「ゲームは高すぎる」Xbox CEOが語る理想とリセットの現実
事業リセットを宣言し、大規模な人員削減が数日後に迫るXbox。そのCEOがEntertainment Weeklyの25周年カバーストーリーで語ったのは、危機感ではなく夢だった。
25周年インタビューで語った「もっと開かれたXbox」
Xbox25周年に合わせ、Entertainment Weeklyが大型カバーストーリーを掲載した。現地時間6月22日に公開されたこのインタビューで、CEOのアシャ・シャルマ(Asha Sharma)氏はXboxの方向性をこう定義している。
もっとオープンなエコシステムを作り、もっと多くの開発者を招き入れ、もっと多様なゲームを揃え、もっと多くのプレイヤーを迎え入れたい。
そして、踏み込んだ発言が続く。
ゲームは、私たちが従来思い描いてきた形では、多くの場合もう手が届かなくなっている。アテンション・エコノミーや競合するサブスクリプションのせいで。
「ゲームは高すぎる」。新CEOの口からこの言葉が出ること自体に違和感はない。4月にGame Pass Ultimateを月額2,750円から1,550円に引き下げ、「高くなりすぎた」と自ら認めたのはシャルマ氏本人だ。ただし今回の発言は、ハードウェアやサブスクの価格だけを指しているわけではない。「アテンション・エコノミー」に言及している点が鍵になる。
Candy Crushが答えなのか
同じインタビューで注目すべき発言をしたのが、Candy CrushおよびKingの責任者トッド・グリーン(Todd Green)だ。2023年のActivision Blizzard買収でMicrosoft傘下に入ったKingについて、グリーンは「自分をゲーマーだと思っていない人も含めて、すべての人を大切に扱うことを心がけている」と語っている。
ここにシャルマ氏の戦略が透ける。「ゲームが高い」という問題の解決策として、1,000ドル超のハードウェアや月額数千円のサブスクに依存しない層にリーチする。世界有数のユーザー基盤を持つCandy Crushは、「世界最大のエンターテインメント企業」を掲げるシャルマ氏の構想において無視できない柱だ。
シャルマ氏はEWのインタビューでCall of Dutyのフランチャイズ規模についても言及し、マーベル・シネマティック・ユニバースより大きいと主張している。Falloutのドラマシリーズ、Minecraftの映画、そして十数本にのぼる映像化プロジェクトが控えているという。ゲーム機を売る会社から、IPを軸にあらゆるメディアで収益を上げる企業へ。その構想は、少なくとも言葉のうえでは明確だ。
リセット宣言との温度差
問題は、この夢が語られた時期にある。
EWインタビューの約2週間前、6月10日にシャルマ氏とマット・ブーティ(Matt Booty)の連名でXbox Wireに公開されたメモは、まるで別の会社のものだった。Activision Blizzard Kingの買収を除いても、過去5年間で200億ドル以上を投じながら、年間収益はおよそ5億ドル減少した。今年度の利益率を示す指標は約3%にまで沈んでいる。
このまま続けることはできない。
半導体部品の価格高騰についても、メモは率直だった。シャルマ氏が2月にCEOに就任した時点でストレージ部品のコストは前年秋の2倍以上に跳ね上がっており、そこからさらに倍増。2027年のホリデーシーズンには2年前の5倍以上に達する見通しだという。
Xboxはスタジオ体制の拡大にも苦しんでいる。「サブスクリプション、ストリーミング、デバイスという複数の戦略に対応するためにスタジオを拡張した結果、過剰拡大してしまった」とメモは認めている。Compulsion Games、Double Fine、Ninja Theoryといったスタジオの処遇が交渉中であり、6月30日の会計年度末直後に大規模な人員削減が予定されていると複数の報道が伝えている。
2025年10月 Game Pass値上げ Ultimate月額1,450円→2,750円 2026年2月 シャルマCEO就任 ゲーム業界未経験の新トップ着任 2026年4月 Game Pass値下げ 月額2,750円→1,550円、CoD初日撤廃 6月10日 リセットメモ公開 年間収益5億ドル減、利益率3%を認める 6月22日 EWインタビュー 「ゲームは高すぎる」と発言 6月30日 会計年度末 大規模な人員削減が報じられている |
同じ週に並んだ二つの景色
EWのカバーストーリーは、エンターテインメント誌の読者に向けたものだ。ゲーム業界の内情に詳しくない読者に、Xboxの25年を祝い、映像化プロジェクトの広がりを伝えるための記事であり、その文脈で読めばシャルマ氏の発言は理にかなっている。
だが、同じ週に並べると景色が変わる。「ゲームは高すぎる」と語るCEOの足元で、690億ドルの買収を消化しきれず、スタジオを手放し、作り手を解雇する準備が進んでいる。「もっと多くの開発者を招き入れたい」という言葉と、傘下のスタジオが閉鎖対象に入っている現実が、同じ口から出ている。
矛盾だと断じることは簡単だが、もう少し冷たい目で見ると、これはXboxが「ゲーム企業」から「エンターテインメント企業」へ移行する過渡期の風景なのかもしれない。自前のスタジオを絞り込む一方で、Candy Crushのユーザー基盤やNetflixとのバンドル構想、映像化IPの拡大で収益の軸を移す。「ゲームは高い」という診断は正しい。しかしその処方箋が、ゲームを安くすることではなく「ゲーム以外で稼ぐ」ことだとしたら、コントローラーを握っている側はどう受け取るだろう。
折しも、Valveが6月22日に発表したSteam Machineの価格は1,049ドル(約17万円)から。メモリ高騰はXboxだけの問題ではなく、業界全体がハードウェアの値上がりに苦しんでいる。ゲームが「高い」のは事実だ。それでも、その言葉を発する資格を持つのが、ゲームを高くした当事者でいいのかという疑問は残る。
シャルマ氏の次の100日が始まる。言葉の行方は、7月以降の人事と決算で答え合わせになる。
参照元
他参照
関連記事
- Xboxがまた大規模な人員削減へ。200億ドル投資の果ての「リセット」
- Xboxモード、Windows 11への一般展開開始
- Game Pass値上げで「数百万人が去った」。Xbox幹部が認めた代償の重さ
- Xboxハードが33%減、Azureが40%増という分裂
- Microsoft Gaming廃止、Xboxが名前を取り戻す
- Xbox新CEOが認めた「Game Passは高すぎる」内部メモ流出
- Xbox独占撤回の噂を幹部が否定。しかし問題は噂の真偽ではない
- Xbox新CEO「値上げではなくイノベーションで応える」Project Helixの価格戦略が見えてきた
- Xbox、中国向け新Game Pass階層を準備か
- Xboxの真の敵はソニーではなくMicrosoft自身