スマホ崩落でAMDがTSMC旧世代を埋める
QualcommとMediaTekがTSMCの4nm/5nmラインを返上した。空いた枠にAMDが滑り込み、Zen 4世代のGenoaを大量出荷している。リサ・スーがQ1決算で語った「ユニット駆動の成長」の正体は、これだった。
メモリ高騰がファウンドリの地図を書き換えた
スマートフォン市場が冷え込んでいる。原因は需要の飽和ではなく、部品コストの暴騰だ。
DRAMとNANDの価格が記録的な上昇を続け、エントリー機の部品原価は劇的に変わった。スマホのBOM(部品表)構成比は、こう変化している。
エントリー機ではDRAMが35%、NANDが19%を占め、合計でBOMの54%にまで達する。
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54%
メモリ計
DRAM35%
NAND19%
その他46%
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メモリが半分を超える。これはもはや「電子部品が高くなった」というレベルの話ではなく、スマホという製品の経済構造そのものが歪んでいる状態だ。
QualcommとMediaTekがTSMCに発注していた4nm/5nmの製造枠を一部返上したのは、この需要崩壊への対応である。2万から3万枚のウェハが宙に浮き、これは1500万から2000万個のモバイルチップに相当する。供給キャパシティとしては小さくないが、行き先のない枠だった。
そこに手を伸ばしたのがAMDだ。
リサ・スーが語った「ユニット駆動」の中身
5月5日のAMD Q1 2026決算カンファレンスコールで、リサ・スー(Lisa Su)は興味深い言い回しをしている。サーバーCPU事業の成長について、価格上昇よりも出荷台数の増加が主因だと述べたのだ。
「ハイエンドのTurinファミリーだけでなく、Genoa──Zenコアファミリーの製品も大量に出荷している」
Turinは最新のZen 5世代EPYCで、TSMC N4を使う。一方、Genoaは2世代前のZen 4で、TSMC 5nmで製造される。最新世代と旧世代を並列出荷しているのがAMDの現状だ。
通常、半導体メーカーは新製品が出れば旧製品の比率を減らしていく。それが効率的だからだ。だがAMDは逆を行っている。リサ・スー本人が「Milanの出荷も続いているが、それは減ってきている」と前置きした上で、Genoaを「非常に強い」と表現した。
なぜか。新しいプロセスの製造枠が逼迫しているからだ。3nmはApple、Qualcomm、NVIDIAが押さえ、AI関連のHBMがメモリ製造装置を奪い合う中で、5nmは「比較的余裕のある旧世代」になった。Qualcommらが手放した枠は、結果としてAMDが拾える形になった。
半導体業界の「ドミノ」が見えてきた
ここで起きているのは、単なる「AMDの戦略勝ち」ではない。一連の出来事を並べると、別の構図が浮かぶ。
ハイパースケーラがAI向けのHBMを大量発注する。 メモリメーカーがHBM生産を優先し、LPDDRやNANDの供給を絞る。 スマホ向けメモリが値上がりし、エントリー〜ミッドレンジのスマホ需要が崩落する。 QualcommとMediaTekがTSMC 4nm/5nmの発注を削る。 AMDが空いた枠でZen 4 Genoaを増産し、データセンター需要に応える。
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1
ハイパースケーラ
AI向けにHBMを大量発注
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2
メモリメーカー
HBM生産を優先しLPDDR・NAND供給を絞る
▼
3
スマホ市場
メモリ価格高騰でエントリー〜ミッドレンジの需要が崩落
▼
4
Qualcomm/MediaTek
TSMC 4nm/5nmへの発注を削減(2万〜3万枚のウェハ枠)
▼
5
AMD
空いた枠でZen 4世代Genoaを増産しデータセンター需要に応える
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つまりAI需要の膨張が、巡り巡ってAMDのサーバーCPU出荷を押し上げている。直接の関係がなさそうな2つの市場が、ファウンドリと メモリという2つのボトルネックを通じて連結されているわけだ。
リサ・スーは決算でこうも述べている。
「サプライチェーンが逼迫しており、コストも上昇している。我々は顧客とその一部を分かち合っている」
価格転嫁を「分かち合う(sharing)」と表現するあたりに、現状認識が滲んでいる。AMDも自社のコスト上昇を吸収しきれず、データセンター顧客に値上げを通している。それでもユニットは伸び続けている。
この恩恵がいつまで続くかは、別の話
TSMCの旧世代枠の余剰は永続しない。スマホ市場が回復すればQualcommとMediaTekは戻ってくるし、AMD自身もZen 5、Zen 6への移行で5nmからは離れていく。今のGenoa増産は、需給の「踊り場」で生まれた一時的な現象に近い。
それでも、この瞬間にAMDがどれだけ出荷を伸ばせるかが、データセンターCPU市場での立ち位置を決めることになる。Intelが18Aの立ち上げで苦戦している間に、AMDはZen 4を「使える在庫」として最大限に活用している。技術的な世代の優劣ではなく、製造枠を握れたかどうかで勝負が決まる局面だ。
X上で半導体アナリストのJukan(@jukan05)は、リサ・スーの発言をAMDの旧プロセス活用説の裏付けだと指摘している。
決算の数字が、市場のドミノ倒しの最後のピースとして公式に確認されたとも言える。
スマホが売れないことが、サーバーCPUの増産につながり、それを支えるのは2世代前のチップ。半導体業界の今を理解するのに、これほど象徴的な構図はない。次の四半期には、別のドミノが倒れているかもしれない。
参照元
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