Steam Machine、1,049ドルから。メモリ危機が値札に刻まれた
Valveがようやく値札を見せた。Steam Machineの512GBモデルが1,049ドル、2TBモデルが1,349ドル。現地時間6月22日、Valveは予約ページの公開と同時に価格を明かした。初回出荷は6月29日から順次始まる。日本の価格はKOMODOからの発表待ちだが、1ドル161円換算で512GBモデルが約16万9,000円、2TBモデルは約21万7,000円になる。
当初目標から大きくずれた値札
Valve自身が認めた。公式ブログで、部品の調達価格が当初の想定から大幅にずれたことを説明している。
Steam Machine, like our other hardware products, is made up of many components that we source from manufacturers around the world. The price at which we sell our hardware is a direct result of the cost of these components.
Steam Machineは世界中のメーカーから調達した部品で構成されており、販売価格はその部品コストがそのまま反映されたものだ
部品調達が始まった2023年の時点では、見通しは明るかった。PC向けハードウェアは時間とともに安くなる。過去何年ものデータがそう教えていた。だがこの1年あまりで前提が崩れた。RAMとストレージの価格が跳ね上がったのだ。Valveのエンジニア、ピエール=ルー・グリフェ(Pierre-Loup Griffais)氏の説明はこうだ。設計時の前提は2年前のメモリ・ストレージ価格だった、狙っていた価格帯にはもういない、ただしこれはSteam Machine固有の話ではなく市場全体が同じ状況にある、と。
背景にあるのは、AIデータセンターによるDRAM需要の爆発だ。SamsungやSK hynixがAIサーバー向けの高利益率メモリに生産能力を振り向け、民生品向けのDDR5やGDDR6の供給が圧迫された。業界の分析では、DRAMの契約価格は前年比で170%以上上昇したとされる。Steam Machineが搭載する16GB DDR5と8GB GDDR6の両方が、この値上がりの直撃を受けている。
価格だけではない。「いかなる値段でも部品が手に入らない時期があった」とValveは書いている。生産台数にも影響が出ており、発売時の在庫は限られる。
4モデル、コントローラーは別売り
ラインナップは4構成。512GBと2TB、それぞれにSteamコントローラー同梱版がある。
512GBモデルが1,049ドル、コントローラー同梱で1,128ドル。2TBモデルは1,349ドル、同梱版が1,428ドル。2TBモデルには赤いファブリックとウォールナット素材のフェイスプレートが2枚追加で付属する。
注意すべきは、基本構成にSteamコントローラーが含まれないこと。5月4日に99ドルで発売されたSteamコントローラーは30分足らずで完売し、今から予約しても届くのは2027年になる。単体で購入済みでなければ、事実上コントローラー同梱版を選ぶか、予約待ちに並ぶかの二択だ。
| 本体のみ | コントローラー同梱 | |
|---|---|---|
| 512GB | $1,049 | $1,128 |
| 2TB | $1,349 | $1,428 |
ハードウェアの中身は昨年11月の発表時から変わっていない。AMD Zen 4の6コア12スレッドCPU、RDNA 3の28コンピュートユニットGPU、16GB DDR5 + 8GB GDDR6 VRAM、512GBまたは2TBのNVMe SSD。Wi-Fi 6E、Bluetooth 5.3、ギガビットイーサネット。HDMI 2.0とDisplayPort 1.4を備え、一辺約160mmのキューブ筐体にすべてを収めている。SSDとメモリは換装可能だが、メモリにアクセスするにはヒートシンク全体を取り外す必要がある。
予約は抽選制、先着順ではない
Steamコントローラー発売時の転売騒動を踏まえ、Valveは予約の仕組みを変えた。
太平洋時間6月25日午前10時までに購入希望モデルの登録を済ませる。登録にはSteamアカウントが良好な状態で、2026年4月27日以前にSteamでの購入履歴が1件以上必要だ。締め切り後、Valveは登録者リストをランダムに並べ替える。先着順ではない。ボットもリフレッシュ連打も意味を持たない。
