Fedora 44正式リリース、GNOME 50でX11廃止

最先端Linuxの試金石、Fedora 44が本日4月28日に正式リリースされた。GNOME 50とKDE Plasma 6.6を擁し、Workstation版ではX11セッションが完全に姿を消す。当初4月14日から2度延期された末の登場だ。

Fedora 44正式リリース、GNOME 50でX11廃止

最先端Linuxの試金石、Fedora 44が本日4月28日に正式リリースされた。GNOME 50KDE Plasma 6.6を擁し、Workstation版ではX11セッションが完全に姿を消す。当初4月14日から2度延期された末の登場だ。


6カ月サイクルのバージョンが、なぜ「歴史的」なのか

Fedoraは半年ごとに新しいバージョンを出す。43、44、45と数字が増えるだけなら、いつもの定期更新の話に聞こえる。だが今回のFedora 44は、十数年続いたX11時代の幕引きという点で、過去とは違う重みを帯びている。

GNOMEデスクトップを採用するWorkstation版では、X11セッションへのフォールバックが完全に削除された。デスクトップは起動時に直接Waylandへ向かう。レガシーセッションも、代替セッションセレクタも存在しない。X11の30年が、ここで終わる。

KDE Plasma 6.6を載せるKDE Plasma Desktopエディションも、SDDMから新しいPlasma Login Managerへとログイン管理を切り替えた。GNOME側のX11完全削除こそが今回の固有のニュースだが、KDE側もWayland化のさらなる進展という意味で歩調を合わせている。

Fedoraは長年、上流Linuxの試験場として機能してきた。今日のFedoraでの決定が翌年のRHELの標準になり、その翌年にはエンタープライズインフラの現実になる――この立ち位置を踏まえれば、Fedora 44のWayland一本化は、Fedora自身の利用者層を超えて影響が広がる動きと言える。

中身は何が変わったのか

リリースの目玉を整理しておく。

WorkstationはGNOME 50を初期搭載する。前バージョン43のGNOME 48から世代が一気に進み、可変リフレッシュレート(VRR)と分数スケーリングが安定機能として「設定」アプリから直接扱える。HiDPIや色管理にも手が入っている。

KDE Plasma DesktopはPlasma 6.6に統一された。すべてのKDE系派生版でPlasma Setupアプリが導入され、インストール後の初期設定はAnacondaから手放されてPlasma Setup側に集約されている。冗長な設定ステップが消え、起動からデスクトップに着くまでの導線が一本化された格好だ。

カーネルLinux 6.19シリーズを採用する。性能改善とハードウェア対応の拡大は半年に一度の通例だが、今回はゲーミング層に響く変更が一つ含まれている。NTSYNCカーネルモジュールWineおよびゲーミング系パッケージで標準的に有効化されるようになった。

NTSYNCというのは、Windows NT互換の同期プリミティブをカーネル側で提供する仕組みだ。これまでWineはユーザー空間でこの同期を模倣していたため、RPC呼び出しのオーバーヘッドが避けられなかった。これがカーネル側に降りることで、WindowsゲームをProton経由で動かす際のフレーム時間が短縮される可能性が出てくる。Steam DeckLinuxゲーミングを牽引する時代の追い風となる更新だ。

ARMノートPC界隈にとっては、AArch64のLive ISOがWindows on ARMノートで起動時に正しいDTBを自動選択する変更が入った点が大きい。Snapdragon X系のSurfaceなどでLinuxを試す敷居が、ここで下がる。


開発者ツールチェーンの大規模刷新

Fedoraがバージョンを重ねるたびに発する「上流の最新を載せる」という宣言は、Fedora 44でも健在だ。

GCC 16.1、LLVM 22、glibc 2.43、binutils 2.46、gdb 16.3。Go 1.26、Ruby 4.0、PHP 8.5、CMake 4.0、RPM 6.0。Ansible 13、MariaDB 11.8、Django 6.x。並べ始めるときりがない。

注目すべきはRubyだ。3.4から4.0へのメジャー更新が、43から44のたった半年で起きている。コンパイラスタックもGCC 16・LLVM 22と、上流の最新タグがそのまま乗っている。CやC++、Rustをネイティブにビルドする開発者は、Fedora 44に乗り換えるだけで最新の言語機能と最適化に手が届く。

