岬 徹

テクノロジー分野を中心に2024年からYouTubeで約3,000本の動画を制作。登録者4万5千人超、Xフォロワー1万人超、noteフォロワー千人超。AI、半導体、PC、ゲーム業界について、一次資料やデータを基に分析を続ける。

岬 徹
Windows 11、発表から5年。「未完成」のまま7割のPCに届いた現実

Windows

Windows 11、発表から5年。「未完成」のまま7割のPCに届いた現実

2021年6月24日に発表され、同年10月5日に出荷されたWindows 11が5周年を迎えた。批判と不満を浴び続けながら、このOSはいつの間にかWindowsの主流になっている。 「最後のWindows」の後継として 5年前の6月24日、Microsoftは「あなたの好きなものに近づけるOS」としてWindows 11を発表した。Windows 10は「最後のWindows」になるはずだった。6年以上にわたるWindowsバージョン間の空白は、Windows XPからVistaへの移行期を超え、同社の歴史上最長となった。 発表の約1週間前にプレビュービルドが流出し、世界中のユーザーが正式発表を待たずにWindows 11に触れた。中央寄せのタスクバー、丸みを帯びたウィンドウ、刷新されたスタートメニュー。見た目は新しかった。だが触った瞬間に気づく違和感もあった。タスクバーは動かせない。右クリックメニューは二重構造になり、従来の操作にワンクリック余計にかかる。 そしてTPM 2.0とセキュアブートの必須化。まだ十分に使えるPCが、ハードウェア要件を満たさないという理由だけでアッ

KVM ARM64新機能ゼロ。AIパッチの代償

Linux

KVM ARM64新機能ゼロ。AIパッチの代償

Linux 7.2のマージウィンドウに投入されたKVMの変更一覧には、奇妙な空白がある。Intel向けもAMD向けもs390もRISC-Vも新機能を載せているのに、ARM64だけが「新機能なし」で終わった。 2026年6月18日、KVMメンテナーのパオロ・ボンジーニ(Paolo Bonzini)氏がリーナス・トーバルズ氏へプルリクエストを送った。そこにはKVM/arm64メンテナーのマルク・ザンジエ(Marc Zyngier)氏のコメントが引用されている。今回は純粋に修正だけだと前置きし、AI生成の修正パッチが大量に流れ込んだせいで新機能のレビューに手が回らなかったと説明している。 修正に埋もれたマージウィンドウ KVMに限った話ではない。ARM64アーキテクチャ全体のメンテナーであるウィル・ディーコン(Will Deacon)氏は自身のプルリクエストの冒頭で、AIツールの台頭が機能開発のペースを落としたと認め、Sashiko(LLMベースのコードレビューシステム)による追加のレビューラウンドもあって、いくつかの機能が次のサイクルに先送りになったと書いている。 KVM ARM

FSR 4.1ドライバのWindows 10不具合、翌日に修正版が出た

GPU

FSR 4.1ドライバのWindows 10不具合、翌日に修正版が出た

Adrenalin 26.6.2のWindows 10でRadeon GPUが認識不能になる不具合に、AMDが翌日修正版を出した。WHQL版も来週予告されている。対応は早かったが、サポート終了済みのOSで検証が最初に抜けたという事実は残る。 翌日の修正 Adrenalin 26.6.2をWindows 10にインストールするとGPUが認識不能になる不具合は、公開翌日の現地時間6月23日にAMDが認めた。26.6.1へのロールバックが推奨され、Windows 10ユーザーはFSR 4.1を含む新機能に手が届かない状態が続いていた。 その状態は1日で終わった。現地時間6月24日、AMDはAdrenalin 26.6.3 Hotfix Previewを公開した。修正内容は1件だけ。Adrenalin 26.6.2をWindows 10のRadeon RX 7000シリーズ以降にインストールする際の断続的なインストール問題、それだけだ。新機能もゲーム対応もない。緊急パッチだ。 公式アカウントは、来週にWHQL認定版もリリースすると予告している。 対応の速さと、抜け落ちた検証 W

