PS6、24GBへの後退案が現実味

PS6、24GBへの後退案が現実味

メモリ価格の高騰がPS6のスペックを削り始めている。リーカーKeplerL2が示した譲歩案は、当初計画の30GBから24GBへ、メモリバスは160-bitから128-bitへ。コストを切るならここしかない、という現実的な落とし所だ。


「最も合理的な妥協点」が示された

PS6の仕様を巡る議論が、ソニーの決算発表をきっかけに動き出している。

NeoGAFのスレッド「Sony CEO: 'We have not yet decided on PS6 launch timing'」でリーカーのKeplerL2が投稿した内容によると、ソニーがPS6の販売価格を消費者が受け入れ可能な水準に抑えたい場合、システムを大きく損なわずに削れる最も合理的な部分はメモリバスとVRAMだという。具体的にはSSDを1TBに据え置き、メモリバスを256-bitから128-bitに、VRAMを24GBに減らす案だ。

Nerfing the specs so much kinda defeats the point of having a next-gen system. I think the only reasonable cutbacks are keeping SSD at 1TB and (if they are really desperate) cutting down mem bus to 128-bit and VRAM to 24GB.

(スペックをここまで弱体化させたら次世代機を出す意味が薄れる。合理的な妥協点があるとすれば、SSDを1TBに据え置き、本当に追い込まれた場合に限ってメモリバスを128-bitに、VRAMを24GBに落とすことくらいだ)

KeplerL2自身が「スペックをここまで削ったら次世代機を出す意味が薄れる」と前置きしたうえでの提案である点が重要だ。理想ではなく、追い込まれた場合の現実的な譲歩線として示されている。

数字の意味するもの

この変更がもたらすインパクトは小さくない。KeplerL2の試算では、現在のG7価格でBOMを約60ドル削減でき、加えてSoCの歩留まりが改善する。メモリコントローラーの欠陥チップを救済できるため、APU全体としての歩留まり向上効果も期待できる。

It would be a $60 BOM reduction at current G7 prices, plus you get a yield boost for the SoC by being able to harvest MC defects.

(現在のG7価格でBOMが60ドル削減でき、加えてメモリコントローラーの欠陥を救済できるためSoCの歩留まりも上がる)

PS6に関するこれまでのリーク仕様を整理すると、状況がわかりやすくなる。

3GBのGDDR7モジュールを10枚搭載した30GB構成、メモリバスは160-bit、転送速度は32Gbpsで合計帯域は約640GB/s。これがKeplerL2が以前から示してきたPS6の基本設計だ。

今回提案された24GB・128-bitへの後退は、このプランを一段下に修正する案にあたる。同じ32Gbpsのチップを8枚に減らせば、帯域は約 512GB/s まで下がる。PS5 Proの公称576GB/sを下回る水準だ。次世代機としては心もとない数字に見える。

PS6当初プラン・譲歩案・PS5 Proのメモリ仕様比較
PS6
当初プラン
PS6
譲歩案
PS5 Pro
(対照)
メモリ容量 30GB 24GB 16GB
+2GB DDR5
メモリバス幅 160-bit 128-bit 256-bit
転送速度 32Gbps 32Gbps 18Gbps
帯域 640GB/s 512GB/s 576GB/s
モジュール構成 3GB×10枚
GDDR7
3GB×8枚
GDDR7
2GB×8枚
GDDR6
SSD 1TB 1TB 2TB
※ PS6両案はリーカーKeplerL2のNeoGAF投稿に基づく。PS5 Proは公式仕様。

ただし、KeplerL2が「APUに大きな再設計は不要」と指摘している通り、回路レベルの大規模な手戻りなしで実現できる点が経済的には大きい。発売目前で設計をやり直すリスクを取らずに、コストだけ調整できる。

「20GBに削れ」への反論

スレッドの発端は別のユーザーが「PS6は20GB、500GB SSDで$499に抑えるべき」と提案したことだ。これに対してKeplerL2が「そこまで削ると次世代機の存在意義がなくなる」と反論し、譲歩するならどこか、という議論に発展した。

別のゴールドメンバーBojjiは「PS5は既に1台ごとに利益を出すのが難しい状況で、それはRAMアポカリプス(メモリの黙示録)の前の話だ」と指摘。500ドルのMSRPは「パイプドリーム(実現困難な夢)」と切って捨てている。

PS5 was already struggling to make money on every unit last year (and they increased prices in some territories), and that was before RAM apocalypse. 500$ MSRP for a new console is a pipe dream.

