キオクシアとサンディスク、332層QLC NANDで面密度37 Gb/mm²を達成

NAND不足のさなか、キオクシアとサンディスクが世界最高密度のQLC NANDチップを発表した。層の数ではなく、1mm²あたりの記憶量で勝負する。

キオクシアとサンディスク、332層QLC NANDで面密度37 Gb/mm²を達成

NAND不足のさなか、キオクシアとサンディスクが世界最高密度のQLC NANDチップを発表した。層の数ではなく、1mm²あたりの記憶量で勝負する。


「層数競争」の虚実

3D NANDフラッシュの世代を語るとき、積層数は最もわかりやすい指標に見える。多いほど進んでいる、多いほど良い。サムスンが400層超のV10を掲げ、SKハイニックスが321層を投入するなか、キオクシアとサンディスクの最新世代BiCS10は332層にとどまる。

だが今回の発表は、その直感を裏返す。

キオクシアとサンディスクは現地時間8月4日、カリフォルニア州サンタクララで開催中のFMS(Future of Memory and Storage)でBiCS10世代のQLC(4ビット/セル)3D NANDを発表した

面密度は37 Gb/mm²超。公式に発表された3D NANDデバイスとしては世界最高だ。

7月にサンプル出荷が始まったBiCS10 TLC(3ビット/セル)版の面密度は29 Gb/mm²超だった。同じ332層・同じダイサイズで、セルあたりの記憶ビット数を3から4に引き上げた。面密度にして約28%の上積みになる。

積むより、詰める

サムスンのV10は400層を超える。数字だけ見れば圧倒的だ。しかし公表されているTLC版の面密度は28 Gb/mm²にとどまり、332層のBiCS10 TLC(29 Gb/mm²超)を下回る。今回のQLC版ではその差がさらに開いた。

この逆転が起きる理由は、3D NANDの設計が「積む技術」と「詰める技術」の両方で決まるためだ。キオクシアとサンディスクはCBA(CMOS directly Bonded to Array)と呼ばれる製造手法を採用している。メモリセルの配列と周辺回路を別々のウェハ上に作り、あとから高精度で貼り合わせる。周辺回路がセル配列の下に収まるため、チップ面積のうちデータ記憶に使える領域が広がる。

加えて、水平方向のセル間隔を縮小する微細化も並行して進めている。332層で37 Gb/mm²超を達成できたのは、垂直方向の積層と水平方向の微細化の両方が噛み合った結果だ。

層を積み上げるほど工程は複雑になり、歩留まりは下がり、製造コストは上がる。キオクシアは2026年6月の投資家向け説明会で、積層数を増やすだけでは製造コストや電力効率の改善につながらないと述べている。332層という選択はその判断の帰結だ。

データセンターに向けたQLC

今回のBiCS10 QLC NANDは、インターフェース速度が最大4,800 MT/sに達する。Toggle DDR6.0規格とSCA(Separate Command Address、コマンドとアドレスを分離する伝送方式)に対応し、高速なデータ転送と低遅延を両立させる設計だ。

さらにPI-LTT(Power-Isolated Low-Tapped Termination、電力分離型終端)技術を組み込み、高速出力回路の消費電力を抑えている。データセンターのSSDは数千台が稼働するため、1チップあたりの電力削減がラック全体の冷却コストに直結する。

ダイ容量は公表されていない。ただ、先月発表されたBiCS10 TLCが1Tb(テラビット)であることから、同じセル数・同じダイサイズであれば1.33Tb前後になると推定される。

用途はデータセンター向けSSDに限定されている。BiCS10はAI推論やクラウド基盤向けの大容量SSDに搭載される計画で、個人向けSSDへの採用時期は明らかにされていない。

NANDの品不足とQLC

2026年のNAND市場は深刻な供給不足に陥っている。AIデータセンター向けの需要がNANDの生産能力の大半を占め、個人向けSSDの価格は2025年末から急騰した。

1TBのNVMe SSDが2倍以上に値上がりしたケースも報告されている。メーカー各社は利益率の高い大口顧客への出荷を優先し、小売市場への供給は後回しになっている。

QLCはTLCより1セルあたりの記憶ビット数が多い。同じウェハから得られるデータ容量が増えるため、ビットあたりの製造コストを下げられる。大容量SSDにはQLCが適しており、256TBや512TBといったデータセンター向け超大容量SSDの実現に欠かせない。

だがQLCにはTLCより書き換え耐性が低いという制約がある。書き込み頻度の高い用途には向かない。

キオクシアとサンディスクがBiCS10でTLCとQLCの両方を開発しているのは、用途ごとに使い分けるためだ。書き換えが頻繁な処理にはTLC、読み出し中心の大容量ストレージにはQLC。データセンターの設計者にとって、その棲み分けが選択肢になる。

競合の動き

3D NANDの面密度競争は、キオクシア/サンディスク陣営だけで進んでいるわけではない。

サムスンは400層超のV10でTLC 28 Gb/mm²、インターフェース速度5,600 MT/sを掲げ、速度面での優位を打ち出している。SKハイニックスは321層の第9世代QLC NANDを2025年8月に量産開始済みで、2026年4月にはクライアントSSD「PQC21」の出荷も始めている。マイクロンは276層の第9世代(G9)でTLC 21 Gb/mm²を投入済みだ。

3D NAND 面密度比較(Gb/mm²)
※キオクシア/サンディスクの公式発表およびISSCC 2025発表値。SKハイニックスの面密度は公称値
3D NAND世代別スペック比較
BiCS10
QLC
BiCS10
TLC
V10
TLC
Gen 9
QLC
G9
TLC
キオクシア / サンディスクサムスン / SKハイニックス / マイクロン
積層数332332400超321276
面密度37超29超282021
速度4,8004,8005,600未公表3,600
ダイ容量未公表1 Tb1 Tb2 Tb1 Tb
量産状況発表段階サンプル準備中出荷中出荷中
※面密度の単位はGb/mm²、速度の単位はMT/s。V10はISSCC 2025発表値。SKハイニックスGen 9は2025年8月に量産開始

密度で見れば、BiCS10 QLCの37 Gb/mm²超は現時点で突出している。ただしこの数字は発表値であり、量産品の歩留まりや実際のSSDへの搭載時期は別の話になる。キオクシアはBiCS10の量産を2027年に北上工場(岩手県)のFab2で開始する見通しを示しており、四日市工場(三重県)ではBiCS9(218層)の個人向け製品を製造する体制をとる。

記録は出発点にすぎない。量産の歩留まりが安定し、SSDに搭載されて市場に届くまでにはまだ距離がある。

それでも、332層で400層超を凌駕した事実は残る。3D NANDの競争は、積み上げた高さではなく、1mm²あたりにどれだけの情報を書き込めるかで決まる。

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