中国360が「中国版Mythos」を発表 規制後に派生AIセキュリティ製品が拡大

AI

中国360が「中国版Mythos」を発表 規制後に派生AIセキュリティ製品が拡大

Fable 5とMythos 5が米国政府の輸出管理で全面停止してから12日。中国のサイバーセキュリティ大手がMythos対抗を名乗り出た。360 Security Technology(三六零安全科技、上交所:601360)が、Mythosに匹敵すると自称するAIツールを正式に発表した。 「倚天屠龍」という名乗り 360の創業者ジョウ・ホンイー(Zhou Hongyi)氏が北京のISC.AI 2026カンファレンスで披露したのは、2つのAIセキュリティツールだ。総称は「倚天屠龍」。金庸の武侠小説『倚天屠龍記』(いてんとりゅうき)から取った名前で、原義は「天の剣と龍を屠る刀」。 脆弱性の自動発見を担う「屠龍鋒」(Tulongfeng)を、ジョウ氏は自ら「中国版Mythos」と呼んだ。もう一つの「倚天鎮」(Yitianzhen)は、サイバー防御とインシデント対応の自動化に特化している。 ジョウ氏は中国の最高政治諮問機関である全国政治協商会議の委員でもある。360が公開した講演録によれば、AIによる脆弱性発見を「国家戦略資産」と位置づけ、インフラ防御と攻撃の両面で使えると述べた。

TSMCの値上げ、7nm含む全先端ノードに拡大

半導体

TSMCの値上げ、7nm含む全先端ノードに拡大

3nm限定と見られていた値上げ交渉が、7nmまで含む全先端ノードに広がった。5〜10%の引き上げはTSMCのウェハー売上の74%に及ぶ。AI需要の逼迫と過去最高の粗利益率66.2%を背景に、NVIDIA・AMD・Apple・Qualcommなど主要顧客の製造コストが上昇する。メモリ高騰と重なり、GPU・CPU・スマートフォンの価格に反映される。 3nm限定ではなかった TSMCが先端プロセスの値上げを進めている。年初に3〜10%の引き上げ、5月下旬には3nmで最大15%の追加値上げ。ここまでは台湾メディアが伝えてきた通りで、対象は3nmが中心だった。 6月23日の独立メディア報道で、景色が変わった。TSMCが顧客に伝えたのは、「すべての先端ノード」で値上げに備えよというものだった。7nmまで含む。幅は5〜10%。一部ではすでに適用が始まっており、まだ適用されていない顧客にも高いコスト構造を購買計画に織り込むよう指示が出ている。 範囲の広がりが重い。2026年第1四半期の決算では、3nmがウェハー売上の25%、5nmが36%、7nmが13%。TSMCが「先端技術」と定義する7n

Steam Machine、日本で即日完売。予約なし販売の功罪

ゲーム

Steam Machine、日本で即日完売。予約なし販売の功罪

18万9980円のゲーム機が、予告なく棚に並び、予告なく消えた。6月23日、Valveの据え置き型ゲーミングPC「Steam Machine」が日本の正規代理店KOMODO STATIONで販売を開始し、全4モデルが即日完売した。北米やヨーロッパでValveが抽選予約制を導入する一方、日本・台湾・香港には予約列すら用意されなかった。 全モデル完売、Waiting Roomだけが残った KOMODO STATIONの商品ページには現在、「売り切れ」の文字が並ぶ。アクセスが殺到し、商品ページ自体がWaiting Room(待機画面)に切り替わった時間帯もあった。512GBモデル(18万9980円)、512GB+Steam Controllerバンドル(20万4980円)、2TBモデル(24万9980円)、2TB+Steam Controllerバンドル(26万4980円)。すべて税込、すべて完売だ。 北米では事情が違う。Valveは太平洋時間6月25日午前10時を締切にサインアップを受け付け、その後一斉に抽選を行う。当選者には6月29日から順次購入メールが届く。1世帯1台の制限があ

GTA VI予約が明日開始。通常版80ドル、箱にディスクはない

ゲーム

GTA VI予約が明日開始。通常版80ドル、箱にディスクはない

『グランド・セフト・オートVI』の価格がようやく確定した。通常版79.99ドル、アルティメット・エディション99.99ドル。予約は明日6月25日の午前0時から始まる。そして箱を買っても、中に入っているのはダウンロードコードだけだ。 80ドルの意味 ロックスター・ゲームスの親会社テイクツー・インタラクティブが6月24日にプレスリリースを出した。通常版は79.99ドル(約1万2900円)。アルティメット・エディションは99.99ドル(約1万6100円)。対応プラットフォームはPlayStation 5とXbox Series X|Sの2機種。PC版の発表は今回もない。 AAAゲームの業界標準価格は69.99ドルだった。2020年にPS5世代が始まったとき、テイクツーはNBA 2K21で真っ先にこの70ドルラインを押し上げた会社でもある。そして今、同じテイクツーが自社最大のタイトルで80ドルの壁を越えた。先にマリオカート ワールドが同じ79.99ドルで出ているが、サードパーティのフルプライスタイトルとしてはGTA VIが最初の大物になる。 Bank of Americaのアナリスト

