側を語った。

Windows 11エクスプローラー、ついに本体改修へ

Windows 11のエクスプローラーが遅い問題で、Microsoftが昨年導入したのはプリロードという対症療法だった。RAMで遅さを覆い隠す手法に批判が殺到するなか、Windowsシェルの製品責任者がその裏側を語った。


RAMで隠す道と、コードを直す道

Microsoft Windowsシェルの製品責任者であるTali Roth氏が、5月1日にX上で投稿した内容に注目が集まっている。きっかけはエクスプローラーの起動高速化機能、いわゆるプリロードに対するユーザーの反発だった。

アプリをクリックする前から本体をメモリへ常駐させておく仕組みは、確かに見かけ上の起動を速くする。Windows Latestの検証では追加で約35MBのRAMを消費するというが、現代のPCにとってこの数字は大きな負担ではない。問題はその効果が起動の瞬間しか速くしない点にある。一度開いてしまえば、フォルダの読み込みやサムネイルの生成、右クリックメニューの表示はあいかわらず遅い。RAMで対症療法を施しながら、本体のコードには触れていないように見えた。

それでも批判が止まないなか、Roth氏自身が進捗の共有として投稿を始めた。

「Windowsをより信頼でき、性能が高く、丁寧なものにする取り組みについて話すと、丁寧に言えば『証明してみせろ』と要約できる類のコメントがある。やるべきことはまだあるが、ここまで届けられたものを共有できることに興奮している」

このRoth氏の発言が、今回の議論の出発点になった。プリロードが「手抜き」だという指摘に対する答えが、その続きで返ってきた。

ANDの意味

「多くのことと同じく、答えはAND(両方)だ」とRoth氏は説明している。プリロードか本体最適化かの二者択一ではなく、両方を並行して進めているという主張だ。RAMでの先回りは表面の話、内部の改修は別ラインで動いている、というのがMicrosoft側の整理になる。

Roth氏が挙げた本体側の作業は3つ。起動シーケンスの最適化、不要な処理やアニメーションといったブロートの除去、そしてディスク読み込みの削減とハングの低減。

なかでも最後の項目は重要だ。フォルダをクリックしたあとの中身の表示が遅いのは、不要なディスクアクセスが積み重なっているからだとされる。プリロードでは絶対に解決できない領域に、ようやく手が入り始めている。本格的な起動シーケンスの最適化もこの並走ラインに含まれる。

ただ、これらの言葉に新鮮味はない。Microsoftは過去にも何度か「foundational fixes(基盤の修正)」を約束してきた。問題は、それが本当に届くかどうかだ。

なぜここまで重くなったのか

エクスプローラーの遅さには明確な構造的理由がある。Windows 10時代のエクスプローラーは、Win32という古い技術で書かれた素朴で軽快なアプリだった。Windows 11ではその上にXAMLとWinUI 3という新しいUIフレームワークを重ね、見た目を現代化した。

XAML Islandsは、従来のWin32アプリケーションのなかにモダンなXAMLコンポーネントを埋め込むための仕組みだ。段階的にUIを刷新できる利点があるが、各部品が独立して初期化されるため、表示までの遅延が積み重なる構造になっている。

WinUI 3はリフテッドコンポジターと呼ばれる新方式で描画を行う。UI要素をいったんアプリ内のオフスクリーンバッファに描いてから、デスクトップウィンドウマネージャ(DWM)に渡す仕組みだ。フレームごとにレンダリングの税金がかかる構造であり、古いWin32の直接描画と比べて遅くなりやすい。右クリックでコンテキストメニューが一瞬遅れるのは、古いシェルコマンドを新しいXAML要素に翻訳する処理が走っているからだ。

つまりWindows 11のエクスプローラーは、新旧2つの世代が縫い合わさったFrankensteinのような構造をしている。プリロードはこの構造をそのままに、起動の瞬間だけRAMで覆い隠す手段にすぎなかった。

第三者ファイルマネージャという反証

エクスプローラーの遅さが構造的な必然ではないことは、サードパーティ製のファイルマネージャが証明している。File Pilotというベータ版のアプリは、起動も瞬時、コンテキストメニューも遅延なしで開く。同じハードウェア上で、ここまで違う挙動が成立する。

巨大企業の旗艦OSに搭載されたファイルマネージャより、個人や小規模チームが作るベータ版のほうが軽快に動く。これは性能の問題というより、優先順位の問題だ。

ファイル管理という機能の本質に立ち返れば、ファイルとフォルダの一覧を表示し、移動とコピーを処理することがすべてだ。そこにモダンなUI、AI連携、クラウド統合、複雑な右クリックメニューを積み上げてきた結果、Windows 11のエクスプローラーは10年前の自分自身より遅くなった。皮肉な構造的負債である。

Microsoft自身、この負債を認識している。Roth氏は4月にも、ホームとギャラリーがスムーズにスクロールするのに対して通常のフォルダビューがカクつく理由を、Win32コードに紐づいた既存機能との互換性を維持するためだと説明していた。type-ahead検索や自動カラム幅調整など、古い機能が新しいフレームワークへ簡単には移植できない事情がある。

約束は届くのか

Roth氏は今後数か月で段階的に最適化を展開すると述べている。すでにInsider版では、ダークモード時のエクスプローラーで起きていた白フラッシュの解消や、ナビゲーション速度の改善が確認されている。Windows 95時代から残っていたプロパティダイアログも、ようやくWinUI 3ベースに置き換わる動きが進む。

問題は、この改修がInsider版を超えて一般のWindows 11ユーザーへ実際に届くかどうかだ。Microsoftがプリロードという形でRAMを使って遅さを隠す選択をしたのは、根本治療に時間がかかるからでもある。一般提供が始まるたびに、別の問題が発生して優先度が押し下げられる可能性は十分ある。

それでも今回のRoth氏の発言は、これまでよりは具体的だ。プリロードはANDの片側だと公言した以上、本体最適化を進めなければ約束を破ったことになる。透明性を上げた結果、自分たちで退路を断った。

エクスプローラーを開くたびに一瞬固まる感覚を、Windows 11ユーザーは何百回と味わってきた。今回の発言が広報の言葉に終わるのか、構造的負債を清算する第一歩になるのか、半年後の挙動が答えを出す。


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