米国民7割がAIデータセンターに反対、原発より嫌う

米国民7割がAIデータセンターに反対、原発より嫌う

自宅の近くに建ててほしくないものリストの上位に、AIのための巨大施設が滑り込んできた。原子力発電所より嫌われる位置に。これは少数の活動家の声ではなく、米国民7割の総意だ。


「裏庭にデータセンターは要らない」が多数派になった

米調査会社Gallupが2026年5月13日に公表した世論調査で、米国民の71%が「自宅の近くにAIデータセンターを建設することに反対」と答えた。うち48%は「強く反対」と回答している。

賛成はわずか4分の1で、「強く賛成」はたった7%だった。

数字の異常さは、比較対象を並べると一段はっきりする。同じ調査で「自宅の近くに原子力発電所を建てること」への反対は53%だった。AIデータセンターは原発より 18ポイント も嫌われている計算になる。

Gallupが原発の同じ質問を始めた2001年以降、原発反対の最高値は 63% 。AIデータセンターはその記録すら超えてしまった。

調査は2026年3月2日から18日にかけて、全米50州とコロンビア特別区に住む18歳以上の成人1000人を対象に電話で実施された。標本誤差はプラスマイナス4ポイント。Gallupがこの設問を聞いたのは今回が初めてで、過去との比較はできない。だが初回でこの数字が出たこと自体、住民感情の沸点がすでに高いことを物語る。

自宅近くの建設に「反対」と答えた割合
※ Gallup調査(2026年3月2〜18日実施、米国成人1000人、標本誤差±4ポイント)。原発の数値は同調査での「自宅近くの原子力発電所建設」への反対率。最高値63%は2001年以降のGallup調査の累計記録。

なぜここまで嫌われるのか

Gallupが反対派に「何が気になるのか」を自由記述で尋ねた結果、回答は環境への懸念に集中した。

最多は資源の過剰利用で、反対派の半数が言及している。水の使用に18%、電力の使用に18%が触れた。騒音や水質汚染を含む公害への懸念が16%、地域の生活への影響(交通量増加、人口流入、土地利用)が約2割、電気料金や生活コストの上昇など経済的な悪影響への懸念も約2割を占めた。

環境の質を心配している米国民のうち78%がデータセンター建設に反対する。心配していない人でも反対は52%に達する。

環境を気にかける層と気にしない層で、26ポイントもの差が開いた。エネルギー価格を心配する層(73%反対)としない層(65%反対)の差(8ポイント)よりはるかに大きい。住民の懸念は電気代の高騰だけでなく、もっと広い「環境への加害」として組み立てられている。

賛成派が挙げる理由は対照的にシンプルだった。賛成派の3分の2が経済的恩恵を理由に挙げ、うち55%が「雇用機会の増加」、13%が「税収増」と答えた。

賛成派の55%が「雇用増」を支持の根拠に挙げる一方、反対派の半数は「水と電気の浪費」を反対の根拠に挙げる。論点そのものが噛み合っていない。

雇用と税収。地域に売り込まれてきた定番の口説き文句が、住民の半数以上には届かなくなっている。

党派を超えた拒絶

この反対は、特定の政治的立場の話ではない。

民主党、共和党、無党派、いずれの支持層でも過半数が反対と答えた。ただし「強く反対」の比率を比べると差が出る。民主党 56% 、無党派48%、共和党39%。

「強く反対」を表明する比率は、女性が55%、男性が43%と女性のほうが12ポイント高い。

年齢、人種、学歴、所得、都市と郊外の区別による有意な差はほぼ見られない。地域別では中西部76%、南部75%が反対し、東部68%、西部63%がやや低めだ。中西部と南部はAI施設の建設候補地としてよく名前が挙がる地域でもある。

つまり、データセンターへの反発は左右どちらかの政治運動ではなく、生活者全般の地殻変動として広がっている。Gallup自身がレポートの含意として書いているのは、「今年の州・地方選挙でAIインフラが重要な争点になる可能性があり、データセンター誘致を支持する政治家は政治的リスクを背負っている」という見立てだ。

AIデータセンター建設への意見分布
強く反対 48%
やや反対 23%
やや賛成 20%
強く賛成 7%
※ Gallup調査(2026年3月)。残り2%は「分からない・無回答」。賛成派の合計27%に対し、反対派(強く+やや)は71%に達する。

業界が直面する「住民」という壁

AIブームの裏側で、建設の現場はすでにきしんでいる。

U.S. Data Center Moratorium Trackerの集計では、米国内で 69の自治体 がデータセンター建設のモラトリアムや禁止条例を導入した。うち4件は恒久的な禁止だ。

ミシガン州セイライン・タウンシップ(Saline Township)では、2025年に住民議会が4対1でOpenAIとOracleの160億ドル規模Stargate施設のゾーニング変更を否決したものの、開発側が訴訟を起こして数週間で和解、計画は強行された。これを受けて州内19の自治体が新規建設の凍結に動いた。

インディアナ州ではデータセンター誘致を進めた政治家の自宅が銃撃を受け、「NO DATA CENTERS」と書かれた紙が玄関に残された事件まで起きている。

Gallupの数字は、こうした地域の動きが孤立した過激事例ではなく、全米規模の世論を背景に持っていることを示した。反対する住民は3人に2人ではなく、4人に3人 になっている。

「裏庭の外」に建てる戦略は通用するか

開発企業はこの逆風をかわすため、農村部への建設シフトを進めている。市議会の承認や土地利用の見直し手続きが少なく、住民数も少ないからだ。

だが、影響そのものは規模で殴ってくる。OpenAIがミシガンで進めるStargate施設の電力消費は1.4ギガワット。住宅100万戸分の電気に相当する。ユタ州ボックスエルダー郡で承認された9ギガワット級の施設にいたっては、ユタ州全体の現在の平均電力消費(約4ギガワット)の2倍を超える。

裏庭から逃げても、グリッドはつながっている。

Gallupの調査が示したのは、米国民が「AIを使うこと」と「AIインフラが近くに来ること」を切り離して考え始めたという事実だ。スマホで生成AIを使う指は、自宅近くのデータセンター建設に反対の意思表示をする指と、同じ手の上にある。

「裏庭ではなく」と言える土地が、米国にどれだけ残っているのだろう。


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