米データセンター建設禁止が500件突破。テキサスも凍結に転じる
AIデータセンターの建設を止める自治体が7月だけで200件増えた。テキサス州知事も凍結に転じ、その足元でAmazonが米国最大の汚染源になりうるガス発電所を建てている。
AIデータセンターの建設を止める自治体が7月だけで200件増えた。テキサス州知事も凍結に転じ、その足元でAmazonが米国最大の汚染源になりうるガス発電所を建てている。
6月末に300件、7月末に500件
5月の時点で78件だった米国のデータセンター建設禁止措置が、7月末に500件を超えた。
The Informationが報じた分析によると、法的文書と地方ニュースの集計で6月末には約300件だった禁止・凍結措置が、7月だけで200件以上追加された。別の集計では42州にわたる533件が記録されている。
党派は関係ない。共和党が強いテキサスと民主党が強いニューヨーク、どちらもこの流れの中にいる。禁止措置の大半は中西部と南部に集中しており、7月に承認された凍結の4分の3近くがジョージア州やフロリダ州など南部の州で発生した。
フロリダ州の動きが特に速い。同州で現在有効な23件の制限のうち14件が7月に承認され、さらに15件が検討中だという。
テキサスが止まった
この流れの中で最も重い転換が、テキサス州で起きた。
グレッグ・アボット(Greg Abbott)知事は現地時間8月3日、州内のデータセンター新規承認を凍結する指示を出した。テキサス公益事業委員会(PUCT)とテキサス電力信頼性評議会(ERCOT)に対し、送電網への接続を求めるデータセンターの包括的な監査を命じた。監査を通過しない施設は接続を拒否するとしている。
テキサス州の送電網に対する接続申請は約474ギガワットに達しており、これは同州の過去最大ピーク需要の5倍を超える。新規接続申請の約90%がデータセンターだという。
アボット知事は以前、テキサスをAIの「震源地」と呼び、データセンター誘致を推進していた。転換の背景には世論がある。テキサス大学が6月に実施した調査では、テキサスの有権者の56%がデータセンター建設に反対と回答した。アボット知事は再選を控えており、民主党のジーナ・イノホサ(Gina Hinojosa)州下院議員との差はテキサスの共和党候補としては僅差とされる。
イノホサ氏はアボット知事の凍結を「データセンターのCEOから何百万ドルも受け取っておきながら、テキサス州民にはリップサービスを送る」と批判している。
Amazonが建てるもの
アボット知事がモラトリアムを出した同じテキサス州で、Amazonは別の計画を進めている。
ペコス郡に計画中のデータセンターキャンパス「GW Ranch」は、35基の天然ガスタービンで最大7.65ギガワットの電力を生み出す自前の発電所を併設する。認可された年間CO2排出量は3300万トン。これは米国で現在稼働するどの発電所よりも多い。
パシフィコ・エナジーが開発し、Amazonが土地を取得して資金を提供する。発電所は当初テキサスの送電網には接続せず、データセンター専用の電力源として運用される計画だ。
Amazonは2040年までにカーボンニュートラルを達成すると2019年に宣言し、700社以上が参加する「気候誓約」を自ら立ち上げた。同社の総排出量は昨年16%増加している。
Microsoftもペコス郡の西30マイルにシェブロンと共同で2ギガワットのオフグリッドガス発電データセンターを計画している。テキサスの送電網を回避して自前の発電所でAIを動かす動きは、Amazonだけのものじゃない。
止まらない反対、広がる凍結
ニューヨーク州のキャシー・ホークル(Kathy Hochul)知事は7月14日、50メガワット以上のデータセンター新設を最長1年間凍結する行政命令に署名した。州単位のモラトリアムとしては全米初だった。
マサチューセッツ州とネブラスカ州はデータセンター開発者向けの税制優遇を停止した。コロラド州ではデンバー周辺を中心に19件の禁止措置が発効している。ナッシュビルでは動物園に隣接する23エーカー、最大7億ドル規模のデータセンター開発計画が住民と政治家の両方から抵抗を受けている。
連邦議会でも、バーニー・サンダース(Bernie Sanders)上院議員とアレクサンドリア・オカシオ=コルテス(Alexandria Ocasio-Cortez)下院議員が3月にAIデータセンターモラトリアム法案を提出した。連邦レベルでの規制枠組みが整うまで新規建設を凍結する内容で、可決の見込みは薄いが、議論の存在自体が圧力になっている。
2025年5月 禁止8件からスタート 追跡サイトが集計を開始した時点の件数 2026年3月 連邦モラトリアム法案を提出 サンダース氏とオカシオ=コルテス氏が超党派で提出。可決の見込みは薄いが議論を加速 2026年5月 禁止78件に拡大 1年で約10倍。4件が恒久的な禁止に踏み切る 2026年6月末 約300件に急増 1ヶ月半で4倍近く。中西部と南部に集中 7月14日 ニューヨーク州が全米初の州単位凍結 50MW以上を最長1年間凍結。行政命令で即日発効 2026年7月末 500件を突破 7月だけで200件以上追加。42州に拡大 8月3日 テキサス州知事が新規承認を凍結 約474GWの接続申請を監査完了まで凍結。AIの「震源地」を自称した州が転換 8月8日 AmazonのGW Ranchガス発電所が判明 年間CO2排出量3300万トン。送電網に繋がず、凍結の対象外 |
世論の変化は急だ。Heatmap Proが6月に実施した調査では、自宅近くにデータセンターが建設されることに約70%の米国人が反対と回答した。2025年9月にはほぼ同数が賛成・反対に割れていたことを考えると、9ヶ月で世論が49ポイント反データセンターに振れたことになる。ギャラップの3月調査でも71%が反対と回答しており、原子力発電所よりも嫌われている。
抗議行動も激化している。2026年に入ってからデータセンターへの抗議で少なくとも37人が逮捕された。発言時間を数秒超過した農場経営者、反対派の発言後に拍手した教師。逮捕の理由は軽微なものが多く、職業も思想も年齢もばらばらだ。共通しているのは、自分の街にデータセンターが来ることに反対したという一点だけだった。
500件は通過点に見える。建設する側と止める側の力学がどこで均衡するのか、まだ誰にもわからない。
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