当選したら72時間以内に購入を完了する。期限を過ぎれば次の人に権利が移る。最初の購入案内メールは6月29日から順次送信され、初回出荷も同日開始。登録が間に合わなかった場合はウェイトリストに回されるが、辞退やキャンセルが出れば繰り上がる。
同一世帯からの重複登録対策もある。アカウント情報と購入履歴を照合し、同じ人物が複数経路で登録していないかを確認する。最大4モデルまで登録できるが、複数モデルに当選した場合はもっとも上位のモデルが優先され、残りはリストから外される。
2026年、ゲーミングハードウェアに何が起きているか
Steam Machineだけが高いわけではない。
Steam Deck OLEDは2026年に入って2度値上げされた。3月に各モデル1万5,000円アップ。5月末にはさらに512GBが約3万8,000円、1TBが約5万3,000円の上乗せ。日本での現行価格は512GBが13万7,980円、1TBが16万7,980円。2024年の発売時から数えると、ほぼ倍の金額だ。
PS5も例外ではない。2026年4月の4度目の値上げで通常版は9万7,980円、PS5 Proは13万7,980円に達した。2020年の発売時は5万4,978円だったから、約45%の上昇になる。唯一、日本語専用デジタルエディションだけが5万5,000円に据え置かれている。
AIインフラのメモリ需要が民生品を圧迫する構造は、2026年いっぱい続くと見られている。AI向けだけでグローバルDRAM生産の約20%を消費するという試算もある。ゲーム機も携帯ゲーミングPCも、この構造の中で値段が決まる。
Valveはハードウェアを赤字で売らない。ソニーやMicrosoftはコンソール1台あたり100〜200ドルの逆ザヤで出荷し、ゲーム販売やサブスクリプション収益で回収する。Valveのグリフェ氏は「部品コストをそのまま反映する」と明言している。Steam Machineは「ゲーム機の値段」ではなく「PCの値段」で棚に並ぶ。
日本はKOMODO経由、価格と発売日は未定
日本、韓国、台湾、香港ではKOMODOが正規ディストリビューターを務める。ただし本稿執筆時点で日本向けの価格・発売日は未発表だ。Steam Deck OLEDの実績を見ると、KOMODO経由では為替差と物流コスト分がさらに上乗せされる。512GBの単純換算が約16万9,000円であっても、KOMODOの販売価格がそれより安くなる根拠はない。
Steam Deck OLED 512GBの日本価格は、すでに13万7,980円だ。携帯機でこの価格である。据え置きのSteam Machineが同水準に収まるとは考えにくい。
海外のような抽選予約制がそのまま適用されるかもKOMODOの発表を待つ必要がある。Steamコントローラーの日本販売ではKOMODO STATIONでの独自告知と販売が行われており、Steam Machineも同じ流れになる可能性が高い。
1,049ドルで何を買うのか
数字だけ見れば高い。PS5通常版の約1.8倍。PS5 Proよりも高い。
だが数字だけでは話が終わらない。Steam Machineが提供するのは、Steamライブラリ全体へのアクセスだ。すでに購入済みのゲームは追加課金なしで遊べる。オンラインプレイにPS PlusやXbox Game Passのような月額料金はかからない。セールのたびに積み上がった未プレイのライブラリが、テレビの前で待っている。
SteamOS 3はSteam Deckで成熟を重ねてきた。スリープからの即復帰、コントローラー前提のUI、Proton互換レイヤーによるWindowsゲームの動作。コンソールのように電源を入れてすぐ遊べる体験が、PCの中身で成り立っている。
ただし、現時点で弱点も見えている。HDMI 2.0止まりで2.1に対応していない。FSRを使った4K/60fpsが売り文句だが、ネイティブ4Kではない。カーネルレベルのアンチチートへの対応も完全ではなく、一部の対戦タイトルで制約が残る。
1,049ドルは、Valveが支払った部品代の鏡だ。高いか安いかは、テレビの前にあるSteamライブラリの厚みで決まる。積みゲーが100本を超えている人にとって、この箱は「追加投資なしで遊べるゲーム機」になりうる。ライブラリが薄ければ、9万7,980円のPS5通常版のほうが合理的だろう。
Valveが見せた値札は、AIが変えてしまった半導体市場のいまをそのまま映している。ゲーマーにとって不愉快な数字だ。だが、Steamコントローラーが30分で蒸発したのと同じことがこの箱でも起きるのか。6月25日の登録締め切りが、その答えを出す。
参照元:Steam Machine launches today!(Valve公式ブログ)
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