DDR2まで届いたAIの余波。メモリ不足が20年前の規格を直撃
メモリの高騰は続いているが、その連鎖がどこまで広がっているか、気づいている人はまだ少ないかもしれない。今や2003年に登場したDDR2の価格まで急騰している。AIインフラが吸い込んだ生産能力の余波は、現役PCがとうに引退した規格にまで及んでいる。
三大メーカーが手を引いた先で起きていること
サムスン電子(Samsung Electronics)、SKハイニックス、マイクロン(Micron)の三大DRAMメーカーは、AIデータセンター向けのHBM(High Bandwidth Memory)とサーバーDRAMに生産能力を集中させてきた。その結果、DDR4など従来型の製品への割り当てが削られ、調達に困ったメーカーが台湾系サプライヤへと流れ込んでいる。
OEM・ODMは、仕様の「格下げ」に動いた。DDR4を使っていた製品設計をDDR3に置き換え、DDR3で設計されていたものをDDR2に差し替える。安さを求めたわけではない。調達できる部品を探したら、たどり着いた先が20年前の規格だった。
市場調査会社TrendForceが現地時間6月22日に公開したレポートによれば、DDR2の契約価格は2026年第2四半期(4〜6月期)に55〜60%上昇し、第3四半期(7〜9月期)にもさらに35〜40%の上昇が見込まれるという。
第1四半期の時点でも既に大きく上昇しており、2026年を通じた累積で100%に迫る可能性がある。
DDR2の残り二社が正反対の戦略を取る
DDR2を今も製造している主要サプライヤは、ウィンボンド(Winbond)とESMTの二社だ。しかし両社の戦略は正反対に向かっている。
ウィンボンドはDDR2の生産を段階的に縮小し、DDR3やDDR4、LPDDR4といった利益率の高い製品へ生産能力を移している。一方のESMTは、ウィンボンドが去った穴を埋めようと、ファウンドリのPSMCに対するウェハー割り当てを使ってDDR2の増産を図っている。ただしウィンボンドの撤退ペースにESMTの増産が追いつくかどうかは、見通せない。
DDR2は現在のPC市場ではほぼ使われていない。影響を受けるのは組み込みシステム、産業機器、自動車向け電子部品、ネットワーク機器など、設計変更のコストが高く旧世代の部品を使い続けるしかない用途だ。これらの機器を作るメーカーに、今から設計を変える余裕はほとんどない。
最初の企業が倒れた
このメモリ不足が企業の存続を脅かしていることは、すでに現実になっている。アクションカメラメーカーのGoPro(ゴープロ)は2026年6月1日、経営の継続に重大な疑義があるとSECへの開示文書で認めた。デフォルト(債務不履行)の瀬戸際にある。
同社の開示によれば、2026年3月最終週にサプライヤからメモリ価格の80〜115%値上げを通告され、4月には供給量の削減も通知された。Q1の売上高は前年比26%減となり、融資契約の条件(コベナンツ)を満たせなくなるリスクが現実化している。キャッシュは4970万ドルにすぎず、融資残高は約1億3500万ドルに上る。GoPro側は事業売却や一部資産の売却、防衛・宇宙分野への進出など複数の選択肢を検討中としているが、先行きはまだ見えていない。
GoPro固有の苦境であることも事実だ。スマートフォンとの競争、DJIやInsta360といった競合の台頭により、同社は2024年だけで4億3230万ドルの純損失を計上していた。メモリ高騰が直接の原因になったが、その前から財務的な余力は限られていた。ただ、DRAM依存で利益率の薄い消費者向けデバイスメーカーが、同じリスクにさらされているという事実は変わらない。
供給の回復は当面来ない
解消の目処は遠い。サムスン電子は2026年4月の決算で、少なくとも2027年までメモリ全体で大幅な不足が続くという見通しを示した。SKハイニックス会長のチェ・テウォン氏はComputex 2026でAI関連のメモリ需要圧力が2030年頃まで続く可能性があると述べている。
SKハイニックスは今後5年でDRAMウェハー生産能力を倍増させる計画を示しており、京畿道の用仁(ヨンイン)半導体クラスターでの大規模増設を進めている。しかし設備投資から量産立ち上げには数年かかる。マイクロンのアイダホ州新ファブがウェハー生産を開始するのは2027年半ばの予定で、大幅な供給増が見込める段階ではない。TrendForceが更新している最新のDRAM価格データも、Q2以降のPC向けDRAMは上昇が続くとしている。
AI集中投資が生み出した歪みは、DDR4、DDR3を経てDDR2にまで波及した。その余波を最初に受けているのは、産業機器や組み込みシステムを作るメーカー、そして薄い利益率でDRAMに頼ってきた消費者向けデバイスメーカーだ。
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