AI生成ヌード画像で大学生を追い詰めた男。連邦起訴へ

AI生成ヌード画像で大学生を追い詰めた男。連邦起訴へ

ニューヨーク在住の21歳の男が、AI生成のヌード画像と偽のSNSアカウントを使ってジョージア州の大学生を3カ月にわたり追い詰めたとして、連邦サイバーストーキング罪で起訴された。写真1枚から偽のヌードを作り、被害者になりすまして人種差別的な発言を拡散する。標的は有名人ではない。ごく普通の大学生だった。


3カ月間の執拗な嫌がらせ

6月3日、ジョージア州北部地区の連邦大陪審がアンソニー・ベルフォード(Anthony Belford)被告をサイバーストーキング1件で起訴した。ベルフォード被告は6月10日に連邦裁判所で罪状認否に出廷している。

起訴状と司法省の発表によると、ベルフォード被告と被害者は2023〜2024年度に同じ大学に通っていた。2024年8月に被害者がジョージア州の大学へ転校すると、ベルフォード被告は転校先を把握した上で嫌がらせを始めたという。

2025年1月から3月にかけて、被告はInstagram、LinkedIn、Reddit、X、Strava、Yahooに被害者を装った偽アカウントを作成。AIで生成したヌード画像を十数件投稿した。被害者が黒人学生やイスラム教徒を差別する発言をしたかのような投稿も捏造し、大学の学生グループに送りつけた。

LinkedInには被害者を騙った偽プロフィールを作り、AI生成のヌード画像をそのまま顔写真に設定した。偽装したYahooメールアカウントでは、被害者の母親にもAI生成のヌード画像を送りつけている。ネット掲示板では別のアカウントを使い、自分が他のSNSでばらまいた偽情報へ利用者を誘導していたとされる。

セオドア・ハーツバーグ(Theodore S. Hertzberg)連邦検事は「偽のSNSやメールアカウントの背後に隠れ、被害者に深刻な苦痛を与え続けた」と述べた。FBIアトランタ支局のマーロ・グラハム(Marlo Graham)特別捜査官は、AI生成画像を使った嫌がらせが現実に重大な結果を招くことを示す事件だと述べている。

連邦サイバーストーキング罪の法定刑は最長5年の禁固刑と最大25万ドル(約4025万円)の罰金。起訴の段階であり、被告は有罪が確定するまで無罪と推定される。

加速する連邦捜査

ベルフォード被告だけではない。2026年に入り、AI生成画像を使ったサイバーストーキングへの連邦起訴が相次いでいる。

4月にはオハイオ州のジェームズ・ストラーラー(James Strahler II)被告が有罪を認めた。スマートフォンに導入した24以上のAIプラットフォームと100以上のウェブベースAIモデルを使い、女性や子どものディープフェイク画像700点以上を生成・頒布していた。罪名はサイバーストーキング、児童性的虐待画像の制作、そしてテイク・イット・ダウン法に基づく「デジタル偽造物の公開」。同法での有罪判決は全米初だった。

5月にはニューヨーク東部地区で、コーネリアス・シャノン(Cornelius Shannon)被告とアルトゥーロ・エルナンデス(Arturo Hernandez)被告が同法違反で逮捕された。両被告は有名人を含む計140人前後の被害者のディープフェイク画像・動画を大量に投稿し、閲覧数は数百万回に達していたとされる。

ミシガン州では1月、ジョシュア・スティルマン(Joshua Stilman)被告がサイバーストーキングで有罪を認めた。ソーシャルメディアのインフルエンサーに対し、AI生成のヌード画像を拡散すると脅してメッセージへの返信を強要していた。

2026年 AI偽造画像をめぐる連邦摘発
2026年1月
スティルマン被告が有罪(ミシガン州)
インフルエンサーへのAI偽ヌード拡散脅迫
2026年4月
ストラーラー被告が有罪(オハイオ州)
AI画像700点以上を生成・頒布。テイク・イット・ダウン法初の有罪判決
2026年5月
シャノン、エルナンデス両被告を逮捕(ニューヨーク東部地区)
有名人含む約140人のディープフェイクを大量投稿
2026年6月
ベルフォード被告を起訴(ジョージア州北部地区)
偽SNSとAI偽ヌードで大学生を3カ月間追い詰める

今回のベルフォード被告はテイク・イット・ダウン法ではなく、従来のサイバーストーキング罪(合衆国法典第18編第2261A条)で起訴された。適用法は異なるが、捜査機関の姿勢は共通している。AIで作った偽画像による嫌がらせを、物理的な暴力と同じ重さで追及する。

見えてきた加害のパターン

一連の事件が突きつけているのは、AIがサイバーストーキングの手口を根本的に変えたという現実だ。

以前なら、被害者の実際の写真や個人情報を大量に入手する必要があった。ベルフォード被告の事件では、もはやその必要すらない。公開されている写真1枚があれば、AIがヌード画像を生成する。偽アカウントを複数のプラットフォームに作り、人種差別的な発言と組み合わせれば、被害者の社会的評価まで壊せる。被害者の母親にまで画像を送りつけるのは、本人だけでなく周囲の人間関係ごと崩すためだ。

こうした犯罪の背景には、ヌード化アプリの氾濫がある。AppleのApp Storeには47本、Google Playには55本のヌード化アプリが並び、累計ダウンロード数は7億回を超える。犯罪のインフラがアプリストアに並んでいる。

テイク・イット・ダウン法の成立と最初の有罪判決は、法が追いつき始めた兆候ではある。だがベルフォード被告は同法ではなく、従来のサイバーストーキング罪で起訴された。まだ法が届かない領域がある。画像を「投稿」した行為と、それを使って「人を追い詰めた」行為では、同じAI生成画像をめぐる犯罪でも法的な位置づけが異なる。

日本では、ディープフェイクを直接規制する国レベルの法律は存在しない。2025年10月にAI生成のわいせつ画像を販売した容疑で逮捕者が出ているが、適用されたのはわいせつ物頒布等罪だ。2025年成立のAI法(人工知能関連技術の研究開発及び活用の推進に関する法律)は基本法にとどまり、罰則規定を持たない。テイク・イット・ダウン法のような被害者救済と加害者処罰を一体化した法律は、日本にはまだない。

スマートフォンの中の写真1枚が、誰かの日常を壊す道具になりうる時代だ。被害者は有名人ではなく、ごく普通の大学生だった。

参照元:

米国司法省 ジョージア州北部地区連邦検事局プレスリリース(2026年6月18日)

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