Telegram遮断のインドでVPN需要が急増。裁判所は政府を支持

Telegram遮断のインドでVPN需要が急増。裁判所は政府を支持

NEET再試験を理由にTelegramを遮断したインド。ユーザーは黙って従うどころか、VPNと代替アプリに一斉に流れた。デリー高裁はその遮断を「合法」と認めた。


1日で20万件のVPNダウンロード

インド政府がTelegramの全面遮断を発令した6月16日、VPNアプリのダウンロード数は国内で1日20万8000件に跳ね上がった。直近の平均は13万9000件。49%の急増だ。Appfiguresの集計では、2025年以降でインド最多の1日だった。

なかでもProton VPNの伸びが目立つ。App Storeでのダウンロードは113%増、Google Playでは64%増。ランキングもApp Storeのユーティリティ部門で18位から5位へ、Google Playのツール部門で8位から2位へと駆け上がった。Turbo VPN、NordVPN、ExpressVPNも軒並み30〜85%増を記録している。

ダウンロードだけではない。Proton VPNのゼネラルマネージャー、デヴィッド・ピーターソン(David Peterson)氏によると、遮断当日の夜にはインドからの1時間あたり新規登録が150%増え、翌日には1日の登録数が通常水準の120%増に達した。既にインドで相当数のユーザーを抱える同社にとっても「注目すべき」増加だったという。

カナダのVPNサービス、ウィンドスクライブ(Windscribe)も同様の傾向を確認している。インドからの新規登録が通常の約2倍、iOSアプリの新規ダウンロードは約89%増だった。

代替アプリに殺到、しかしTelegramも使われ続けた

VPNだけではない。ユーザーはTelegramの代わりになるアプリも探し始めた。

Signalは、App Storeで72%増、Google Playで322%増。Viberも216%増。だが最も激しい動きを見せたのは、Telegram APIベースのメッセージアプリiMeだ。Google Playでの1日ダウンロード数が平均約827件から5万900件へ、約61倍に膨れ上がった。Telegramと互換性があるこのアプリが、避難先になった。

Telegram遮断後のアプリダウンロード増加率
アプリApp StoreGoogle Play
VPN
Proton VPN+113%+64%
Turbo VPN+85%+35%
NordVPN+41%
ExpressVPN+31%
代替メッセージアプリ
Signal+72%+322%
Viber+216%
iMe約61倍
※ Appfigures集計。iMeはGoogle Play 1日平均約827件→5万900件

ただし、注目すべきデータがもう一つある。Sensor Towerによれば、遮断発表当日のTelegramのDAU(デイリーアクティブユーザー)はむしろ17%増加した。インドでTelegramのDAUがこれほど増えたのは、2021年のMeta大規模障害以来だという。

矛盾しているようだが、考えてみれば当然のことだ。「使えなくなった」と聞いた人が確認のためにアプリを開く。VPN経由で接続を試みる。結果的にアクティブユーザー数は上がる。Cloudflare Radarのデータも裏付ける。Telegramドメインへのインド国内からのDNSリクエストは遮断後に急増しており、多くのユーザーがアクセスを試み続けていた。ただしDNSリクエストの増加は、実際にアクセスできたことを意味するわけではない。

高裁が出した答え

6月19日、デリー高裁のテジャス・カリア(Tejas Karia)判事はTelegramの異議申し立てを退けた。

判決の骨子は明快だ。IT法第69A条に基づく遮断命令は政府の権限内であり、「比例性の基準を満たしている」「最も制限の少ない手段であり、不均衡とは言えない」とした。Telegram側が主張した「プラットフォーム全体の遮断は69A条の射程外」という論点も退けた。プラットフォームを同法の「情報」の範囲から除外する理由はないという判断だ。

Telegram側は、政府が遮断理由を十分に開示していない、聴聞の手続きが不備だと争ったが、高裁は緊急時の状況を考慮し、手続きは適正に行われたと結論づけた。

既報の通り、デジタル権利団体IFF(Internet Freedom Foundation)は、69A条とブロッキング規則が許すのは特定の「情報」へのアクセス遮断であり、プラットフォーム全体の遮断や機能の設計変更を命じる権限はないと指摘していた。高裁の判決は、この論点を正面から否定したことになる。

遮断は6月22日に解除される予定で、メッセージ編集機能の制限は6月30日まで続く。NEET再試験は6月21日。判決は再試験の2日前に出された。

「遮断すれば漏洩が止まる」という幻想

ユーザーの行動が示した事実は単純だ。アプリを止めても、人の流れは止まらない。

VPNカテゴリ全体でも、ダウンロード数はSensor Towerの集計で前日比10%増加し、直前2週間の減少傾向を一気に反転させた。ウィンドスクライブでグロースオペレーションを担当するレベッカ・ローゼンバーグ(Rebecca Rosenberg)氏は、「特定のアプリの禁止や年齢制限の導入、インターネットアクセスの制限がある地域で見られる一般的な傾向と同じだ」と述べている。

Sensor Towerは、2025年に米国でTikTokがアプリストアから一時的に削除された際にもVPNダウンロードが週単位で40%以上増えたと指摘する。イランやロシアでの規制後にも同じパターンが繰り返されてきた。

今回の遮断の発端は、試験問題の漏洩をTelegram上の詐欺チャンネルが悪用していたことにある。だが既報の通り、漏洩の起点は試験運営の内部だった。CBIの捜査で浮上した科目専門委員が問題を記憶から書き起こし、塾関係者を通じて流出させていた。流通経路の1つを塞いでも、漏洩は別のアプリに移るだけだ。実際、WhatsAppなど他のプラットフォームへの移動が報じられている。

インド政府は再試験に向けて、空軍による問題用紙の空輸、準軍事組織の警備、全会場のCCTV監視という物理的な対策も並行して講じた。こちらは漏洩の物理的経路を断つ合理的な手段だ。一方、1億5000万人のメッセージアプリを6日間止めたことで何が防げたのかは、再試験の結果を見なければ分からない。

高裁は遮断を「一時的」と認定した。だが「試験不正」を理由にプラットフォームを丸ごと遮断できるという司法判断は、6日間の期限が終わっても消えない。

参照元 Telegram ban in India sparks a rush to VPNs, rival apps - TechCrunch

他参照 Delhi High Court upholds temporary ban on Telegram till June 22 - Bar and Bench

関連記事

この記事を共有する