岬 徹

テクノロジー分野を中心に2024年からYouTubeで約3,000本の動画を制作。登録者4万5千人超、Xフォロワー1万人超、noteフォロワー千人超。AI、半導体、PC、ゲーム業界について、一次資料やデータを基に分析を続ける。

岬 徹
OSSの署名・検証手順に問題 修正前に悪用可能性が実証

セキュリティ

OSSの署名・検証手順に問題 修正前に悪用可能性が実証

4か月、1,000パッケージ、週間ダウンロード合計5億。TeamPCPという脅威アクターが突きつけたのは、新しい手口ではなく、業界が長年見て見ぬふりをしてきた事実そのものだった。 既知の欠陥が、最悪の形で現実になった オープンソースの信頼モデルには構造的な欠陥がある。研究者も開発者も、それを知っていた。レジストリに公開されたパッケージの正当性を、ほとんどの組織は検証していない。CI/CDパイプラインは上流のコードを自動で取り込み、テストし、本番に流す。その連鎖のどこか一点が汚染されれば、下流すべてに広がる。 知っていて、直さなかった。 2026年2月末、TeamPCPがその穴を突き始めた。最初の標的は脆弱性スキャナーTrivy。Aqua SecurityのGitHub Actionsワークフローに残った未失効のトークンを利用し、公式リリースチャンネルを制圧した。セキュリティツールが、攻撃の入口になった。 そこから連鎖は止まらない。Trivyで盗んだ認証情報でCheckmarxのKICSを侵害し、LiteLLM、Bitwarden、TanStack、AntVへと波及した。5月

中国にASMLのEUV装置があるとの疑惑を検証 確認できる証拠と反証

半導体

中国にASMLのEUV装置があるとの疑惑を検証 確認できる証拠と反証

米商務長官ハワード・ラトニック(Howard Lutnick)氏がASML幹部に、同社のEUVリソグラフィ装置が中国に渡った可能性があると伝えた。ASMLは全面否定し、米側は証拠を開示していない。地球上で唯一のEUV装置メーカーに突きつけられたこの「疑惑」の裏で、商務省自身がASMLの独占に風穴を開ける投資を進めている。 証拠を見せない告発 ラトニック商務長官が一連の会合でASML幹部に懸念を伝えたと、6月19日に報じられた。ASMLのEUVリソグラフィ装置が中国に存在する可能性があるという。EUVは第一次トランプ政権以来、対中輸出が禁じられてきた技術だ。もし事実なら、ここ数年かけて構築された半導体輸出規制体制で最大級の違反になる。 ただ、この「懸念」は奇妙な姿をしている。米政府高官は、ASMLがEUV関連の部品や輸送機材を中国に出荷した証拠があると主張しているが、その証拠をASMLにも報道機関にも見せていない。商務省は、実際にEUV装置が中国の土地の上にあるのかという問いにも答えなかった。 ASMLの反論は具体的だ。同社はワシントンで「ASMLのEUV装置が中国に存在する兆

Sapphire NITRO+の焼けたアダプター、保証修理を拒否される

GPU

Sapphire NITRO+の焼けたアダプター、保証修理を拒否される

Sapphire NITRO+ RX 9070 XTで、また同梱アダプターが焼けた。今度の報告が厄介なのは、焼損そのものではなく、その後だ。保証修理を申請したユーザーに返ってきたのは、「カードは正常」という診断と、焼けたアダプターごと送り返されたカードだった。チェコのハードウェアフォーラムPCTuningで、経緯が報告されている。 「カードは正常」、焼けたアダプターは検査すらされず 報告したのはPCTuningフォーラムのユーザーGaGy氏。Ryzen 7 9800X3Dに750W電源(XPG CORE REACTOR II VE)、NITRO+ RX 9070 XTを280W設定で運用していた。電源にネイティブ12V-2×6ポートはなく、Sapphire純正の青チップ付き3×8ピン変換アダプターを接続。ラッチは正しくはまり、青い部分が見えなくなるまで奥まで挿してあったとGaGy氏は説明している。 Problémy s tavením konektorů 12VHPWR - Stránky 23 - PCTuning fórumPCTuningPříspěvek 6月初旬、B