PackageKitのバックエンドはDNF5に切り替わり、グラフィカルなパッケージ管理の応答性が改善されている。地味だが、日常的にGNOME Softwareを使うユーザーが体感できる類の変更だ。

開発者用ツールとしてはNixパッケージマネージャがリポジトリに加わった。関数型パッケージ管理を試したい開発者にとって、Fedora 44は始める場所として悪くない選択になる。

そしてもう一つ、目立たないが重要な動きがある。Fedora 44は再現可能ビルドの達成率が99%近くに到達した。同じソースから誰がビルドしても同じバイナリが出る――この性質は、サプライチェーン攻撃が現実の脅威となった現代において、ディストリビューションが信頼できるかどうかの根拠そのものだ。


当初4月14日が、なぜ4月28日になったのか

Fedora 44のリリースは、2度の延期を経ている。当初の目標は4月14日、Ubuntu 26.04 LTSのリリース直前だった。それが4月21日に遅れ、最終的に本日4月28日まで2週間ずれ込んだ。

原因はブロッカーバグだ。最終Go/No-Go会議で発見された問題のうち、特にAnacondaインストーラの不具合とPlasma Setup側のキーボードレイアウト処理が指摘された。加えてPackageKitにローカル権限昇格の競合状態が見つかり、これが修正されるまで出荷を止める判断がなされた。

最終的に「RC-1.7」と呼ばれるビルドが正式版として承認された。RC-1.7にはFirefox 150が同梱されており、200件超のセキュリティ修正が含まれている。PackageKitの権限昇格バグへのパッチも組み込まれた。

リリース判定では、わずかな問題は「Fedora 45への送り」として処理された。Anacondaのウェブインストーラが/boot/boot/efiの最小パーティションサイズを警告しない件、ASCII入力ができないキーボードレイアウト時のフォールバック処理。どちらも完全な修正にはもう一サイクル必要と判断された格好だ。

「品質をスケジュールより優先する」というFedoraプロジェクトの方針が、今回もそのまま適用された。コミュニティの反応は概ね支持的で、急いで壊れたものより遅れて安定したものを望む声が大勢を占めている。


Ubuntu 26.04 LTSとの並走、上流テストベッドという立ち位置

Fedora 44は、4月23日リリースのUbuntu 26.04 LTSの5日後にやってくる形になった。Ubuntu 26.04 LTSはLinux 7.0カーネルとMesa 26.0、そして同じくGNOME 50を採用している。両者の比較が今後の春から夏にかけてのLinux界隈の話題になりそうだ。

ただし両者の役割は違う。LTSは安定性と長期サポートを売りに、企業や本番環境を想定する。Fedoraは6カ月ごとに最新の上流コードを束ね、次のRHELの土台になる技術を世に問う場所だ。GNOME 50がエンタープライズに行き渡るのは、Fedora 44で揉まれた後になる。

NVIDIA独自ドライバを使う環境や、X11セッションに依存する古いワークフローを抱えるユーザーは、アップグレード前の動作確認を強く推奨する。Wayland一本化の決定は、ほとんどのモダンハードウェアにとっては問題にならないが、特定の構成では引っかかる可能性が残る。


ダウンロードと、これから

Fedora 44はWorkstation、KDE Plasma Desktop、Server、IoT、CloudのEditionに加え、Budgie 10.10やXFCE、LXQtといった各種Spinとして提供される。Games LabはXfceからKDE Plasmaへ切り替わり、Waylandの低入力遅延を活かしたゲーミング環境として再構築された。

各イメージは公式ダウンロードページから取得できる。

Fedora Linux
An innovative platform for hardware, clouds, and containers, built with love by you.

GNOME 50、Plasma 6.6、Linux 6.19、GCC 16、LLVM 22。半年に一度のリリースサイクルで、これだけの更新を同時に束ねて出すのがFedoraの仕事だ。X11が表舞台から退いた今日、エンタープライズLinuxの未来形がここから少しずつ姿を現していく。


参照元

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