『ボーダーランズ4』Switch 2版「主要ではない」

『ボーダーランズ4』のSwitch 2版開発が止まった本当の理由を、テイクツー社の最高責任者が初めて自分の言葉で語った。「技術的には作れる」と認めながら、優先順位は明確に下位だった。

『ボーダーランズ4』Switch 2版「主要ではない」

『ボーダーランズ4』のSwitch 2版開発が止まった本当の理由を、テイクツー社の最高責任者が初めて自分の言葉で語った。「技術的には作れる」と認めながら、優先順位は明確に下位だった。


CEOが語った「やっていることと、やっていないこと」

テイクツー・インタラクティブのCEO、ストラウス・ゼルニック(Strauss Zelnick)が、ゲームジャーナリストのStephen Totilo氏が運営するメディアGame Fileのインタビューに応じた。話題は、開発が一時停止状態にあるNintendo Switch 2版『ボーダーランズ4』の現状。

ゼルニックの発言は、二段構えだった。まず「Switch 2で動かすことは技術的に可能(doable)」と述べたうえで、優先順位は別だと踏み込んだ。

「我々は消費者がいる場所であればどこでも届けたいし、Switch 2もサポートしてきた。我々がやっていること、やっていないことを見てもらえば、主要なコンソール・プラットフォームがSonyとMicrosoftであることは分かるはずだ」

この発言は重い。Switch 2版開発停止の理由は、これまで「苦渋の決断」「最適化作業の継続」といった企業広報の言葉で濁されてきた。それをCEO自身が「優先順位の問題」だと言い切った。

開発停止に至るまでの経緯

時系列を整理すると、Switch 2版『ボーダーランズ4』の運命は半年足らずで急速に冷え込んでいる。

2025年4月、Nintendo Switch 2を紹介する「Nintendo Direct」で、GearboxのCEOランディ・ピッチフォード(Randy Pitchford)が登壇し、本作のSwitch 2同時展開を宣言した。発売予定は2025年10月3日、他機種版から約1か月遅れの形だった。

ところが発売の約1週間前、2025年9月23日に突然の延期発表があった。「ファンに最高の体験を届けるため、さらなる開発と磨き上げの時間が必要」という公式声明とともに、ニンテンドーeショップの予約はすべてキャンセルされた。

そして2026年2月、テイクツーは決算報告のリリーススケジュール一覧からSwitch 2版の名前を削除。広報担当のアラン・ルイス(Alan Lewis)はメディアVarietyに対し「そのSKUの開発を一時停止するという苦渋の決断を下した」とコメントした。

開発が止まっている真の理由は、Switch 2のハードウェア性能ではない。発売済みのPC・PS5・Xbox版が、いまだに「最適化作業」を続けなければならないほど不安定だからだ。

その後、4月にはイタリアやロシアの中古市場で製造済みの物理パッケージ(ゲームキーカード版)が出回るという不可解な現象まで起きた。データのダウンロードは不可能で、機能しない箱だけが流通している状態だ。

「PCを直してから」の本当の意味

ゼルニックがGame Fileに語ったもう一つの重要な発言が、開発再開の条件だった。

「これまでもその課題に取り組んできた。『ボーダーランズ4』を消費者の視点から見て十分に対応できたと言える状態にしてから、より多くのプラットフォームに展開したい」

ここで言う「課題」とは、PC版が抱えるパフォーマンス問題のことだ。2025年9月の発売直後から、Steam版を中心に深刻なフレームレート低下とクラッシュが報告されていた。テイクツーは2025年11月の決算説明で、本作の売上を「期待よりやや軟調(softer than we would have liked)」と認めている。

Gearboxは2026年3月のメジャーアップデート「v1.5」で、ローンチ版と比較して平均フレームレートを 約20% 向上させたと公式に発表した。RTX 4080環境では1440p Very High設定で約42.7%、最低スペック構成でも1080p Lowで約41.5%の改善が確認されている。クラッシュ率も0.63%から0.38%へ、ほぼ半減した。

それでも、Gearboxは公式声明で「まだやるべきことが残っている」と認めている。発売から半年以上が経過しても、現状の作業はGearbox自身が「完成」と呼べる水準にまだ届いていない。Switch 2版が動き出すのは、その後の話となる。


サードパーティの「優先順位の表明」が持つ意味

ゼルニックの発言で最も注目すべきは、「主要プラットフォームはSonyとMicrosoft」という明示だ。これまで多くのサードパーティ・パブリッシャーは、Switch 2への対応を巡って曖昧な姿勢を取ってきた。「サポートしている」と言いつつ、AAA級の最新作は出さない、という二重基準が業界の暗黙の了解だった。

ゼルニックはその暗黙を、当事者として明文化した。Switch 2には『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VII』、『NBA 2K26』、『PGA Tour 2K25』、『WWE 2K26』を出している。だが『ボーダーランズ4』のような技術的に重い作品については、Sony・Microsoftプラットフォームの完成度を確保するまで動かない。

この姿勢を肯定的に解釈すれば、「消費者を欠陥商品で落胆させない」という品質保証の意思表示だ。Switch 2のハードウェアでは満足な体験が提供できないと判断した上でのリリース見送りなら、それは誠実な選択でもある。

一方で、これは『GTA6』をはじめとするロックスター系タイトルがSwitch 2に来る可能性についても、間接的な答えになっている。ゼルニックの優先順位の整理に従えば、より重い負荷を要求するタイトルほど、Nintendo陣営から遠ざかる。

任天堂にとって、Switch 2のローンチ時に「最新世代のAAAも動く」というメッセージを支えていた一作が、こうして陰に追いやられたインパクトは小さくない。Gamescom 2025の試遊段階ではフレームレート問題こそあれ、開発不可能なレベルではないと見られていた。それから半年で「優先順位が低い」と公式に認定される位置に転落したわけだ。

別の視点:Gearboxの能力か、市場戦略か

ここで一度、別の角度を考えてみたい。

Switch 2では『サイバーパンク2077』が動作している。『ストリートファイター6』も同日発売されており、『ファイナルファンタジーVII リバース』は2026年6月の発売が決まっている。Apex Legendsも稼働している。つまりハードウェアの限界そのものの問題ではない。

だとすると、Gearboxの最適化能力に固有の問題があるのか、それともテイクツーの経営判断として「投資対効果が見合わない」のか。Switch 2向けポートには相応の追加開発リソースが必要であり、その費用に対して回収できる売上が見込めないとなれば、PS5やXboxへの注力を選ぶのが合理的判断ではある。

ゼルニックの発言の重みは、この判断の透明化にある。曖昧にせず、優先順位を口に出した。プレイヤーにとっては寂しい現実だが、企業判断としては筋が通っている。


Switch 2版が再び動き出す日は、PC版の最適化が「消費者の視点で十分」とゼルニックが認めた時。その日がいつ来るのか、CEOは何も言わなかった。プレイヤーから見れば、「待つ」以外の選択肢がない状態は、開発中止と機能的にあまり変わらない。


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