Meta、ローカルで動くAIエージェントモデルをApache 2.0で公開
300億パラメータのエージェントモデルが、24GBのGPUに収まる。Metaが再びオープンに舵を切った。
300億パラメータのエージェントモデルが、24GBのGPUに収まる。Metaが再びオープンに舵を切った。
24GBのGPUで動くエージェント
Meta Superintelligence Labs(MSL)が現地時間8月10日、エージェント向けモデルMuse Glimmerを公開した。パラメータ数は300億。ライセンスはApache 2.0で、商用利用を含め制限がない。
Muse Glimmerは、クラウドではなくローカルで動くことを前提に設計されている。上位モデルMuse Sparkからロジット蒸留(出力の確率分布を使って小さなモデルに知識を移す手法)で訓練され、エージェントとしてのタスク遂行に特化した。スケジュール管理、ファイル操作、コード作成、関数呼び出しといった作業を、インターネット接続なしで実行できる。
300億パラメータのモデルをそのまま動かすには55GB以上のメモリが必要になる。Muse Glimmerは4bit量子化によって20GB以下に圧縮され、KVキャッシュ(推論時の作業メモリ)、画像認識用のperception encoder(知覚エンコーダー)、投機的デコーディング用のドラフターモデルを含めても、24GBまたは32GBのGPUに収まる。
生成速度を上げるため、DFlashベースのドラフターモデルが同梱されている。トークンのブロックをまとめて提案し、メインモデルが並列に検証する仕組みで、出力品質を落とさずに生成速度を引き上げる。17GB量子化版での実測値は以下の通りだ。
RTX 5090(llama.cpp):74.9 tok/sから233 tok/sへ、3.1倍。M5-Max(ExecuTorch):26.6から50 tok/sへ、1.8倍。M4-Max(ExecuTorch):23.7から38 tok/sへ、1.5倍。
RTX 5090での233 tok/sは、リアルタイムの対話やエージェント操作に十分な速度だ。MacBook Proでも実用的な応答が返ってくる。
重みはHugging Faceで公開されている。Ollama、LM Studio、Unslothなどからの対応も数日中に予定されており、Ollamaは同日リリースの0.32.7で早くもサポートを追加した。
振り子がオープンに戻った
Muse Glimmer単体の話じゃない。この発表の背景には、Metaのオープンモデル戦略の1年がかりの往復がある。
2025年、MetaはScale AIに143億ドルを投じてアレクサンドル・ワン(Alexandr Wang)氏を引き抜き、初のChief AI Officer(最高AI責任者)に据えた。ワン氏が率いるMSLは、Llamaシリーズとは別の系譜としてMuseファミリーを立ち上げた。Llama 4が品質やベンチマーク操作の指摘で不評を買った後、Metaはクローズド路線に転換。2026年4月にリリースされた初代Muse Sparkは、完全にプロプライエタリだった。
ここからの展開が速い。7月にMuse Spark 1.1をリリースし、8月にMuse Codeとともに1.2を公開。そして今回、Muse Glimmerという形でオープンウェイトに戻ってきた。しかもApache 2.0だ。Llamaシリーズで使われていたMeta独自ライセンス(月間アクティブユーザー7億人以上の企業は別途許諾が必要)よりも大幅に制限が緩い。
同日、マーク・ザッカーバーグ氏はInstagram動画でMuse Spark 1.2のオープンウェイト化も近日中に行うと発表した。
2025年6月 Scale AIに143億ドルを投資 ワン氏を引き抜き、初の最高AI責任者に。MSLを設立 2026年3月 ルカン氏がMetaを退社 ワン氏との対立。Llama路線からの転換が加速 2026年4月 Muse Spark公開(クローズド) MSL初のモデル。完全プロプライエタリで提供 2026年7月 Muse Spark 1.1リリース API提供を開始。コーディング市場に参入 2026年8月 Muse Spark 1.2 + Muse Code Muse Codeベータ版を同時発表 8月10日 Muse Glimmer公開(Apache 2.0) オープンウェイトに回帰。Spark 1.2のオープン化も予告 |
ザッカーバーグ氏はあわせて14ページの書簡「The Future is for Everyone」(未来はすべての人のために)を公開し、オープンソースAIが権力の分散と安全性の両方に資するとする持論を展開した。中国のラボがオープンウェイトで攻勢をかける中、米国のラボが訓練データ規制などで不利になっているとして、政策の緩和を求めている。
