Excelの消せないCopilotボタン、利用者が反発

シートの右下に居座るCopilotボタンを、Excel利用者が完全には消せない。リボンから本来の場所を奪われ、20年続いた操作の習慣まで揺らいでいる。

Excelの消せないCopilotボタン、利用者が反発

シートの右下に居座るCopilotボタンを、Excel利用者が完全には消せない。リボンから本来の場所を奪われ、20年続いた操作の習慣まで揺らいでいる。


シートの右下に、消せないボタンが現れた

Excelを開くと、シートの右下にCopilotのアイコンが浮かんでいる。今、多くの利用者がこのボタンに困っている。クリックして閉じる選択肢はなく、右クリックで出てくるのは「Dock(ドック)」だけ。これを選ぶと画面の端にボタンが寄るが、触ればまた元の場所に戻ってくる。

完全に消す方法は、用意されていない。

Microsoftの公式フィードバックポータルには、このボタンをめぐる投稿が次々と立っている。共通しているのは怒りではなく、もっと素朴な訴えだ。「作業の邪魔になる」という一点に、声が集まっている。

ボタンにカーソルを合わせると、「Copilotで調べる」「表を作る」「Excelについて教えてもらう」といった候補が開く。アイコンそのものをクリックしても、候補をクリックしても、行き着く先は同じCopilotのサイドパネルだ。Copilotを使いたい人には、入口が分かりやすくなった。使わない人にとっては、避けようのない出っ張りがシートに増えただけだ。

「リボンから消えた」ことの意味

今回いちばん見落とされやすいのは、ボタンが「増えた」のではなく「移った」という点だ。

これまでCopilotの入口は、画面上部のリボン(ツールバー)にあった。Microsoftは長い時間をかけて、利用者に「機能はリボンで探すもの」と教え込んできた。その入口を外して、シートの上に直接アイコンを置いた。あるフィードバック投稿は、リボンに戻すか、隠す設定を付けてほしいと求めている。元の場所を覚えている人にとって、今の配置は理にかなっていない。

Microsoft自身は、この変更を「Copilotを見つけやすくするため」と説明している。社内の調査で、利用者がCopilotの使い始め方に迷っている、という診断があったという。入口を2か所に絞り、シート右下のアイコンと、文字を選んだときに出る入口に集約した。

Microsoftは公式ブログで、入口を「画面右下のCopilotアイコン」と「内容を操作したときに現れる入口」の2つに減らすと説明している。発見しやすさを高めるための整理だという位置づけだ。

整理の論理としては筋が通っている。ただ、その整理は「Copilotを使いたい」という前提に立っている。使わない選択肢を持つ人のことは、設計から抜け落ちている。

ユーザーが訴えているのは「邪魔」と「消せない」

フィードバックポータルに並ぶ声を読むと、論点は大きく2つに絞れる。

ひとつは、視覚的な邪魔だという指摘。あるコメントは、アイコンが視覚的に目障りで、Copilotを使いたくない人の作業を妨げると書いている。スクリーンショットを撮るときにデータの上に重なる、という不満も出ている。表計算ソフトで数字の上に何かが乗るのは、地味だが確かに困る。

もうひとつは、本当の意味でオフにできないという問題。あるユーザーは、アンインストールしても次のアップデートで戻ってくると訴えた。別のコメントは、職場で使う365アカウントでは管理者でないと設定を変えられず、リボンに戻す手段すらないと書いている。「ひどいアップグレードだ。オフにする方法をくれ」という短い投稿も並ぶ。

技術に詳しい利用者の間では、VBAという仕組みを使った回避策が共有されている。だが、起動のたびにアイコンを隠すコードを走らせる方法は、一般の人に勧められるものではない。

Excelには起動時に処理を自動実行する仕組みがあり、これを使えばアイコンを毎回隠せる。ただし設定には専用のコードが必要で、表計算ソフトを使うだけの人に求める手間としては重い。

公式の回答として案内されているのは、Copilotそのものを無効化する方法だ。つまり「ボタンが嫌なら、Copilot機能ごと切れ」という選択になる。ボタンだけ消したい人の要望と、用意された解決策が、噛み合っていない。

利用者の要望と、現状用意された手段のズレ
利用者が求めること 実現度 用意された手段 残る制約
ボタンを画面から
一時的にどける
部分的 右クリックの
「Dock」
触れば戻る。
毎回やり直し
ボタンだけを
恒久的に消す
不可 なし 設定項目が
用意されていない
入口をリボンの
元の位置に戻す
不可 なし 配置を選ぶ
設定がない
Copilot機能ごと
オフにする
可能 Enable Copilot
のチェックを外す
古い版では
項目が出ない場合あり
起動時に
自動でボタンを隠す
部分的 VBAによる
回避コード
専用コードが必要。
一般向けではない
※ Copilot機能の無効化はWord・Excel・PowerPointのアプリごと、デバイスごとの設定。VBAはExcelに処理を自動実行させる仕組みを指す。

Microsoftが繰り返しているパターン

このボタンの一件を、単独の出来事として見ると本質を外す。

数週間前には、Teamsアプリに常時表示の「Unlock Premium(プレミアムを解除)」ボタンを埋め込んだことで、同じように反発を受けたばかりだ。画面の中に、利用者が望まない要素を置き、簡単には外せないようにする。今回のExcelの件は、その流れの中にある。

Microsoftの計算は、おそらくこうだ。Copilotを画面の手前に置き続ければ、いつか使ってもらえる。だが、これまでのCopilotの売り方を見れば、より多い反応は「これを作業画面からどけてくれ」という拒否のはずだ。押し付けによる習慣化は成り立たない。habituation(習慣化)は、相手の信頼の上にしか積み上がらない。

公式ブログによれば、新しいCopilotボタンとショートカットは6月初旬までに正式提供へ移る見込みだ。つまり、この配置はテストではなく、これから標準になる。今困っている人は、慣れるか、Copilotを切るか、回避策を組むかを選ぶことになる。

良い面も、ないわけではない。入口の整理とキーボードショートカットの統一は、キーボードや読み上げソフトで操作する利用者にとっては、配置が予測しやすくなるという利点がある。発見しやすさを上げたいという狙い自体は、否定するものではない。問題は、その狙いを「常駐」と「消せない」で実装したことにある。

残るのは、ひとつの問い

Microsoftがこのフィードバックにどう応えるかは、まだ分からない。投稿は積み上がっているが、Microsoft側の正式な回答はまだ出ていない。

かつてのClippy(オフィスアシスタントのキャラクター)にすら、「もう出てこないで」と伝える選択肢はあった。今のCopilotボタンには、それがない。便利な道具を手前に置くことと、道具を断る権利を残すことは、両立できるはずだ。Microsoftがその線をどこに引くのか、6月の正式提供までに見えてくる。


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