PS6の社内資料にフレーム補間の記載。4K120fpsへの道筋

PlayStation

PS6の社内資料にフレーム補間の記載。4K120fpsへの道筋

ソニーのPS6に関するリーク情報がまた一つ積み上がった。今度は内部のハードウェア戦略文書に、フレーム補間技術の記載が見つかったという。研究段階の話ではない。4K120fpsという次世代の看板を、AIでどう実現するか。その設計判断の痕跡だ。 VFIという三文字 リーカーのMoore's Law Is Deadが、自身のポッドキャスト番組で、以前入手したPS6関連の社内文書を読み返した際に気づいた記載として明かした。文書にはVFI(Video Frame Interpolation)、すなわちフレーム補間の記述がある。 VFIは、GPUが実際にレンダリングしたフレームの間にAIが中間フレームを生成し、見かけ上のフレームレートを引き上げる技術だ。PC市場ではNVIDIAのDLSS 4やAMDのFSR 4がすでに実用化している。コンソールでの本格採用はまだない。 文書はPS5 Pro発売前に作成されたものとされ、ソニーがその後どの仕様を最終決定したかは不明だとリーカー自身が留保している。だが記載の中身は具体的だ。 主要テーマ:コンソールはコスト制約がある。ML/AIによるSR(超解

KDDIメール基盤に不正アクセス。最大1422万件漏洩の疑い

セキュリティ

KDDIメール基盤に不正アクセス。最大1422万件漏洩の疑い

@niftyメール、BIGLOBEメール、J:COM NET。名前は違っても、裏で動いていたのは同じKDDIの共通基盤だった。その基盤が破られ、最大1422万件のメールアドレスとパスワードが外部に漏れた可能性がある。ニフティは6月25日23時59分をパスワード変更の期限に設定しており、対象ユーザーは今すぐ動く必要がある。 何が起きたか KDDIは6月23日、ISP事業者向けに提供しているメールシステムが不正アクセスを受けたと発表した。検知は6月17日。同日中にシステムの改修と被疑箇所の特定、技術的な防御措置を実施している。 漏洩した可能性があるのは、メールボックスに紐づくメールアドレスとパスワード、最大1422万件。パスワードにはハッシュ化・暗号化されたものも含まれるが、すべてがそうだとはKDDIは明言していない。解約済みのアカウントや休眠アカウントもこの数字に入る。原因は、メールシステムで利用していた第三者製ソフトウェアの脆弱性を突かれたこと。ゼロデイだったかどうか、KDDIは明かしていない。 メール本文の流出について、KDDIの公式発表では触れていない。ただ、調査は継続中

「ゲームは高すぎる」Xbox CEOが語る理想とリセットの現実

ゲーム

「ゲームは高すぎる」Xbox CEOが語る理想とリセットの現実

事業リセットを宣言し、大規模な人員削減が数日後に迫るXbox。そのCEOがEntertainment Weeklyの25周年カバーストーリーで語ったのは、危機感ではなく夢だった。 25周年インタビューで語った「もっと開かれたXbox」 Xbox25周年に合わせ、Entertainment Weeklyが大型カバーストーリーを掲載した。現地時間6月22日に公開されたこのインタビューで、CEOのアシャ・シャルマ(Asha Sharma)氏はXboxの方向性をこう定義している。 もっとオープンなエコシステムを作り、もっと多くの開発者を招き入れ、もっと多様なゲームを揃え、もっと多くのプレイヤーを迎え入れたい。 そして、踏み込んだ発言が続く。 ゲームは、私たちが従来思い描いてきた形では、多くの場合もう手が届かなくなっている。アテンション・エコノミーや競合するサブスクリプションのせいで。 「ゲームは高すぎる」。新CEOの口からこの言葉が出ること自体に違和感はない。4月にGame Pass Ultimateを月額2,750円から1,550円に引き下げ、「高くなりすぎた」と自ら認めたのは

