トランプ氏、テック企業トップからの媚びメッセージを見せびらかし嘲笑
マーク・ザッカーバーグ氏とジェフ・ベゾス氏は、2024年の大統領選でトランプ氏が勝利した後、こぞって歩み寄りを見せた。ファクトチェックの廃止、就任式への100万ドル寄付、大統領候補推薦の取りやめ。それらを受け取った当の本人が、裏でどうしていたか。来週出版される内幕本が記録している。笑っていた。
「テック企業の連中からのメッセージは信じられない」
ニューヨーク・タイムズの記者マギー・ハーバーマン(Maggie Haberman)氏とジョナサン・スワン(Jonathan Swan)氏による新刊「Regime Change: Inside the Imperial Presidency of Donald Trump」が、6月23日にサイモン&シュスターから出版される。約1000件のインタビューに基づく第2期トランプ政権の内幕本だ。
同書によると、トランプ大統領はザッカーバーグ氏やベゾス氏から受け取った媚びへつらうメッセージを周囲に見せ回り、嘲笑していた。トランプ大統領はハーバーマン氏に、テクノロジー企業のトップたちから届いたメッセージは「信じられないものだった」と語っている。
イーロン・マスク氏はそれを「一流の卑屈さ」と評したとされる。
就任式の直前には、友人の前でスマートフォンの着信履歴をスクロールし、直近1時間に電話してきた富裕層の名前を見せびらかしたとも報じられている。かつて距離を置いていたベゾス氏やザッカーバーグ氏の名前が、そこに並んでいた。
ベゾス氏「あそこの人間はひどい。最悪の投資だ」
同書には、ベゾス氏がワシントン・ポストについて語った生々しいエピソードも含まれる。
2024年12月、大統領選に勝利したトランプ氏との非公開ディナーの席で、ベゾス氏はワシントン・ポストの買収を「最悪の投資」と呼んだ。同紙は2024年に1億ドル(当時のレートで約150億円)を超える赤字を計上していた。
ベゾス氏はトランプ氏に対し、スタッフへの不満をぶつけたという。自社の他の事業と違い、新聞社のスタッフは指示に従わないと嘆いた。
トランプ大統領はハーバーマン氏らに、1期目当時はベゾス氏が報道内容を個人的に指示していると信じていたと明かした。そのせいでベゾス氏を嫌っていたが、2期目までにそうではないと知り、考えを改めたという。ベゾス氏もまた報道への不満でトランプ氏に同調し、2人は意外な共感で結ばれた。
ベゾス氏がワシントン・ポストを2億5000万ドルで買収したのは2013年。当時の約束は「読者への責任は変わらない」だった。
それからおよそ12年。何が起きたか。2024年10月、大統領選を前にカマラ・ハリス副大統領への支持表明を直前で中止させた。2025年2月にはオピニオン欄のテーマを「個人の自由」と「自由市場」に限定するよう指示し、担当編集者は抗議の辞任。購読者37万5000人が離れた。
そして2026年2月、全社の約3分の1にあたるスタッフを解雇した。スポーツ部門は事実上閉鎖、書評欄も消え、地方報道の要だったメトロデスクは40人超から十数人に縮小された。
2013年 2億5000万ドルで買収 「読者への責任は変わらない」 2024年 年間赤字1億ドル超 トランプ氏に「最悪の投資」と発言 2024年10月 ハリス氏への推薦を中止 大統領選直前の方針転換 2025年2月 オピニオン欄のテーマを制限 編集者が抗議の辞任。購読者37万5000人離脱 2026年2月 全社の3分の1をレイオフ スポーツ・書評・地方報道を縮小 2026年2月 CEOルイス氏が辞任 レイオフ当日はNFL授賞式に出席 |
レイオフの混乱の最中、CEO兼パブリッシャーのウィル・ルイス氏はサンフランシスコでNFLの授賞式に出席していた。3日後に辞任。「2年間の変革」と自ら評したが、ワシントン・ポスト組合は「偉大なジャーナリズム機関の破壊」と呼んだ。
権力に擦り寄り、権力に笑われる
「彼らは1期目では敵だった。今はみんな友達になりたがっている」とトランプ大統領は複数のインタビューで語っている。「勝てなかったら、ここにいたか?」という問いに、テック企業のトップたちは誰も答えなかったという。
ザッカーバーグ氏はかつて、2021年1月6日の連邦議会襲撃を受けてトランプ氏のアカウントをFacebookとInstagramから停止した。「リスクが大きすぎる」という理由だった。2025年の就任式では最前列に座った。ファクトチェック機能を廃止し、DEIプログラムを終了し、Metaの方針をトランプ政権の意向に寄せていった。ベゾス氏もまた就任基金に100万ドルを寄付し、トランプ氏と繰り返し会食した。
だが同書が浮かび上がらせたのは、そうした努力がどう受け止められていたかだ。トランプ氏にとって、テック企業トップの歩み寄りは「敬意」ではなかった。周囲に見せびらかし、笑い飛ばすネタだった。マスク氏が「一流の卑屈さ」と呼んだ光景がそこにある。
テック企業のトップたちは、自社のプラットフォームと報道機関の方針を権力に合わせた。それは事業を守るための合理的な判断だったかもしれない。だが、その代償として差し出したものを、受け取った側がどう扱っているか。ワシントン・ポストから切り捨てられた数百人の記者たちは、ベゾス氏がトランプ氏の前で自分たちを「ひどい」と呼んでいたことを、この本で知る。
「Regime Change」はホワイトハウスに「高い不安」を引き起こしているという。シチュエーションルームの会話が逐語的に再現されているとの報道もあり、政権関係者の間では録音の存在が疑われている。
来週の出版後、さらに多くのエピソードが明らかになるだろう。擦り寄った側は、その事実が活字になって残ることまでは計算に入れていなかったのだろう。
参照元
他参照
- Fox News - Bezos called Washington Post his worst investment to Trump, book says
- Axios - Trump aides fear Haberman and Swan obtained Situation Room tapes
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