Intel Starfire、Linux 7.3で最初のパッチが着地

Intelが7月に発表した宇宙向けSoCに、Linuxカーネルで最初のコードが入った。変更はわずか5行。

Intel Starfire、Linux 7.3で最初のパッチが着地
Intel

Intelが7月に発表した宇宙向けSoCに、Linuxカーネルで最初のコードが入った。変更はわずか5行。


ノートPCから宇宙へ、同じコードで

Intelが現地時間7月9日に公開したStarfireは、同社のPanther Lakeアーキテクチャを宇宙空間向けに再設計したSoCだ。CPUコアとNPUにIntel 18Aプロセス、GPUにIntel 3プロセスを使い、Foverosで1つのパッケージにまとめている。

Low Power(10W、最大 45TOPSに対応 )とPerformance(35W、最大 75TOPSに対応 )の2構成で、いずれもP-core 4基とLPE-core 4基、64実行ユニットのXe GPU、3タイルのNPUを搭載する。

動作温度はマイナス55℃から125℃。設計寿命は10年以上で、米国内で製造し米国政府向けに供給する。

放射線耐性のテスト(総電離線量、シングルイベントラッチアップ、シングルイベント効果)はまだ進行中で、仕様も変更の可能性がある。量産前の評価用サンプルの出荷は2026年第3四半期を予定している。

従来の宇宙用コンピュータは、放射線耐性の実績を最優先するために古い設計のプロセッサを使い続けてきた。BAE Systemsの耐放射線プロセッサRAD750は最大166MHzで動作し、100基以上の衛星に搭載されてきた。

宇宙用プロセッサの世代比較
RAD750Starfire
Low Power
Starfire
Performance
演算性能
CPUコア18(P×4+LPE×4)8(P×4+LPE×4)
最大周波数200MHz1.0GHz3.1GHz
GPUXe 64EUXe 64EU
NPU3タイル3タイル
AI性能最大45TOPS最大75TOPS
耐環境性能
製造工程250nm〜
150nm
Intel 18A
+Intel 3
Intel 18A
+Intel 3
TDP約5W10W35W
動作温度−55℃〜
125℃
−55℃〜
125℃
−55℃〜
125℃
放射線耐性検証済みテスト中テスト中
投入時期2001年2026年Q3
(サンプル)
2026年Q3
(サンプル)
※RAD750はBAE Systems製。Starfireの仕様はIntel公式資料に基づく(テスト進行中のため変更の可能性あり)

衛星はこれまで、取得したデータをすべて地上へ送って解析していた。Starfireは画像やセンサーデータを軌道上でAI処理する用途を想定している。

開発費はIntelが自社で賄っている。政府向け部門のショーン・オニール(Sean O'Neill)氏がSpaceNewsに語ったところでは、年末までに顧客への初回提供を見込んでおり、連邦機関が実験ミッションへの搭載を検討しているという。

たった5行のパッチ

そのStarfireに対する最初のLinuxカーネルパッチが、現地時間7月30日にedac-for-nextブランチへコミットされた

パッチのタイトルは「EDAC/igen6: Add Intel Starfire SoCs support」。EDAC(Error Detection And Correction、エラー検出・訂正)は、Linuxカーネルのメモリエラー検出サブシステムだ。変更量は1ファイル、5行の追加、削除なし

Starfire is a derivative of Panther Lake SoC and shares a similar memory subsystem architecture. Add Starfire compute die ID and reuse Panther Lake's configuration data for EDAC support.

(StarfireはPanther Lake SoCの派生であり、メモリまわりの設計を共有している。StarfireのダイIDを追加し、Panther Lakeの設定データをEDACサポートに再利用する)

コミットメッセージにはそう書かれている。

igen6ドライバにStarfireのデバイスID(0xb02b)を1つ定義し、既存のPanther Lake-Hのメモリエラー検出設定をそのまま参照させている。メモリの構成が共通しているため、新たなドライバコードを書く必要がない。

Starfire向けとしてLinux上で確認された最初のパッチになる。今後もデバイスIDの追加を中心に同様のパッチが続く見込みで、既存のPanther Lakeドライバのコードパスをほぼそのまま流用できるため大規模な開発にはならない。

5月の伏線

振り返ると、今年5月にLinuxカーネルで「Panther Lake R」というコードネームが発見されていた。パッチには「P-coreとLPE-coreを搭載し、過酷な環境での使用を想定したPanther Lakeの派生」と記されている。モデルIDは既存のPanther Lake(204)とは異なる223だった。

P-coreとLPE-coreの構成、過酷な環境への対応、Panther Lakeからの派生。StarfireのスペックはPanther Lake Rの記述とすべて重なる。5月の時点では正体が不明だった「ラギッド(頑丈な)Panther Lake」に、7月にStarfireという名前が与えられた、という流れだ。

なお、Linuxカーネルには既に別の「Starfire」が存在する。Adaptec Starfireイーサネットコントローラ用のネットワークドライバで、メインラインカーネルに長く収録されている。名前が重なるだけで、関連はない。

Intel Starfire開発経緯
5月
Panther Lake R発見
Linuxカーネルに「頑丈仕様のPanther Lake」パッチ投稿。モデルID 223、P-core+LPE-core構成
7月9日
Intel、Starfire発表
Panther Lake派生の宇宙向け18A SoC。最大75TOPS、動作温度−55℃〜125℃
7月30日
初のLinuxパッチ
EDACサブシステムにデバイスID追加。1ファイル5行、Panther Lakeの設定を再利用
Q3
サンプル出荷予定
放射線耐性テスト進行中。仕様は変更の可能性あり
※2026年の経緯。日付は現地時間

Panther Lakeは今年1月にノートPC向けとして出荷が始まり、Linuxでのドライバ対応も発売前にほぼ完了していた。そのソフトウェアインフラが、宇宙グレードの派生製品でも5行のパッチで再利用できる。ノートPCのコードが軌道上の放射線環境に耐えられるかどうかは、まだ誰にもわからない。

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