Steam Machine、日本で即日完売。予約なし販売の功罪
18万9980円のゲーム機が、予告なく棚に並び、予告なく消えた。6月23日、Valveの据え置き型ゲーミングPC「Steam Machine」が日本の正規代理店KOMODO STATIONで販売を開始し、全4モデルが即日完売した。北米やヨーロッパでValveが抽選予約制を導入する一方、日本・台湾・香港には予約列すら用意されなかった。
全モデル完売、Waiting Roomだけが残った
KOMODO STATIONの商品ページには現在、「売り切れ」の文字が並ぶ。アクセスが殺到し、商品ページ自体がWaiting Room(待機画面)に切り替わった時間帯もあった。512GBモデル(18万9980円)、512GB+Steam Controllerバンドル(20万4980円)、2TBモデル(24万9980円)、2TB+Steam Controllerバンドル(26万4980円)。すべて税込、すべて完売だ。

北米では事情が違う。Valveは太平洋時間6月25日午前10時を締切にサインアップを受け付け、その後一斉に抽選を行う。当選者には6月29日から順次購入メールが届く。1世帯1台の制限があり、決済情報と配送先の重複チェックも行う。Steam Controllerの発売時に起きた即時完売と決済障害が、この仕組みの背景にある。
日本にはその仕組みが用意されなかった。KOMODO STATIONは先着順の通常販売で対応し、在庫は短時間で消えた。初期在庫がどれだけあったのかは公表されていない。需要が想定を超えたのか、供給がそもそも少なかったのか。おそらく両方だろう。
18万9980円は高いのか
Steam Machineの価格は、Valve自身が「当初の目標から外れた」と認めている。メモリとストレージの世界的な価格高騰が直撃した。512GBモデルの米国価格は1,049ドル。1ドル≒161円の現在、単純換算で約16万8900円になるが、日本価格の18万9980円は消費税10%込みだ。税抜で約17万2700円。米国価格との差は実質的に小さい。
それでも高い。PS5デジタルエディションは8万9980円、日本語専用モデルなら5万5000円で買える。PS5 Proでも13万7980円だ。Digital Foundryのレビューでは、Steam Machineのゲーム性能はPS5とほぼ同等で、タイトルによってはPS5が上回る場面もあるとされた。価格が約2倍で性能が同等以下なら、ゲーム機としてのコストパフォーマンスは成立しない。
Valveはそれを承知の上で、あえて値下げしなかった。公式発表でValveは、従来のコンソールが採用してきたハードの赤字販売モデルを明確に否定した。ソフトやサブスクリプションで回収する方式は短期的には機能するが、「オープンなエコシステム」のほうが長期的には顧客の利益になるとしている。Steam Machineは部品コストそのままの価格で売られている。補助金なし。囲い込みなし。その代わり、ユーザーはSteamOSをWindowsに入れ替えることも、SSDやRAMを交換することもできる。PCとしての自由が、この価格の根拠だ。
「コンソールではない」という宣言の裏側
ここにSteam Machineの矛盾がある。Valveは「これはコンソールではない、PCだ」と繰り返す。しかし買う側はコンソールとして比較する。テレビに繋いで、コントローラーで遊ぶ。その体験はPS5やXboxと変わらない。違うのは、Steamライブラリがそのまま使えることと、月額課金なしでオンラインプレイができることだ。
長年Steamにゲームを買い続けてきた人にとって、その価値は大きい。何百本ものゲームが初日からすぐ遊べる。PS5を買えば、またゼロからライブラリを作り直すことになる。18万9980円は新規のゲーム機としては法外な価格だが、すでにSteamに何万円も投じてきた人にとっては、蓄積された資産をリビングの大画面に持ち出す鍵になる。即日完売という結果は、その層がこの価格でも動くと証明した。
再入荷の見通し
北米の予約抽選についてValveは「2026年末までに予約列を消化する予定」と述べている。待機リストに回された場合、購入は2027年にずれ込む可能性がある。部品調達の制約が続く限り、日本での再入荷も潤沢とは言い難い。KOMODO STATIONの商品ページは復旧しているが、全モデル「売り切れ」のまま、次の入荷時期は示されていない。
メモリ危機がゲーム機の価格を押し上げ、供給を絞り、買い方まで変えてしまった。Steam Machineの即日完売は、その渦中で起きた小さな、しかし象徴的な出来事だ。
他参照:KOMODO STATION
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