(PS5は既に1台ごとに利益を出すのが厳しく、一部地域では値上げまでしていた。それすらRAMアポカリプスの前の話だ。新型機の500ドルMSRPは実現困難な夢だ)

技術論としても20GB案には穴がある。携帯機版(PSP2と呼ばれることのある24GBのLPDDR5X搭載機)よりPS6本体のメモリが少なくなれば、開発者が同一タイトルを両機で動かす際にPS6側で詰む。Series Sの再来になるだけだ。

十時CEOが残した含み

タイミングが象徴的だ。ソニーは2026年5月8日に2025年度第4四半期決算を発表した直後で、社長兼CEOの十時裕樹氏が説明会で「次世代機の発売時期も価格も決まっていない」と明言したばかりだ。

理由としてメモリ価格の高止まりを挙げ、「2027年度もメモリ価格は非常に高い水準が続くと見ている」と発言。さらに「ハードウェアコストの削減方法やビジネスモデルのシミュレーションを行い、最適解を探りたい」と続けている。

ソニーは2026会計年度のPS5販売台数を「合理的な価格で調達可能なメモリ数量に基づいて」計画すると表明済みで、PS6開発投資の増加も次年度の営業利益見通しに織り込んでいる。現行機の生産すら部材調達の制約下にある状況で、次世代機を予定通り投入できるかは確かに不透明だ。

「現状から判断すると、2027年度も供給不足が続くため、メモリ価格は非常に高止まりすると予想しています。新しいコンソールをいつ発売するかはまだ決めておらず、価格についても決定していません」

「ビジネスモデルのシミュレーション」という表現が含みを持つ。発売時期を遅らせる、価格帯を引き上げる、スペックを下方修正する。どれを取っても痛みを伴うが、選択肢として実際にテーブルに載っているということだ。


なぜ128-bitなのか

技術的に見て、128-bitバスは中途半端な選択ではない。

PS5 Proが256-bit、当初の30GB案が160-bitだったことを踏まえると、128-bitは「ここから先は削れない」という防衛線にあたる。これより細くすると、いくら高速なGDDR7でも次世代機として求められる帯域に届かない。

KeplerL2は別のスレッドで、PS6のレイトレーシング性能向上には帯域より演算密度の寄与が大きい設計思想を示している。AMDの次世代RDNAアーキテクチャがその方向で最適化されているなら、128-bit+24GBで「ゲームによっては支障なく動く」というシナリオも成立しうる。

ただし、これはKeplerL2自身が「本当に追い込まれた場合に限る」と注釈をつけた譲歩案だ。理想ではなく、最後の砦である。

PlayStation各世代の帯域比較(GB/s)
既存・公式仕様 PS6リーク(KeplerL2)
※ PS5・PS5 Proはソニー公式仕様。PS6当初案・譲歩案はKeplerL2のNeoGAF投稿に基づく試算値。

ライバル不在で広がる選択肢

PS6にとって幸運なのは、競争環境がかつてないほど緩いことだ。

Microsoftの次世代Xbox(コードネームHelix)は1000ドル前後の高性能機として位置づけられるとリークされており、コンソール市場で正面からPlayStationと競合する設計ではない。任天堂のSwitch 2は別カテゴリの製品だ。

つまりソニーは「価格競争の圧力なしに、自分のペースでスペックと価格のバランスを取れる」立場にある。競合が消えた市場で、自社の経済合理性だけを基準に意思決定できる状況だ。

これは諸刃の剣でもある。消費者にとっての選択肢が事実上ソニー一社になるため、価格上昇や仕様削減を「飲んでもらう」交渉力をソニーが持ってしまう。


後退の意味するもの

KeplerL2の譲歩案は、リーク情報を超えた意味を持っている。PS6が当初想定された姿のまま登場できるかどうか、業界全体が結論を保留して様子を見ている。

ソニーが30GB・160-bitのまま2027年秋に投入できれば、それは部材調達と価格設計の勝利になる。逆に24GB・128-bitへの後退を選べば、メモリ価格の長期高騰に降伏したことを示す。どちらの選択肢にも、それぞれの代償がある。

十時氏の「ビジネスモデルのシミュレーション」という言葉は、おそらくこの選択を含む。スペックを取るのか、発売時期を取るのか、価格を取るのか。三つを同時に満たす道は、メモリ高騰が続く限り狭まり続ける。


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