Metaがザッカーバーグの3D分身AIを開発 社員と対話する「ザッカーBOT」

MetaがCEOマーク・ザッカーバーグ本人を学習させたフォトリアリスティックな3DのAIキャラクターを開発している。社員への助言やフィードバックを、本人の代わりに与えるのが目的だという。

Metaがザッカーバーグの3D分身AIを開発 社員と対話する「ザッカーBOT」

MetaがCEOマーク・ザッカーバーグ本人を学習させたフォトリアリスティックな3DのAIキャラクターを開発している。社員への助言やフィードバックを、本人の代わりに与えるのが目的だという。


社員が話しかける相手は、CEOではなくCEOの複製になる

Financial Timesが4月13日に報じた内容は、聞きようによっては冗談のように響く。Metaは、創業者マーク・ザッカーバーグをリアルタイムで会話できる3DのAIキャラクターとして再構築し、社員がそれを通じて「創業者とつながっている感覚」を持てるようにしようとしている。

複数の関係者がFTに語ったところでは、このプロジェクトは早期段階にあるものの、社内で急速に優先順位が上がっているらしい。ザッカーバーグ自身が学習と検証に直接関わり、自分の話し方、声のトーン、公の発言、そして会社の方向性についての最近の考えまでもが、そのAIに流し込まれている。

要するに、Metaの社員が将来「ザックと話した」と言うとき、その相手は本物の創業者ではないかもしれない、ということだ。

なぜ本人ではなく分身なのか

Metaの社員数は4年前と比べて大きく膨らんだ。8万人近くにまで拡大した組織で、CEOが全員と顔を合わせる現実的な方法は、もう残っていない。そこに生成AIの進歩が重なった。フォトリアリスティックな3Dモデル、低遅延の音声合成、リアルタイムの対話——技術的な材料はすでに揃っている。

つまりこれは、単なる面白ガジェットではなく、経営の物理的制約を技術で解こうとする試みだ。一人の創業者の影響力を、8万人の末端にまで均等に行き渡らせたい。ただし本人の時間は24時間しかない。だからコピーを作る。論理としてはきれいに通っている。

ただし、その論理には見落とされがちな前提がある。社員が求めているのは情報ではなく、本物の人間の判断だという前提だ。AIに会社戦略を教わりたい社員がどれだけいるかは、実際に動かしてみるまで誰にも分からない。

ここで思い出されるのは、ザッカーバーグ本人が2014年にFacebook本社で開いた公開Q&Aでの一件だ。高校生から「障害をどう乗り越えてきたか」と問われた彼は、こう答えた。

集中して、できる限り気にしないようにするしかない。でも気にしてしまうものだ、人間だから。僕は人間だった。今も人間だ。ただ…過去の自分の話をしていただけで、人間じゃなかったという意味じゃない。

言い間違いだったのだろう。しかしこの一言は「ザッカーバーグロボットではないか」というネットミームを10年以上にわたって支え続けている。もともと機械的だと揶揄されてきた人物の分身を、本物の機械が演じることになる。そこに漂う不気味さを、海外メディアの多くが隠そうとしていない。


Superintelligence Labsが抱える重さ

この開発は、Metaが昨年立ち上げたSuperintelligence Labsという部門が主導していると報じられている。OpenAIGoogleに追いつくために設立された、いわばMetaのAI戦略の切り札だ。

ザッカーバーグはこの部門を立ち上げるために、OpenAIGoogle DeepMindAppleから主要なエンジニアを個人的にリストアップして引き抜いた。報道によれば、4年総額で最大3億ドル(約477億円)という破格の条件が提示されたケースもあるという。Meta全体の2026年のAI関連投資は1350億ドル(約21兆4650億円)に達する見込みで、前年のおよそ倍だ。

その部門が最初に世に送り出した成果が、フォトリアリスティックな創業者の複製——というのは、評価の分かれる話だろう。

技術的ハードルは現実として存在する

フォトリアリスティックな3Dアバターをリアルタイムで喋らせるのは、想像以上に重い処理だ。FTの情報源も、遅延を抑えつつリアリティを維持するには膨大な計算資源が必要で、この点が開発の大きな壁になっていると認めている。

すでにMeta Superintelligence Labsが先日公開した初のモデル「Muse Spark」は、競合モデルとの比較で厳しい評価を受けたばかりだ。数百億ドル単位を投じた組織の最初のアウトプットとしては、社内外の期待値との落差が目立つ。

技術的には可能だ。ただし「可能であること」と「やる価値があること」は別の問題だ。

皮肉な重なり──大量レイオフとAI推進が同時に進む

もう一つ見落としてはいけないのが、文脈だ。Metaは先月、全社員の20%規模レイオフが検討されていると報じられた。一方で残る社員に対しては、「vibe coding」やAIツール活用の「スキル・ベースライン」評価が課されているという。

つまり、こういう絵になる。職を失う社員がいて、残った社員はAIツールをもっと使えと迫られ、やがてCEOの代わりにAI分身と面談させられる。これを「創業者とのつながり」と呼ぶべきかどうかは、受け取り手次第だろう。

ザッカーバーグ本人は今年1月の決算発表で「AIネイティブなツールへの投資」によって個々の貢献を底上げし、チームをフラット化すると宣言した。言葉としては前向きだが、実際の現場でそれがどう響いているかは、別の話だ。

効率化と人間関係は、同じ物差しでは量れない。片方を数値で語り始めた瞬間、もう片方は必ず脇役になる。

過去の履歴も気になる

Metaのキャラクター型チャットボットには、良い前例があまりない。2023年9月にスヌープ・ドッグら著名人のライセンスを使ったチャットボットを投入したが、その後のAI Studio開放では、ユーザーが性的に露骨なキャラクターを作り始め、未成年者保護の観点から機能制限を余儀なくされた。

「有名人を模した対話型AI」という領域は、Metaにとって必ずしも勝率の高い戦場ではなかった。その同じ路線の最新形として、CEO本人の3D分身が登場する——というのが、今回の話の立ち位置だ。


何が試されているのか

技術の問題ではない。問われているのは、組織のあり方と、人間の判断を機械に委ねることの是非だ。

社員がAI分身と話して「つながり」を感じる世界は、たしかに効率的かもしれない。だが、創業者の思想を均等に配信することと、生身の人間同士のやりとりから生まれる信頼は、同じものではない。

Metaが今やろうとしているのは、組織と技術の新しい接続実験だ。上手くいけば、企業経営の新しい形が生まれる。上手くいかなければ、AI時代における人間関係の限界を、世界で最も金を注ぎ込んだ形で証明することになる。

どちらの結果が出るにせよ、8万人の社員が最初の被験者になる。彼らに拒否権があるのかどうかは、今のところ誰も説明していない。


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