EA「AIで創造性が上がった」その10日後に3度目の解雇

AI

EA「AIで創造性が上がった」その10日後に3度目の解雇

EAの幹部が「AIの導入で退屈な仕事が減り、スタジオの創造性が上がった」と語ったのは6月8日。その10日後、同じ会社で2026年3度目のレイオフが始まった。カスタマーサポート、IT、採用部門。10年以上在籍したベテランも含まれていた。開発者の64%はAIが創造性を損なうと答えている。幹部の言葉とは正反対の数字だ。 何を語ったのか ローラ・ミーレ(Laura Miele)氏。EAに30年近く在籍するベテラン幹部で、6月8日時点ではEAエンターテインメント担当社長を務めていた。Summer Game Fest内のGame Business Liveで、司会のクリストファー・ドリング(Christopher Dring)氏に「AIツールは開発サイクルを短くするか」と聞かれ、こう答えた。「一部ではそうなるだろう。自分の目で見たものを、本当に信じている」。AIがパイプラインやツールから「摩擦」を取り除いた結果、プロトタイピングは速くなり、クリエイティブな議論にかかる時間も縮まったという。退屈な作業が減ったことで「創造性が本当に上がったと思う」。 スピーチの翌日にあたる6月9日、EAは組織

AI企業を巡る45億円訴訟が決着 争点と判決を整理

AI

AI企業を巡る45億円訴訟が決着 争点と判決を整理

マンハッタンの民主党予備選に、AI業界の対立する両陣営が合わせて約45億円を注ぎ込んだ。負けたのは標的にされた候補だけではない。金を出した側も、勝利宣言ができずにいる。 結果と、その奇妙な静けさ 現地時間6月23日夜、AP通信がニューヨーク第12選挙区の民主党予備選の当選確実を出した。勝者はマイカ・ラッシャー(Micah Lasher)氏。開票率94%の暫定結果で得票率39%、次点のアレックス・ボレス(Alex Bores)氏が35%、ケネディ家のジャック・シュロスバーグ氏が約11%で続いた。 34年間この選挙区を代表してきたジェリー・ナドラー下院議員の引退に伴う後任選びだ。ラッシャー氏はナドラー氏本人、キャシー・ホークル州知事、マイケル・ブルームバーグ元ニューヨーク市長という民主党の主要人物から支持を得ていた。ブルームバーグ氏は約1000万ドル(約16億円)をラッシャー氏を支持するPACに投じている。 だがこの選挙を全米の注目の的にしたのは、ラッシャー氏の勝利ではない。ボレス氏をめぐるAI業界の代理戦争だった。 約45億円が一つの選挙区に集中した理由 ボレス氏は元パラ

セキュアブート証明書が今日失効。PCの確認は1分で終わる

セキュリティ

セキュアブート証明書が今日失効。PCの確認は1分で終わる

セキュアブートの証明書が今日、期限を迎えた。2011年に発行され、15年間Windows PCの起動を守ってきたものだ。Microsoftは期限直前に証明書の配信対象を大きく広げており、6月のWindows Updateを適用済みのPCなら、ほとんどは何もしなくていい。ただし「ほとんど」に入っているかどうかは、自分で見ないとわからない。 今日、何が起きたのか 本日失効したのは、Microsoft Corporation KEK CA 2011というセキュアブートの証明書だ。続いて6月27日にMicrosoft Corporation UEFI CA 2011が、10月19日にはMicrosoft Windows Production PCA 2011が失効する。 KEKは、セキュアブートの署名データベース(DB)と失効データベース(DBX)の更新を承認する「監督者」にあたる。これが失効すると、Microsoftは古い鍵で新しいDBX更新(悪意あるブートローダーのブロックリスト追加)に署名できなくなる。既存の署名済みパッチはそのまま機能するが、今後見つかる脅威への対処手段が一つ減

トーバルズが「不快」と一蹴したのは機能ではなく、ファイルの置き方だった

Linux

トーバルズが「不快」と一蹴したのは機能ではなく、ファイルの置き方だった

新しいコードに不具合があったわけではない。遅いわけでもない。リーナス・トーバルズ(Linus Torvalds)が「不快だ」と書いたのは、ファイルをディレクトリのどこに置くか、その一点だった。そして彼が引き合いに出したのは、半世紀前の技術だった。 機能には何も言わなかった 舞台はLinuxカーネルの次期版、7.2のマージウィンドウ。sched_extと呼ばれる仕組みの更新が、トーバルズのもとに届いた。sched_extは、ユーザー空間で動くBPFプログラムとしてCPUスケジューラを書ける拡張可能スケジューラの枠組みで、6.12でカーネル本体に取り込まれて以来、ゲーミング性能の改善やスケジューラ研究の素早い試作に使われてきた。今回の7.2では、サブスケジューラ支援の開発が続いている。1つのシステムに複数のスケジューラを階層的に載せ、ワークロードごとに最適なものを割り当てる構想だ。マルチテナント環境のような場面で効いてくる。 トーバルズは、この機能のどれにも反対しなかった。コードは取り込んだ。ただし、取り込みながらこう書いた。 Please don't do this disgu