Sapphire NITRO+の焼けたアダプター、保証修理を拒否される
Sapphire NITRO+ RX 9070 XTで、また同梱アダプターが焼けた。今度の報告が厄介なのは、焼損そのものではなく、その後だ。保証修理を申請したユーザーに返ってきたのは、「カードは正常」という診断と、焼けたアダプターごと送り返されたカードだった。チェコのハードウェアフォーラムPCTuningで、経緯が報告されている。
「カードは正常」、焼けたアダプターは検査すらされず
報告したのはPCTuningフォーラムのユーザーGaGy氏。Ryzen 7 9800X3Dに750W電源(XPG CORE REACTOR II VE)、NITRO+ RX 9070 XTを280W設定で運用していた。電源にネイティブ12V-2×6ポートはなく、Sapphire純正の青チップ付き3×8ピン変換アダプターを接続。ラッチは正しくはまり、青い部分が見えなくなるまで奥まで挿してあったとGaGy氏は説明している。

6月初旬、Battlefield 6のプレイ中にクラッシュが発生するようになり、コネクタを確認したところアダプター側に焼損が見つかった。カード側コネクタにも軽い焼け跡がある。GaGy氏はカードを保証修理に送った。
返ってきた回答は「カードは48時間のテストで正常と判断された。損傷があったのはアダプターだけとみられる」というものだった。保証修理は拒否。焼けたアダプターはそもそも検査対象にならなかったとGaGy氏はみている。カードはそのまま返送され、電源のネイティブケーブルで接続して使うよう求められた。
GaGy氏はフォーラムで「技術者はアダプターを見てすらいないのではないか」と疑問を呈し、「小売店の技術者が、メーカー同梱品をきちんと調べないのはおかしい」と書いている。カード側コネクタにも焼け跡があり、ネイティブケーブルに替えて使い続けることへの不安も隠さない。
保証修理が通らなかった初めてのケース
これまでの報告では、RMA対応の質に不満が出ることはあっても、保証そのものが拒否された例はなかった。
NITRO+ RX 9070 XTのアダプター焼損は2025年8月から報告が続き、VideoCardzの追跡では2026年4月時点で少なくとも公表ベース9件に達していた。Sapphireのエド・クリスラー(Ed Crisler)氏は2025年12月のインタビューで「当時確認できたのは3件で、原因はカードのコネクタや電源ではなくアダプターケーブルにある」と説明している。
ここに矛盾がある。Sapphireは原因をアダプターに帰しながら、そのアダプターを同梱し続けている。ATX 3.1対応電源を持たないユーザーのために、3×8ピン変換アダプターを箱に入れて出荷するのはSapphire自身だ。公式マニュアルにも、ネイティブ12V-2×6ポートがない電源ではこのアダプターを使うよう記載されている。
製品の一部として同梱した部品が焼けたとき、「アダプターが原因です、カードは正常です」で終わるなら、保証とは誰のためにあるのか。
フォーラムが映す温度差
PCTuningの12VHPWRスレッドは479件を超え、GaGy氏の報告を受けて意見が割れている。
フォーラムモデレーターのHladis氏は、アダプターの曲げ方やATX 3.1非対応電源でのアダプター使用をユーザー側の問題と指摘し、ネイティブケーブルの使用を推奨する立場をとっている。一方でJan Olšan氏やDOC_ZENITH氏らは「メーカーがアダプターを同梱しておいて、焼けたらユーザーのせいというのは通らない」「99%のケースでケーブルは多少曲がる。曲げるなという方が非現実的だ」と反論している。
フォーラムで交わされている論点は、そのまま12V-2×6コネクタの設計上の弱点と重なる。安全マージンの狭さ、取り付けの繊細さ、曲げへの脆弱性。20年以上使われてきた8ピンコネクタでこの種の問題はほとんど報告されていない。DOC_ZENITH氏はスレッド内で「CPU用8ピンは300W定格で、実際にはそれ以上流しても焼けた例を誰も見たことがない。20年以上の実績がある」と指摘する。12V-2×6は600W定格だが、330WのNITRO+ RX 9070 XTでさえ焼損が繰り返されている。定格の半分強で焼けるコネクタに、安全マージンがあるとは言いにくい。
2025年8月 初の焼損報告 NITRO+ RX 9070 XTで初の12V-2×6焼損 10〜12月 報告が月単位で増加 全て同梱の青チップ付きアダプター経由 12月 Sapphire公式コメント 「確認は3件、原因はアダプター」 2026年2月 RMA対応への不満が表面化 傷だらけの交換品、2カ月で2回目のRMA 4月 公表ベース9件到達 PhantomLink Edition発売(電力監視機能搭載) 6月 保証修理を拒否される 48時間テストで「正常」、アダプター未検査のまま返送 |
何が変わり、何が変わっていないか
Sapphireは2026年4月、PhantomLink Editionを正式に発売した。マザーボード背面のコネクタから直接GPUへ給電する方式で、TriXXソフトウェアによる電力監視機能も載せている。コネクタの電流・温度をリアルタイムで監視し、異常があれば負荷を下げるか安全にシャットダウンする仕組みだ。
次の世代では改善が見込める。だが、今この瞬間、従来モデルのNITRO+ RX 9070 XTを使っているユーザーにとっては、何も変わっていない。青チップ付きアダプターはリコールされておらず、設計変更も発表されていない。同梱アダプター経由の焼損報告が9件以上公表されている現状で、アダプターを引き続き同梱する判断は、メーカーとしてどこまで持つのか。
約14万円のカードを買い、同梱のアダプターをマニュアル通りに接続し、数カ月後にアダプターが焼け、保証に出したらカードだけ検査されて「正常」と返される。この体験は、製品に何の問題もないことの証明にはならない。むしろ、焼損が起きる構造を残したまま「使い方が悪い」で処理される仕組みが機能していることの証明だ。
NITRO+ RX 9070 XTは設計も冷却性能も市場で高く評価されているカードだ。それだけに、電源まわりのこの問題が放置されていることが惜しい。Sapphireが次に出すべきは新製品ではなく、既存ユーザーへの明確な対応方針だろう。
参照元:PCTuning - Problémy s tavením konektorů 12VHPWR(GaGy氏の報告)
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