NVIDIA、RTX 5090のAIC価格を300ドル値上げ
NVIDIAがRTX 5090とRTX 5090D V2のボードパートナー向け卸価格を約300ドル引き上げた。GDDR7メモリの調達コスト急騰が原因で、店頭価格はすでに4,000ドル超え。5,000ドル接近の現実味も増している。
据え置きはMSRP、上がるのはAICへの卸価格
中国の業界フォーラム「Board Channels」が、NVIDIAからボードパートナー(AIC)宛に出された通知を取り上げている。GeForce RTX 5090とRTX 5090D V2の卸価格を約300ドル(約2,000元、約4万7,000円)引き上げる内容で、2026年5月13日付けで適用された。
注目すべきはここからだ。希望小売価格は据え置きで、RTX 5090のMSRPは発売時と同じ1,999ドルのまま動いていない。値上げされたのは、NVIDIAがASUSやMSIといったAICに対して請求する卸価格である。
AICはこの差額を自社で吸収できる体力がない。卸売業者と小売業者を通じて、最終的に消費者の購入価格に上乗せされる。NVIDIAは「公式価格は変えていない」と主張できる立場を保ったまま、実勢価格を吊り上げる仕組みが完成している。
公式MSRPと実勢価格の差は、すでに倍を超えている。
原因はGDDR7、メモリがGPU原価を支配する
値上げの直接的な原因は、GDDR7メモリの調達コスト急騰にある。
RTX 5090は32GBのGDDR7メモリを512ビットバスで搭載する。中国専用モデルのRTX 5090D V2は24GBのGDDR7を384ビットバスで搭載しており、どちらも大容量メモリを抱えるモデルだ。1枚あたりのメモリ単価上昇が、原価を直撃する。
2026年初頭から続くこの値上げサイクルは、GPU業界全体を揺さぶっている。業界筋の試算では、メモリがGPU原価の8割超を占める水準にまで達した。GPU本体のシリコンよりも、そこに載せるメモリのほうが原価を支配する逆転が起きている。
AIデータセンター向けのHBM(高帯域メモリ)需要が爆発的に伸び、メモリメーカーはそちらに生産を集中させている。GDDR7の供給は二の次にされ、消費者向けGPUの調達価格が押し上げられる。
NVIDIA自身もH200やB200といったAI向けアクセラレータを優先しており、消費者向け製品は構造的に割を食う側に回っている。
RTX 5080以下は今回見送り、なぜ5090系だけが対象か
GDDR7を搭載する他のSKUに目を向けると様子が違う。RTX 5080、RTX 5070 Ti、RTX 5070については、今回の卸価格変更が通知されていない。
中国メディアの報告では、これらのモデルは現状の卸価格を維持する。GDDR7を使っているのに、今回の対象は5090系のみとなった理由は明確にされていない。
メモリ容量の差が一つの要因だろう。RTX 5080は16GB、RTX 5070 Tiは16GB、RTX 5070は12GB。32GBや24GBを抱える5090系と比べれば、1枚あたりのメモリ調達コスト負担は半分以下になる。
| モデル | VRAM | バス幅 | 今回値上げ |
|---|---|---|---|
| RTX 5090 | 32GB | 512bit | +300ドル |
| RTX 5090D V2 | 24GB | 384bit | +300ドル |
| RTX 5080 | 16GB | 256bit | なし |
| RTX 5070 Ti | 16GB | 256bit | なし |
| RTX 5070 | 12GB | 192bit | なし |
もう一つの可能性は、5090系の需要が他のSKUに比べて崩れにくい点だ。ハイエンドのフラッグシップを買う層は価格弾力性が低い。値上げしても売れ続けると判断したなら、まずここから手をつけてくる。
店頭価格は4,000ドル超え、5,000ドル接近の現実味
MSRP1,999ドルのRTX 5090は、2026年5月時点ですでに店頭価格は4,000ドル前後で取引されている。発売時の倍に到達した水準だ。
今回の卸価格値上げ約300ドルがそのまま乗れば、店頭価格は4,300〜4,500ドル帯に押し上げられる。一部のプレミアムモデルでは5,000ドルに接近するモデルが出てきても不思議ではない。
1年前、「フラッグシップGPUに2,000ドルは高すぎる」と議論されていたのが嘘のような光景だ。FPSあたりの単価で見ると、世代ごとに改善するはずだったコストパフォーマンスが、メモリ価格の影響で逆行している。
日本市場、円安と値上げのダブルパンチ
日本での影響はさらに重い。
発売当初のRTX 5090の国内定価は約39万4,000円だった。それが2026年5月時点では、最安値で59万8,000円、平均では71万円台で取引されている。発売時から1.5倍以上になった計算だ。
要因は二つある。一つはGDDR7由来の卸価格上昇、もう一つは円安だ。今日(5月14日)時点で1ドル=157円台後半で推移しており、輸入価格を直接押し上げている。
今回の300ドル値上げを単純換算すれば、約4万7,000円。これがそのまま店頭価格に乗れば、現状の最安値からでも63万円台、平均価格帯では75万円超えが視野に入る。
日本のゲーマーは、GPUの絶対性能と絶対価格のバランスをどこで折り合わせるかという問題に直面している。RTX 5080の20万円前後、RTX 5070 Tiの16万円前後と並べると、5090は別世界の価格帯に行ってしまった。
終わらないメモリ不足、ゲーマーは置き去り
今回の値上げは単発の出来事ではない。
2026年第1四半期から、NVIDIAとAMDは段階的なGPU価格引き上げを続けてきた。月単位で値上げが続くという業界予測も出ている。背景にあるのは、AI向けメモリ需要の構造的なメモリ不足だ。
過去のGPU不足、たとえば暗号通貨マイニング需要やCOVID時の半導体逼迫とは性質が違う。あのときは需要が一時的だったから、いずれは落ち着いた。今回はメモリ供給そのものがAI側に取られている。
仮にゲーマー需要が減ったとしても、AIデータセンター需要が一向に減らない限り、消費者向けGPUの価格は下がりにくい。フラッグシップGPUが消費者の手の届かない価格帯に固定化される可能性は高い。
NVIDIAにとって、ゲーマー向けGPUはもはや主役ではない。H200やGB200で稼ぐ巨大な収益構造に比べれば、コンシューマGPUの売上は補完的な位置に下がりつつある。
5090を狙っていたゲーマーの選択肢は、ここから一つずつ消えていく。
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