GNOME Shellの未来像、デザインチームが一挙公開

GNOME Shellに、検索オーバーレイ、タイリング、透過パネル。デザインチームが長期構想をまとめて公開した。一部はGNOME 51での搭載が見えている。

GNOME Shellの未来像、デザインチームが一挙公開
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GNOME Shellに、検索オーバーレイ、タイリング、透過パネル。デザインチームが長期構想をまとめて公開した。一部はGNOME 51での搭載が見えている。


9つの「夢」が並んだ

GNOMEのインタラクションデザイナー、トビアス・ベルナール(Tobias Bernard)氏が、GNOME Shellの長期的なデザイン構想を公開した。タイトルは「GNOME Shell Design Dreams」(GNOME Shellデザインの夢)。

最近のGNOME Shellは、細かな改善やQoLアップデートが中心だった。だが水面下では、デザインチームがもっと大きな絵を描いていた。今回それが一挙に表に出た形になる。

挙げられた構想は検索のオーバーレイ化、Quick Settings(クイック設定)の編集機能、カレンダーポップオーバーの簡素化、ドラッグ&ドロップによるウィンドウ整理、Mosaicタイリング、ウィンドウ切替の改善、ログイン画面のグリッド化、動的バッテリーアイコン、透過パネルの9項目。完成度はまちまちで、すぐ実装に入れるものから、まだリサーチとプロトタイプが必要なものまで含まれる。

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構想の実現は開発者のキャパシティと関心、そして時に資金に依存する。デザインチームとして、長期的なビジョンを共有し、各アイデアの認知度を上げるために、ここにまとめた。

ベルナール氏自身がこう前置きしている。「夢」というタイトルは、率直な現状認識そのものだ。


検索オーバーレイ。GNOME 51搭載が濃厚

9つの中で最も実装に近いのが、検索UIの刷新だ。

現在のGNOME Shell検索は、オーバービューでタイピングを始めると画面全体が検索結果に置き換わる。アニメーションもなく、GNOME 40で磨き上げた「空間モデル」(UIの要素が常にどこかから来てどこかへ去る、予測可能な動き)がここだけ途切れていた。

新しい設計では、検索結果が検索バーの下にオーバーレイとして展開される。オーバービューの他の要素は背後に残り、空間的な連続性が保たれる。すでにGitLab上でマージリクエストが動いており、この秋のGNOME 51での搭載が見込まれている。

レイアウト変更に加えて、検索結果の「質」も引き上げたいとベルナール氏は書いている。ファイルプレビュー、検索結果ごとの複数アクション、フィルタ機能。macOSのSpotlightやAlfred、Raycastといったサードパーティアプリが実現していることを、GNOME Shellのネイティブ検索でもやりたい、という方向だ。

新しいAPIの策定やアプリ側の対応が必要になる部分もあるが、既存UIのリデザインだけでもできることは多い。

段階的に進められる構想でもある。まずオーバーレイ化、次にリッチ化。堅実な順序に見える。


Mosaicとタイリング。「拡張機能の限界」を超えられるか

ウィンドウ管理の改善は、構想の中でも野心的な部類に入る。

GNOMEはタイリングを長らく望みながら、技術的な理由で実現できずにいた。デザインチームが提案する「Mosaic」は、ウィンドウを開くたびに他のウィンドウが自動的にリサイズされ、画面内で最適な配置を交渉するコンセプトだ。手動で位置やサイズを調整する操作を、限りなく減らすことを目指している。

このコンセプトの大部分を拡張機能として実装しているのが、ブラジルの開発者クレオ・メネゼス(Cleo Menezes Jr.)氏のMosaicWMだ。デザインチームはメネゼス氏と連携しており、拡張機能上でデザインの評価と改良を続けたいとしている。

ただ、根本的な問題がある。Mosaicのような高度なタイリングは、コンポジタ(Mutter)側のサポートなしには拡張機能だけでは「きれいに」実装できない。タイリングのサポート強化やウィンドウサイズのメタデータ拡充といった基盤作業が先に必要で、これはデザインとは独立して進められる領域だ。

ウィンドウ管理の文脈では、ドラッグ&ドロップによるウィンドウ整理の再挑戦も挙げられている。GNOME 40の開発時にテストされ、手応えがあった手法だ。ワークスペースの小さなサムネイルを狙う代わりに、ドラッグを始めると実際のワークスペースが縮小し、より大きなドロップターゲットが現れる。

