Steamコレクター勢120人時代、約1.2億円分を所有する者も

20,000本以上のSteamゲームを抱えるユーザーが120人を超えた。首位Sonixは43,085本で現行価格換算75万ドル。日本人も120位に食い込んでいる。

Steamコレクター勢120人時代、約1.2億円分を所有する者も
Valve

20,000本以上のSteamゲームを抱えるユーザーが120人を超えた。首位Sonixは43,085本で現行価格換算75万ドル。日本人も120位に食い込んでいる。


「積みゲー」の上限は、ここまで来ていた

自分のSteamライブラリを眺めて「買いすぎたな」と後ろめたくなった経験は、PCゲーマーなら誰しも覚えがあるだろう。100本あれば相当な部類、500本なら重度のコレクターだと語られてきた。だが、その常識を踏みつぶす「コレクター」たちがいる。

SteamDBの最新データによれば、所有ゲーム数20,000本以上のユーザーは現時点で少なくとも120人確認されている。首位Sonixに至っては4万本を優に超え、現行価格で換算すればおよそ1億1900万円相当の「資産」を積み上げている。桁違いという言葉では足りない規模だ。

Tom's Hardwareが伝えた数字は、Steamというプラットフォーム上で起きている所有欲の臨界を淡々と示している。


首位Sonix、43,085本の意味

リーダーボードの頂点に立つのはSonix。43,085本のゲームを所有し、現行価格の合計は約75万ドルに達する。日本円にして約1億1900万円。住宅が1軒買えてしまう金額だ。

Sonixは上海在住のユーザーで、Steamアカウント歴15年。昨年9月に史上初の「Game Collector: 40,000+」バッジを取得した人物でもある。ここから現在までに3,000本以上を積み増した計算になる。

興味深いのは、Sonixの最もプレイ時間が長いタイトルが最新AAAではなく、Valveが2010年に配信した協力型マルチプレイシューター「Alien Swarm」という無料ゲームだという点だ。購入金額ベースで世界最大級のコレクションを抱えながら、最も愛している作品は無料配信のタイトル。所有と体験は別物なのだと、Sonix自身の時間配分が物語っている。

40,000本を1本1分で購入し続けたとしても、1日8時間労働で約3か月かかる計算になる。プレイして回収しようとすれば、休まずぶっ通しで7年。1日8時間ペースなら21年。

40,000本超えは3人、新たな階層へ

40,000本以上を所有するユーザーは現在3人に増えた。昨年9月時点ではSonixただ1人だった「40Kコレクター」が、わずか半年強で3人に拡大した格好だ。

2位のIan Brandon Andersonは40,918本、3位のAxtorは40,495本。いずれも数千本単位でSonixを追いかけている。この加速ペースを見れば、今年中に5万本の大台に乗る者が現れても驚きはない。

気になるのは、上位3人が示している「増加速度」だ。Sonixの昨年9月時点のコレクションは40,028本。そこから約7か月で3,000本以上を積み増している。1日あたり14本超。もはや趣味というより生活様式に近い。

Steamが1年間にリリースするタイトル数は年々膨らみ続けており、2024年は約1万9000本、2025年は2万本を超えた。この新規供給の波を、コレクターたちは正確に拾い上げているとみられる。

120位には、17年かけて積み上げた日本人ユーザー

首位の桁外れな数字に目を奪われがちだが、同じくらい示唆的なのは120位の顔ぶれだ。ランキング120位のCheltanは日本人ユーザーで、Steam歴は17年以上、20,005本のゲームを所有する。現行価格の合計は14万8596ドル、日本円でおよそ2360万円。

Cheltanの購入1本あたり平均単価は7.47ドル、およそ1190円。定価ベースの大幅セール品を丁寧に拾ってきた形跡がうかがえる。ここが重要で、コレクターは定価で買っていない。Steamの季節セールやバンドル販売、キーストアのディスカウントを徹底活用することで初めて成立する規模なのだ。