オープン路線の復帰は、技術思想だけでは説明しきれない。Metaの2026年AI設備投資は最大1,450億ドルに達する見通しで、そのインフラ投資の正当化には、モデルのエコシステムを広げる必要がある。データセンター建設に対する地域住民の反対運動も激化しており、ザッカーバーグ氏は同日、米国内のデータセンター所在コミュニティ向けに10億ドルの基金を設立すると発表した。
同サイズ帯での立ち位置
Metaが比較対象として挙げたのは、Gemma4-31B(Thinking Mode、思考モード)とQwen3.6-27B(同)だ。300億パラメータ前後のモデル同士の比較になる。
エージェント系ベンチマークでの成績は明確にMuse Glimmerが上回る。MCP Atlasで75.5を記録(Gemma4は54.2、Qwen3.6は62.5)、DeepSearch QAで74.6(61.7、71.1)、SWE-Bench Proで51.2(36.9、50.2)。ローカルエージェントとして設計されたモデルが、エージェント系のベンチマークで強いのは当然の帰結ではある。
一方、すべてで勝っているわけじゃない。OSWorld-Verifiedでは65.9に対してQwen3.6が75.6、SWE-Bench Verifiedでも76.0対77.2、TerminalBench 2.1では51.7対60.7とQwen3.6に譲っている。GDPval-AAではQwen3.6の1141に対してMuse Glimmerは953で、Gemma4の811よりは上だが首位じゃない。マルチモーダル(ScreenSpot Pro、OmniDocBench、MMMU Pro)でも3モデルの差は僅差で、Muse Glimmerの優位は限定的だ。
数学推論ではAIME 2026で94.7を記録し、3モデル中最高。GPQA DiamondではGemma4の85.7に負けている。Humanity's Last ExamでもGemma4の23.6に対して22.0と、汎用推論では互角かやや劣る。
Muse Glimmerの強みは、エージェントとしてのタスク遂行と障害回復に特化した訓練にある。ツールの呼び出しが失敗したとき、停止せずにエラーを診断して再試行する。100以上の言語に対応し、画像を含むマルチモーダル入力も受け付ける。
| Glimmer | Gemma4 | Qwen3.6 | |
|---|---|---|---|
| エージェント | |||
| MCP Atlas | 75.5 | 54.2 | 62.5 |
| DeepSearch QA | 74.6 | 61.7 | 71.1 |
| τ-Banking | 23.5 | 15.1 | 16.7 |
| WildClawBench | 47.6 | 37.6 | 43.2 |
| GDPval-AA | 953 | 811 | 1141 |
| GAIA2 | 43.3 | 36.4 | 40.0 |
| SkillsBench | 44.3 | 32.4 | 46.6 |
| OSWorld-Verified | 65.9 | 58.5 | 75.6 |
| コーディング | |||
| SWE-Bench Pro | 51.2 | 36.9 | 50.2 |
| SWE-Bench V. | 76.0 | 66.6 | 77.2 |
| TerminalBench | 51.7 | 43.4 | 60.7 |
| SciCode | 43.6 | 43.4 | 39.8 |
| Charxiv | 78.8 | 77.7 | 78.4 |
| マルチモーダル | |||
| ScreenSpot Pro | 75.4 | 75.9 | 76.1 |
| OmniDocBench | 75.8 | 72.5 | 77.8 |
| MMMU Pro | 74 | 73 | 75 |
| 推論 | |||
| IFBench | 77.0 | 76.0 | 70.8 |
| AIME 2026 | 94.7 | 89.2 | 94.1 |
| GPQA Diamond | 83.5 | 85.7 | 84.2 |
| Humanity's Last Exam | 22.0 | 23.6 | 23.1 |
| AA-LCR | 80.0 | 68.3 | 73.3 |
| Beam 128K | 65.1 | 58.2 | 63.0 |
Metaは自社のAdvanced AI Scaling Framework(先進AIスケーリング枠組み)での評価も公開しており、サイバーセキュリティと制御喪失のリスクを「中程度以下」と判定している。
300億パラメータのオープンモデルが、ローカルのGPUでエージェントとして動く。1年前、Metaはオープンソースから離れようとしていた。RTX 5090を持っている人なら、今夜にでも試せる。
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