ウィンドウ切替(Super+Tab / Alt+Tab)にも改善案がある。現在はアプリ単位のグループ化で一覧性を保っているが、直近で使ったウィンドウには個別にアクセスしたいという需要との間にジレンマがある。直近の数枚は個別表示、それ以前はグループ化、という混合方式が提案されている。


パネル・UIの細部にも手が入る

大きな構造変更だけではない。日常的に目に触れる部分にも改善が並ぶ。

Quick Settingsのカスタマイズ対応は、AndroidやiOSでは当たり前の機能だ。ダークモード、ナイトライト、パワーモードとトグルが増え続ける中、使わない項目を外し、欲しい項目を追加できるインラインエディタをメニュー内に組み込む構想だ。「Caffeine」拡張機能のようなスリープ防止トグルを、公式の仕組みで取り込める道が開ける。

カレンダーポップオーバーの簡素化も提案されている。現状、画面上部中央のポップオーバーには通知、カレンダー、世界時計がごちゃ混ぜに入っている。通知をQuick Settings側に統合し、カレンダーポップオーバーにはカレンダー・予定・世界時計・天気だけを残す。よく使うシステムステータス項目が1箇所に集約される。

ログイン画面については、現行のリスト表示からユーザーアイコンのグリッド表示への刷新が提案されている。ベルナール氏は「ほぼ毎サイクル実現しかけては見送られてきた」と認めており、半ば定番のネタになっている様子だ。

動的バッテリーアイコンは、AndroidやiOSのように横長の表示にして残量を読み取りやすくする提案。GNOME Shell Mobile(モバイル版)ではパネルスペースが限られるため、特に効果が大きい。

透過パネルも長く待たれてきた機能だ。壁紙が単色で低コントラストのとき、パネル背景を消して壁紙を透かす。数年前にほぼ完成した実装があり、テストとレビューを待っている状態だという。

ログイン画面のグリッド化、動的バッテリーアイコン、透過パネル。いずれも「あと一歩」の状態が続いている。足りないのは技術ではなく、手を動かす人の時間だ。
GNOME Shell 9構想の現在地
構想状態
検索・設定パネル
検索オーバーレイMR進行中。51搭載見込み
Quick Settings編集構想段階。モックアップあり
カレンダー簡素化構想段階。通知を統合予定
ウィンドウ管理
D&Dウィンドウ整理拡張で検証中。40時代にテスト済み
Mosaicタイリング拡張で先行。Mutter対応待ち
ウィンドウ切替改善構想段階。混合方式を提案
外観・起動画面
ログイン画面グリッド毎サイクル見送り
バッテリーアイコンモックアップあり
透過パネル実装ほぼ完成。レビュー待ち
※GNOME Shell & Mutter公式ブログ(2026年8月11日)に基づく

誰がこれを実装するのか

Phoronixフォーラムでは、この発表に対して率直な反応が出ている。

「GNOMEはコントリビューターを遠ざけ、AI生成コードも排除してきた。誰がこれをコードにするのか」という疑問が複数上がっていた。GNOMEが2025年末からAI生成の拡張機能を拒否し、2026年に入ってGNOME Circle全体でも同様の方針を明確化したことを踏まえた指摘だ。

「まともなタスクバーとスタートメニューを。拡張機能で補わなければ使い物にならないDEには疲れた」という声や、「これはモバイルUIなのかデスクトップUIなのか判然としない」という懐疑的な意見もあった。

一方で、MosaicWM拡張をすでに使っているユーザーからは好意的な反応があり、「デスクトップ統合されたタイリングは大きな前進になりうる」との期待も見える。

ベルナール氏は記事の末尾で、GNOME Shellへの貢献が以前より容易になったことを強調している。Mutter Devkitを使えばBuilder上でネストセッションのビルドとテストが簡単にでき、GNOME OSならsysextで実験ブランチを日常的に使い続けることも可能だという。

デザインの「夢」を見せるのはデザインチームの仕事だ。それをコードに落とすのは、コミュニティの仕事になる。9つの構想が並んだこの記事は、ビジョンの公開であり、助けを求める声でもある。

GNOME 51の正式リリースは現地時間9月16日。検索オーバーレイが本当に間に合うかどうかが、最初の答え合わせになる。

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