犯罪の3件に1件がサイバーに。INTERPOL報告書が示す現実

セキュリティ

犯罪の3件に1件がサイバーに。INTERPOL報告書が示す現実

犯罪の3件に1件が、画面の向こうで起きている。INTERPOLが6月17日に発表したアジア太平洋地域のサイバー脅威評価レポートが、その現実を数字で示した。 犯罪の地図が塗り替わっている INTERPOLのサイバー犯罪局が、アジア・南太平洋サイバー脅威評価レポート2025/2026をシンガポールから公開した。18の加盟国から2024年1月〜2025年3月のデータを収集した報告書だ。浮かび上がったのは、地域の犯罪構造そのものの変質だった。 調査対象国の半数以上が、国内で記録された全犯罪のうちサイバー犯罪が30%以上を占めると回答した。画面越しの詐欺やランサムウェアが犯罪統計の主役になり始めている。かつて「犯罪」と聞いて思い浮かべた風景は、この地域ではもう通用しない。 数字が語る加速 報告書が並べるデータは、どれも一方向を指している。 最大の脅威はフィッシングとオンライン詐欺だ。1000人あたり月5.5人がフィッシングリンクをクリックしている。世界平均の約2倍。回答国の33%が年間1万件以上のオンライン詐欺を報告した。 ランサムウェアも止まらない。2024年に13万5000

OpenAI、ホワイトハウスAI政策の立案者を獲得。Anthropic規制の翌週に

AI

OpenAI、ホワイトハウスAI政策の立案者を獲得。Anthropic規制の翌週に

OpenAIが、トランプ政権でAI政策の中枢にいた人物を新チームの長に迎える。Anthropicが米政府の輸出規制で最新モデルを止められた、その翌週の人事だ。 「内側に入らなければ前に進めない」 ディーン・ボール(Dean W. Ball)氏が6月18日、OpenAIへの参加を発表した。入社は7月6日付で、OpenAIが新設するStrategic Futures(戦略的未来)チームを率いる。最高戦略責任者ジェイソン・クォン(Jason Kwon)氏の直属だ。 ボール氏はトランプ政権下でホワイトハウス科学技術政策局のAI・新興技術担当上級政策アドバイザーを務めた。2025年7月の「AIアクションプラン」の主要起草者であり、米国のAI政策の骨格を内側から書いた当事者だ。退任後はFoundation for American Innovation(テクノロジー規制緩和を掲げる中道右派のシンクタンク)のシニアフェローに復帰し、「Hyperdimensional」と題したSubstackでAI政策の分析を発信し続けてきた。OpenAI入社後もFAIには非常勤で残る。 Strategic

HandBrakeの多コア性能が覚醒。AMDが修正した2つのボトルネック

テクノロジー

HandBrakeの多コア性能が覚醒。AMDが修正した2つのボトルネック

64コアでも96コアでも、Threadripperを選ぶ理由は圧倒的な並列処理能力にある。だが、その全力を引き出せていなかったとしたら。 AMDのエンジニアがHandBrakeのソースコードに潜む2つのスレッディングボトルネックを発見し、修正をアップストリームに提出した。HandBrake 1.11.0以降にこの修正が入り、Threadripper PROで最大181%、Threadripper HEDTで最大215%のトランスコード性能向上をAMDが確認した。コアを増やしても速くならない、場合によってはむしろ遅くなる。多コアCPUの持ち主がもっとも聞きたくない事実が、ソフトウェアの設計上の制約として残っていた。 コアが増えると遅くなる逆転現象 AMDがThreadripper環境でHandBrakeをテストしたところ、コア数に応じた性能向上どころか、逆にパフォーマンスが低下するケースが見つかった。特に720pなど低解像度のワークロードで顕著で、性能が最大60%も落ち込む場面があったという。 原因は2つ。 1つ目は、HandBrakeが64論理プロセッサを超えるシステムを効

パルワールド開発元「ゲーマーはAIを望んでいない」。説得力はあるか

ゲーム

パルワールド開発元「ゲーマーはAIを望んでいない」。説得力はあるか

ポケットペアのパブリッシング・コミュニケーション責任者ジョン・バックリー(John Buckley)氏が、生成AIに対して改めて明確な拒否姿勢を示した。「ゲーマーはそれを望んでいない。望んでいないなら、それで終わりだ」。7月10日に正式リリースを控えた『パルワールド』の開発元から出たこの言葉を、素直に受け取れる人と、そうでない人がいる。 「うちにはアーティストがいる」 インタビューに応じたバックリー氏の論旨は明快だった。ポケットペアは生成AIを使っていない。社内に多くのアーティストを抱えており、彼らは自分の手で作ることを好んでいる。AIに置き換える理由がない、と。 コーディング支援としてのAIには可能性を認めつつも、ゲーム制作における生成AIの将来には懐疑的だ。「バブルとは呼びたくないが、どれだけ続くかは分からない。Steamだってある程度は押し返している」。 折しも今週開催中のSteam Next Festでは、参加タイトル約8,700本のうち約1,700本がAI使用を開示した。5本に1本。バックリー氏自身も、Next Festの出展タイトルでAI生成アセットを見かけるたび

