Firefox大規模刷新「Nova」、Mozillaが正式表明
リークから2か月半。Mozillaが「Project Nova」と呼ぶFirefoxの大規模リデザインを公式に認めた。タブの形、配色、設定画面、AI機能の扱いまで踏み込む内容で、Nightlyなら今すぐ試せる。
リークから2か月半。Mozillaが「Project Nova」と呼ぶFirefoxの大規模リデザインを公式に認めた。タブの形、配色、設定画面、AI機能の扱いまで踏み込む内容で、Nightlyなら今すぐ試せる。
Mozillaが「Project Nova」を公式に表明
MozillaがFirefoxの次世代デザイン「Project Nova」を公式に表明した。Firefoxの公式ブログで、UXチームが直々にプロジェクトの存在と方向性を明らかにしている。

ProtonがFirefox 89と共に登場したのが2021年6月。そこから約5年、Firefoxの見た目はほとんど変わっていない。今回の更新は、その5年分の不満をまとめて引き受ける作業になる。
3月にはドイツのウェブ開発者がリークしたモックアップが先に世に出ていたが、Mozilla側はその時点で沈黙していた。今回の公式投稿で「Nova」というコードネームと、丸みを帯びたタブ、紫を基調にした配色、刷新された設定画面が、すべて本物だと裏付けられた。
「Novaは新しい星のように見えるが、既存の物質から生まれる。置き換えではなく、刷新だ」
UXチームはブログでそう書いている。「年内に正式リリース予定だが、その時には単に Firefox と呼んでほしい」という言い回しが、プロジェクトに対する力の入れようをよく表している。
プライバシーを前面に出す設計変更
Novaの設計思想で最初に来るのが、プライバシー機能の可視化だ。

無料の内蔵VPN、プライベートブラウジング、トラッキング保護といった機能は以前から存在していた。ただ、メニューの奥に隠れていて、ユーザー自身が掘り起こさなければ使えない状態が続いていた。Novaではこれを表に引き出す。
設定画面も全面的に書き直す。AI関連機能の完全オフを1か所のトグルで完結させ、専門用語を平易な日本語(英語版では「plainer language」)に置き換える。「強化型トラッキング保護」の設定も、保護とサイト互換性のバランスをユーザー側で調整できるようにする。
AIをめぐる扱いは興味深い。MozillaはAI機能の搭載を進めているが、同時にそれを丸ごと無効化できる経路を最初から組み込んでいる。Firefoxを選ぶ層がAIに警戒的だと、Mozilla自身が誰よりも分かっているからだろう。
速度の話、9%の意味
Novaの紹介で目を引く数字が一つある。「過去1年間で、ページの主要コンテンツの読み込み速度を9%改善した」というものだ。
9%は派手な数字ではない。ただ、Chromiumベースのブラウザが性能で先行する2026年の市場で、Firefoxが速度面でも追いつこうとしている姿勢を示す指標にはなる。
トラッキング遮断がそのまま読み込み高速化につながる、というMozillaの主張も筋が通っている。広告とトラッカーが読み込みを遅らせているのは、ベンチマークでも繰り返し示されてきた事実だ。
ワークフロー側では、タブグループ、分割表示、垂直タブへのアクセスが改善される。

そして「コンパクトモードの復活」がアナウンスされた。ProtonでFirefox 89からカスタマイズパネル経由では選べなくなり、about:configのbrowser.compactmode.showを有効にする裏技でしか使えなくなっていた機能だ。「ユーザーから戻してほしいと言われたから戻す」とMozillaは明記している。5年越しの方針転換になる。
火を意識した配色、丸みを帯びたタブ
ビジュアル面では、Mozillaは「火の感触に着想を得た」と表現している。アクティブなタブの周囲に光が灯るような表現、深い紫から温かみのある色合いまでを揃えたパレット、これがNovaの基調になる。

具体的な変更点を整理すると、こうなる。
- タブの形状が柔らかくなり、アクティブなタブに微妙なグラデーションが加わる
- パネル、メニュー、設定、操作系のコンポーネントが角丸で統一される
- アイコンがライト/ダーク両テーマでより整った印象になるよう刷新される
- インターフェース全体の余白が再調整される
- 配色パレットが紫系を基調に温かみのある方向へ振られる
Mozillaは「現代的だが汎用的ではない、温かいが正確、表現豊かだがウェブそのものより主張しない」という方向を狙ったとしている。文章のトーンも「より直接的で、人間味があり、時に遊び心や情熱を見せる」方向に書き換えていくという。
ブラウザのコピー文面まで設計対象に含めてくる例は珍しい。Novaが「UIだけの刷新」で済まないことを示す部分でもある。
モバイルとデスクトップを揃える
Novaの主役はデスクトップだが、モバイルにも同じデザイン言語を広げる。共通の色、アイコン、コピー、デザイン基盤を揃えることで、デバイスをまたいでもFirefoxらしさが保たれる状態を目指す。

カスタマイズ性についてもMozillaは強く出ている。新しいテーマと壁紙が追加され、将来的にはタブの形やコンポーネントの見た目を、ユーザーが自分でコントロールできるようにする方向だという。
アクセシビリティは、コントラスト、可読性、フォーカス状態、キーボード操作、タップ領域のサイズ、システム設定、視覚的快適性、テーマ間での挙動まで含めて、設計の中心に据える。
ダークモードを単なる好みではなく「既定の環境」として使う層への配慮も明記された。読みやすさや疲れにくさを優先する人にとって、テーマ周りの作り込みが薄いブラウザは選択肢から外れる。Mozillaはそこを認識している。
Nightlyで試す方法
実際にNovaを今すぐ触りたい場合の手順は、Mozilla公式ではなく外部メディアでまとめられている。
最新のNightlyビルドを入手し、アドレスバーにabout:configと入力。browser.nova.enabledという設定項目を追加し、値をtrueにしてFirefoxを再起動する。これでNovaの一部UIが有効になる。
ただし、これはあくまでNightlyの実験段階の機能だ。Mozilla自身が「不安定な可能性がある」と明示している。普段使いのプロファイルで試すのは避けるのが無難だろう。
Firefoxにとっての4度目のリデザイン
歴史を振り返ると、Firefoxの大規模リデザインは過去にも繰り返されてきた。2014年のAustralis、2017年のPhoton、2021年のProton、そして今回のNovaという流れになる。
過去のリデザインは、ユーザー数の減少を止められなかった。
これは事実として書いておく必要がある。MozillaのFirefox Public Data Reportが示すデスクトップ月間アクティブユーザー数は、Photonが投入された2017年の約3億1300万人から、2022年には約2億400万人まで落ちた。デザイン刷新は、減少カーブを直接押し戻す力にはならなかった。
ただ、Novaが目指しているのは「離脱を止める」ことではなく、「残っている層をつなぎ止める」ことに見える。AIの完全オフ機能、コンパクトモードの復活、設定画面の透明化。これらは新規ユーザー獲得のためというより、Firefoxを使い続けている層が静かに離れていく流れを食い止めるための設計だ。
Nightlyの段階から触れる状態でNovaを公開した判断には、既存ユーザーとの関係を再構築したいという意図がにじむ。火に着想を得た配色は、新興ブラウザのような派手さではなく、長く灯り続ける明かりの色だ。
参照元
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