Windows 11、発表から5年。「未完成」のまま7割のPCに届いた現実
2021年6月24日に発表され、同年10月5日に出荷されたWindows 11が5周年を迎えた。批判と不満を浴び続けながら、このOSはいつの間にかWindowsの主流になっている。
「最後のWindows」の後継として
5年前の6月24日、Microsoftは「あなたの好きなものに近づけるOS」としてWindows 11を発表した。Windows 10は「最後のWindows」になるはずだった。6年以上にわたるWindowsバージョン間の空白は、Windows XPからVistaへの移行期を超え、同社の歴史上最長となった。
発表の約1週間前にプレビュービルドが流出し、世界中のユーザーが正式発表を待たずにWindows 11に触れた。中央寄せのタスクバー、丸みを帯びたウィンドウ、刷新されたスタートメニュー。見た目は新しかった。だが触った瞬間に気づく違和感もあった。タスクバーは動かせない。右クリックメニューは二重構造になり、従来の操作にワンクリック余計にかかる。
そしてTPM 2.0とセキュアブートの必須化。まだ十分に使えるPCが、ハードウェア要件を満たさないという理由だけでアップグレードの対象外になった。
拒まれたOS、居座ったOS
当初、ユーザーの反応は冷淡だった。発表から4年経った2025年初頭でも、StatCounterの調査ではWindows 10が60%以上のシェアを握り、Windows 11は後塵を拝していた。機能面の不満だけではない。毎月のWindows Updateが新たな不具合を持ち込む現実が、移行をためらわせた。
2025年1月のKB5074109は象徴的だった。Outlookがフリーズし、NVIDIA GPU搭載機で画面がブラックアウトし、一部のPCは「UNMOUNTABLE_BOOT_VOLUME」で起動不能に陥った。Microsoftは緊急パッチを矢継ぎ早に投入したが、パッチ自体がインストールに失敗する報告も相次いだ。アップデートを直すためのアップデートが壊れる。そんな光景が繰り返された。
転機は2025年10月14日、Windows 10のサポート終了だ。セキュリティ更新を受け続けるには有償の延長サポート(ESU)に加入するか、Windows 11に移行するしかない。選択肢が狭まった結果、2025年12月に約51%だったWindows 11のシェアは、2026年2月には約73%まで急伸した。5月時点でも約72%を維持している。好きで選んだのではなく、他に行き場がなくなったから乗り換えた。そういうユーザーは少なくないだろう。

5年目の方向転換
Microsoftは2026年に入り、目に見える態度の変化を見せ始めた。
3月20日、Windows+Devices部門を率いるパヴァン・ダヴルリ(Pavan Davuluri)氏がWindows Insiderブログに「Our commitment to Windows quality」と題した記事を発表した。パフォーマンス、信頼性、操作性の改善を2026年の最優先事項に据えると宣言し、スタートメニューの再構築、エクスプローラーの高速化、ドライバー品質の向上、アップデート管理の柔軟化など、具体的な項目を列挙した。
この裏で動いていたのが、社内コードネーム「Windows K2」と呼ばれるプロジェクトだ。2025年後半に立ち上がったこの取り組みは、「パフォーマンス」「クラフト(設計品質)」「信頼性」の3本柱を軸に、Windows 11の根本的な改善を目指している。新しいOSでも、大型アップデートでもない。「今あるWindows 11を、使いたいと思えるOSにする」ための開発方針の転換だ。
具体的な動きはすでに始まっている。5月にはタスクバーの位置変更とサイズ変更が復活した。MicrosoftはCopilotの露出を削減し、Snipping ToolやフォトからCopilotボタンを撤去した。WinUI 3への移行が進み、スタートメニューの起動は最大60%高速化されるという。Low Latency Profileの導入で、アプリ起動やメニュー操作時のレスポンスも改善された。6月19日にはWindows 11 26H2のInsiderテストが始まり、今秋の一般提供に向けて動いている。
注目すべきは、K2の開発思想が「機能を速く出す」から「品質を高めてから出す」に変わった点だ。Insider Programのチャネルを整理し、ベータチャネルでは段階的ロールアウト(CFR)を廃止。ビルドに含まれる機能が全員に同時に届くようになった。SteamOSをゲーミング性能のベンチマークとして掲げ、同一ハードウェアでの性能差を埋めにいく姿勢も明確にしている。
5年間の代償と、これからの5年
この5年で、Windows 11が失ったものは少なくない。Androidアプリ対応は打ち切られた。Teamsのタスクバー統合も撤去された。発表時に華々しく並べた看板機能の一部は、すでにこの世にない。
一方で、24H2以降のWindows 11は着実に地力を付けている。ファイルの展開やコピー速度の改善、Copilot+ PC向けのNPU活用、Xbox Modeの導入。そして今、K2による体質改善が本格化しつつある。26H2は24H2/25H2と同じコアを共有し、174KBの有効化パッケージ(eKB)で移行できる。大型アップデートのたびに環境が壊れるリスクは、少なくとも設計上は小さくなった。
ただし、K2が示す方向性が正しいことと、それが実際に届くことは別の話だ。Microsoftは過去にも何度か「品質重視」を宣言してきた。2026年6月の時点では、まだ成果が十分に蓄積されたとは言いがたい。6月10日配信のKB5094126でも、Office起動不能やHP製PCの起動不能が報告されている。宣言と現実のあいだには、まだ距離がある。
5年経って、Windows 11はようやく「出荷した時点で完成しているべきだったOS」を作り直し始めた。遅い。だが、やらないよりはずっといい。
Windows 10が6年かけて磨かれ、多くのユーザーに愛されたのと同じ道を、Windows 11が歩けるかどうか。その答えは、これからの1年で見えてくる。
参照元:Our commitment to Windows quality - Windows Insider Blog
関連記事
- HP顧客の3割がまだWindows 10を使っている
- Windows 11、「壊れたら戻せる」復元機能が一般リリース目前へ
- Windows 11の右クリックが遅い原因、Microsoftが正式に認める
- Windows 11、AIモデルの「削除ボタン」を準備中
- Windows 11の操作が速くなる更新が配信開始
- Ask Copilotがタスクバーに統合、2026年半ば
- Microsoft Store、法人の登録料も無料化
- Microsoftが32GB推奨を消した、RAM高騰の中で
- 放置したWindows PCは3時間の更新地獄に叩き込まれる
- Windows 11 26H2、Insiderで初めてバージョン表記に登場