Googleが支える世界初のAIアート美術館。6月20日開館

AI

Googleが支える世界初のAIアート美術館。6月20日開館

AIが生成したアートは「アート」なのか。この問いに、Googleは一枚の絵ではなく、美術館まるごとで答えようとしている。ロサンゼルスのダウンタウンに、AIアート専門の常設美術館「Dataland」が現地時間6月20日にオープンする。 2万5000平方フィートの「生きた美術館」 Datalandが入るのは、フランク・ゲーリー設計の複合施設The Grand LA。ウォルト・ディズニー・コンサートホール、ザ・ブロード、MOCAが並ぶグランド・アベニュー文化地区のただ中だ。 総面積は約3万5000平方フィート(約3250平方メートル)。うち展示スペースが2万5000平方フィート、残り約1万平方フィートを技術インフラが占める。総面積の3分の1近くがサーバーやプロジェクターの裏方に食われている時点で、ここが従来型の美術館とは根本的に違う空間だと伝わる。 共同創設者は、トルコ系アメリカ人のメディアアーティスト、レフィク・アナドル(Refik Anadol)氏とパートナーのエフスン・エルクルチ(Efsun Erkılıç)氏。アナドル氏は2018年にロサンゼルス・フィルハーモニックのアーカ

サムスン電子、ボーナス100倍格差に「黒い服」で抗議が拡大

テクノロジー

サムスン電子、ボーナス100倍格差に「黒い服」で抗議が拡大

サムスン電子のスマートフォン・家電部門の社員が、全身黒ずくめで出勤するという異例の集団行動に出ている。半導体部門との成果給格差への抗議は組合の急成長を呼び、法的闘争にまで発展しながら全国へ広がりつつある。 「同じ会社、同じ権利」 6月18日、京畿道水原のサムスン電子本社に、黒い服と黒いマスクを着用した社員の列ができた。スマートフォン、テレビ、家電を担うDX(Device eXperience)部門の社員による「黒い服出勤キャンペーン」だ。 韓国で黒い服は、葬儀や哀悼の場で身につけるものでもある。その色を職場に持ち込んだ意味は、説明するまでもない。 キャンペーンは6月10日にソウル江東の事業所で始まり、16日に慶北亀尾、18日に水原本社へと拡大した。昼食時には水原モバイル研究所前で社員が沈黙デモを続けている。今後も23日に光州、24日にソウル牛眠と、全国の事業所へ展開する予定だという。 1か月で10倍に膨れ上がった組合 キャンペーンを主導するのは、DX部門の社員を中心に結成された第3労組「動行(トンヘン)」だ。 5月の賃金合意をめぐる混乱の中で、約2600人だった組合員

SteamOS 3.8安定版公開。Steam Machine発表直前のOS整備が完了

Linux

SteamOS 3.8安定版公開。Steam Machine発表直前のOS整備が完了

3月にプレビューとして姿を見せたSteamOS 3.8が、現地時間6月17日、バージョン3.8.10として全ユーザーに届いた。Steam Machine対応、Linuxカーネル6.16、デスクトップモードのWayland標準化。3ヶ月のベータ期間を経た変更量は、パッチノートの長さだけで異例だと分かる。 発表5日前のOS整備 リーク情報によれば、Steam Machineの価格・発売日は6月23日に発表される可能性がある。6月30日に予約開始とも伝えられている。あくまで未確認の情報だが、発表の5日前にOS安定版を全ユーザーへ配信した事実は、ソフトウェアを先に仕上げる動きとして筋が通る。 パッチノート冒頭の「Steam Machineハードウェアの初期サポート」は、3月のプレビュー時点から存在していた一行だ。だが当時は言葉だけだった。安定版に載ったことで、ソフトウェア側の準備は完了段階に入った。 問題はハードウェア側にある。Valveは2025年11月の発表時、小売価格を1,000ドル前後で想定していたとされる。それがAI需要によるDRAM価格高騰で計画が崩れた。リーク情報では1