さらに踏み込むと、Cheltanがアクセス可能な21,938本(有料・無料含む)のうち、実際にプレイしたのは8,732本。所有の約4割にとどまる。残り1万3000本以上は、一度も起動されていないデジタル棚の飾りだ。

平均プレイ時間は4.7時間。1時間あたりの「遊びのコスト」は0.92ドル、約146円。時給換算で言えば、Steamのコレクターは世界で最もコスパの良い娯楽消費者とも言える。

所有とは何か、という古い問いが戻ってきた

この話題が単なる奇人列伝で終わらないのは、デジタル流通の時代における「所有」の意味を問い直す事例だからだ。

Steamで買ったゲームは、実のところライセンスの利用権にすぎない。アカウントが失われれば全て消える。Steamの購入画面は昨年から「あなたは製品のライセンスを購入しています」という表示を加えるようになった。75万ドルの"財産"は、Valveというインフラの健全性に100%依存しているわけだ。

それでも人はライブラリを積み上げる。なぜか。Tom's Hardwareの記者自身も記事中で、所有しているのは140本だがセール品をうっかり二重購入することがあると認めている。衝動買いで既存タイトルと重複するのは、ゲーマーなら誰もが経験する小さな敗北だ。

コレクターたちのコレクションは、その敗北を億単位で積み重ねた結果でもある。笑える話に見えて、よく考えると少し怖い。


数字が一生の長さを超えた先に

40,000本を1日8時間ずつ遊び続けて21年。これは個人の可処分時間の限界を超えている。つまりこのコレクションは、最初から全部プレイする前提で積まれていない

「いつか遊ぶかもしれない」という可能性そのものが購入動機になっている。所有することで手に入るのは、ゲームそのものではなく「選択肢を持っている」という感覚に近い。この感覚は何百本、何千本の規模を超えると、個別のタイトルではなく"ライブラリ"という総体への愛着へと変質していく。

コレクターたちが追っているのは、もはやゲームではない。ゲームを所有しているという状態そのものだ。そして我々の多くも、程度の差こそあれ同じ欲求を共有している。120本のライブラリと43,000本のライブラリの違いは、実は本質ではなく量の問題でしかないのかもしれない。

Steamのコレクター現象が示しているのは、技術的な驚異ではなく消費心理の極限だ。デジタル財は無限に積める。そして人の所有欲もまた、上限を知らない。

次のSteamサマーセールで、また1本ぽちっと押してしまいそうなあなたも、すでに小さなコレクターの仲間入りなのかもしれない。


参照元

他参照

関連記事

Read more

DDR5メモリ、日本で4ヶ月ぶり値下がりの兆し

DDR5メモリ、日本で4ヶ月ぶり値下がりの兆し

64GBキットが80,000円を割り込み、日本国内の一部小売で記録的な高値からの反落が始まっている。とはいえ昨年比では依然として数倍の水準で、AIデータセンター需要が支配する構造は何も変わっていない。 4ヶ月ぶりに5万円台前半まで戻した64GBキット 日本市場で異変が起きている。Wccftechが報じたところによれば、4月中旬の時点で複数のDDR5メモリキットが直近4ヶ月で最も低い水準まで価格を落とし、64GB(32GBx2)のDDR5-4800キットが80,000円を下回って販売されている。 ドル換算でおよそ489ドル、前月比で 約21.8% の値下がりだ。世界の大半の地域では同容量のDDR5デスクトップ向けキットが800ドル超で取引されている現状を踏まえれば、これは控えめに言っても「異例の安さ」になる。 ただし喜んでいい話なのかは別問題だ。昨年同時期と比べれば、依然として数倍の価格帯にとどまっている。10%程度の下落で「安い」と感じてしまう感覚そのものが、この一年でメモリ市場がどれほど歪んだかを物語っている。 4ヶ月ぶりという但し書きが示すのは、回復ではなく「束の間の踊