元Microsoft .NET責任者、ライブタイルを復活させたメールアプリを開発中
Microsoftが捨てたUIコンセプトを、かつてそのMicrosoftで.NETコミュニティを率いていたエンジニアが、Microsoftの技術を使って蘇らせようとしている。まだ動くビルドすら公開されていない。
Microsoftが捨てたUIコンセプトを、かつてそのMicrosoftで.NETコミュニティを率いていたエンジニアが、Microsoftの技術を使って蘇らせようとしている。まだ動くビルドすら公開されていない。
ライブタイルの帰還先はメールアプリだった
Windows Phoneで生まれ、Windows 8で花開き、Windows 11で消えたライブタイル。あの四角いタイルが情報を映し出すUIが、予想外の場所に姿を現した。
DayFrameというデスクトップアプリだ。メール、カレンダー、連絡先といった機能をモジュールとして束ね、画面左端にライブタイル式のナビゲーションレールを常駐させる。タイルをタップすればモジュールが切り替わり、タイル自体が関連情報をリアルタイムに表示する。Windows Phoneを触ったことがある人なら、一目で何を目指しているか分かるだろう。
開発しているのはジェフ・フリッツ(Jeffrey T. Fritz)氏。Microsoftの.NETコミュニティチームでプリンシパル・プログラムマネージャーを務め、.NET Confのプロデュースやライブコーディング配信で.NET開発者コミュニティの顔として知られてきた。
フリッツ氏の経歴とDayFrameの位置づけ
フリッツ氏は7月中旬にMicrosoftを退社した。そしてその約2週間後の7月27日、Progress(Telerikブランドの親会社)がフリッツ氏の復帰を発表している。Microsoftに入社する前にもTelerikでデベロッパーアドボケイトを務めており、出戻りだ。
つまりDayFrameは、Progressでの本業とは別の個人プロジェクトという位置づけになる。Neowinが報じた記事ではこの点に触れられていないが、フリッツ氏のキャリアの文脈を踏まえると、DayFrameは企業がリソースを注ぐ製品というより、ひとりのエンジニアが自分の技術で作りたいものを作っている段階だ。
技術スタックと設計思想
DayFrameは.NET MAUI Blazor Hybridで開発されている(.NETのクロスプラットフォームUIフレームワークとBlazorを組み合わせ、デスクトップ・モバイル向けのネイティブアプリを構築する技術)。対応プラットフォームはWindowsとmacOS。
設計の核は「ひとつのシェルに、独立したモジュールを差し込む」という思想だ。
メール、カレンダー、連絡先が現在開発中のモジュールで、GitHub、写真管理、SNS、インスタントメッセージ、ジャーナル、フィードリーダーも検討されている。各モジュールは個別に構築・テストされ、共有コントラクト層を介して接続される。新しいモジュールを追加しても、既存のモジュールに影響を与えない設計だという。
タイルの色、フォント、サイズはすべてカスタマイズ可能で、不要なモジュールは無効化できる。
Microsoftが捨てたものを拾う皮肉
ライブタイルの起源はWindows Phone 7(2010年)に遡る。2012年のWindows 8でデスクトップに持ち込まれ、Windows 10でもスタートメニューの中核を担った。しかしWindows 11(2021年)でMicrosoftはライブタイルを廃止し、静的なアイコンのグリッドとウィジェットパネルに置き換えた。
その判断から5年。ライブタイルというコンセプトが、かつてMicrosoftで.NETコミュニティの最前線にいた人物の手で、メールアプリのナビゲーションとして復活しようとしている。
フリッツ氏が選んだ.NET MAUI Blazor Hybridは、Microsoftが開発・維持している技術だ。Microsoftの技術で、Microsoftが放棄したUIを、Microsoftの元社員が再構築する。
2010年 Windows Phone 7登場 ライブタイルの概念が誕生 2012年 Windows 8リリース ライブタイルがデスクトップに進出 2015年 Windows 10リリース スタートメニュー内でライブタイル継続 2021年 Windows 11リリース ライブタイル廃止。ウィジェットに置き換え 2026年 DayFrame開発中 元Microsoft .NET責任者がライブタイルをメールアプリで復活 |
現時点で使えるものはない
期待を持ちすぎる前に、現実を確認しておく。
DayFrameはまだプレアルファにも達していない。公開ビルドは存在せず、ユーザーがインストールして試せる状態にはない。公式サイトにはシェル部分が実際のコードとして動作していると記載されているが、それだけだ。
Outlookの代替を探している人にとって、DayFrameは今日使える選択肢じゃない。メールクライアントとしての基本機能がどこまで実装されているかも不明で、Outlookが抱えるバグへの即効薬にはならない。
それでも、ライブタイルを懐かしむ人にとって、このプロジェクトの存在自体がひとつの答えではある。Microsoftが「不要」と判断したUIコンセプトに、まだ可能性を見ている開発者がいるということ。そしてその開発者が、そのUIを生んだ会社の出身だということ。
DayFrameが「懐かしさ」を超えて実用的なデスクトップ体験になれるかどうかは、これからの開発次第だ。
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