RTX 4090を装うプラスチック製偽造品が流通 外観と識別方法を確認

GPU

RTX 4090を装うプラスチック製偽造品が流通 外観と識別方法を確認

中古市場に出回る偽造GeForce RTX 4090に、新たな手口が加わった。GPUダイがシリコンですらなく、プラスチック。メモリもスクラップ。動く部品が一つもない張りぼてが、クーラーの下に隠されていた。 シリコンからプラスチックへ 中国のGPU修理チャンネル「修显卡的张哥」(Brother Zhang)が、故障品のASUS GeForce RTX 4090を1500元(約3万5600円)で買い取り、分解した。基板の上に載っていたのは、AD102-300-A1と刻印されたダイ。本来ここにはRTX 4090の心臓であるシリコンダイが収まるが、触れた瞬間に違和感があった。 creating a fake 4090 by repurposing 3080/3090 die is nothing new. whats new, however, is that this specific example uses

Metaのエンジニアリング組織再編 開発体制への影響を分析

AI

Metaのエンジニアリング組織再編 開発体制への影響を分析

20年かけて築いたエンジニアリング文化を、AI開発への焦りがわずか数週間で壊しつつある。代償はもう目に見える形で出始めた。 AIチャットボットが「鍵」を渡した 現地時間5月30日の週末、Instagramで異変が起きた。オバマ政権時代のホワイトハウス公式アカウント、米宇宙軍の最上級下士官のアカウント、Sephoraの公式アカウントなど、著名なプロフィールが次々と乗っ取られた。 手口は驚くほど単純だった。 攻撃者はVPNでターゲットの所在地付近に偽装し、MetaのAIサポートチャットボットに「アカウントが乗っ取られた。メールアドレスを変更してほしい」と頼んだ。それだけだった。チャットボットはそのメールアドレスがアカウント所有者のものかどうかを確認せず、攻撃者が指定した新しいアドレスに認証コードを送信した。パスワードリセットが完了し、アカウントは攻撃者の手に渡った。 フィッシングリンクも、マルウェアも、被害者のメールへのアクセスも不要。セキュリティ研究者のジェーン・ウォン(Jane Wong)氏も自身のアカウントを乗っ取られ、「知らないうちにパスワードが変更されていた」と報告し

Epic Gamesランチャー V2、起動5倍・復元6.5倍高速化へ

ゲーム

Epic Gamesランチャー V2、起動5倍・復元6.5倍高速化へ

Epic Gamesランチャーが「ゼロから再構築」される。リークされた内部資料で、Launcher V2と名づけられた次期バージョンの性能目標と12ヶ月ロードマップが明らかになった。起動速度は平均5倍、システムトレイからのライブラリ復元は平均6.5倍。具体的な数字を出してきたのは、今回が初めてだ。 「最悪」の自認から4ヶ月、具体像が出た 2月、Epic Games Storeのスティーブ・アリソン(Steve Allison)副社長兼GMが「ランチャーは最悪だ」と公言した。あれから約4ヶ月。Unreal Fest Chicago(6月17〜18日)の時期に流出した内部資料が、改修の全体像を初めて数字付きで示した。 フォートナイトリーカーのHYPEX氏がこの資料を投稿し、情報源としてLuKa氏(@LuKaOnIndeed)の名前を挙げている。スライドにはストアフロントの刷新、ランチャーの完全再構築、12ヶ月のロードマップ、サードパーティ向けパッチノート機能が並ぶ。 some other things: • Rebuilding the store from the groun

トランプ氏、テック企業トップからのメッセージを公開 会合で言及

テクノロジー

トランプ氏、テック企業トップからのメッセージを公開 会合で言及

マーク・ザッカーバーグ氏とジェフ・ベゾス氏は、2024年の大統領選でトランプ氏が勝利した後、こぞって歩み寄りを見せた。ファクトチェックの廃止、就任式への100万ドル寄付、大統領候補推薦の取りやめ。それらを受け取った当の本人が、裏でどうしていたか。来週出版される内幕本が記録している。笑っていた。 「テック企業の連中からのメッセージは信じられない」 ニューヨーク・タイムズの記者マギー・ハーバーマン(Maggie Haberman)氏とジョナサン・スワン(Jonathan Swan)氏による新刊「Regime Change: Inside the Imperial Presidency of Donald Trump」が、6月23日にサイモン&シュスターから出版される。約1000件のインタビューに基づく第2期トランプ政権の内幕本だ。 同書によると、トランプ大統領はザッカーバーグ氏やベゾス氏から受け取った媚びへつらうメッセージを周囲に見せ回り、嘲笑していた。トランプ大統領はハーバーマン氏に、テクノロジー企業のトップたちから届いたメッセージは「信じられないものだった」と語っている。 イ