CorsairのDDR5に中国製DRAMが登場、AI需要が供給網を変えた

CorsairのVengeance DDR5モジュールに、中国メーカーのDRAMダイが搭載されていることが確認された。AIサーバー向けへの生産集中でPC向け供給が細るなか、欧米の主要ブランドが中国製DRAMへシフトした初の明確な事例となる。

CorsairのDDR5に中国製DRAMが登場、AI需要が供給網を変えた

CorsairのVengeance DDR5モジュールに、中国メーカーのDRAMダイが搭載されていることが確認された。AIサーバー向けへの生産集中でPC向け供給が細るなか、欧米の主要ブランドが中国製DRAMへシフトした初の明確な事例となる。


CorsairのDDR5に長鑫存儲のダイが搭載される

Corsairが販売するVengeance DDR5-6000モジュールに、中国のDRAMメーカー・長鑫存儲(CXMT)製のダイが搭載されていることが、CPU-Zのスクリーンショットで明らかになった。

対象モジュールは16GB・6000 MT/s、タイミング CL36 のスペックで、電圧は1.1〜1.35V。AMD EXPOとIntel XMPの両プロファイルに対応する。CPU-Zのメモリ情報には「DRAM製造元:ChangXin Technologies」と表示されており、製品番号には「-CN」の文字が入っている。この「-CN」表記については、中国市場向けの試験生産品である可能性を示すとの見方もある。Corsairは現時点でCXMT搭載製品のグローバル販売を公式に確認していない。

従来、CorsairのDDR5製品はサムスン、SK Hynix、マイクロンの3社からDRAMを調達してきた。今回の確認は、その供給体制に変化が生じていることを示す。

AI需要がPC向けDRAMの供給を圧迫

背景にあるのは、AIサーバー向けメモリ需要の爆発的な拡大だ。

サムスン、SK Hynix、マイクロンの3社は、HBM(広帯域メモリ)やLPDDR5XといったAI向け製品の生産を優先している。これらはデータセンター向けGPUに使用される高単価の製品で、各社の設備投資もそちらに集中している。結果として、PC向けDDR5の供給量が絞られ、価格が上昇している。

AI向けHBMの需要増に伴い、世界のDRAM大手3社はPC向けDDR5の生産ラインを縮小している。この需給の歪みが、欧米のPCブランドに調達先の見直しを迫っている。

この状況をCXMTが埋め始めている。同社はDDR5の開発・生産を加速させており、最大8000 MT/sに対応するダイと、16Gb・24Gbダイ密度の製品を提供している。CXMTと同じく中国のNANDメーカーであるYMTC(長江存儲)とともに、ウェーハ生産能力の倍増計画も進行中だ。

DRAM主要4社の供給姿勢比較
サムスン SK Hynix マイクロン CXMT
(長鑫存儲)
AI向けHBM
生産の優先度
最優先 最優先 最優先 開発中
PC向けDDR5
供給の方向性
縮小傾向 縮小傾向 縮小傾向 拡大中
Corsairへの
DRAM供給
従来からの
調達先
従来からの
調達先
従来からの
調達先
2026年5月
初確認NEW

スペックは既存品と同等

今回の確認で注目される点の一つは、スペックの水準だ。

当該モジュールのタイミングCL36は、サムスンおよびSK HynixのAダイを使用した同スペックのVengeanceキットと同等のレベルにある。

これは、同価格帯での代替が技術的に成立しうることを意味する。CXMTの製品がKingBankというメーカーのキットに使用されたケースでは、Zen 5プラットフォームでのゲーミング性能に明らかな問題は見られなかったという検証結果も存在する。

一方で、CXMTが欧米市場でどこまで通用するかを見極めるデータは、まだ十分に蓄積されていない。「-CN」の製品番号が示すように、今回のモジュールが一般市場に流通しているのか、地域限定の試験品なのかも現時点では判然としない。

規制の不確実性は残る

CXMTを取り巻く規制環境は、単純ではない。

同社は2025年初頭に米国防総省の Section 1260H リスト(「中国共産党の軍事企業」と認定された企業のリスト)に掲載されたが、その後同年内に削除されている。これにより、米国防総省の調達契約面での障壁は一定程度緩和された。ただし、エンティティリスト(商務省の禁輸リスト)には掲載されておらず、現時点でCXMT自体への直接制裁はない。

中国DRAM/NANDメーカーの米国規制ステータス
規制リスト CXMT
(長鑫存儲・DRAM)
YMTC
(長江存儲・NAND)
Section 1260H
(国防総省
軍事企業リスト)
2025年初掲載
→ 同年内に削除
2024年掲載
→ 2025年に削除
エンティティリスト
(商務省
輸出規制リスト)
非掲載 2022年より
掲載中
※ Section 1260Hからの削除は国防総省の発表による。エンティティリストは米商務省の公開情報による。

とはいえ、米国内でMicronがCXMTへの規制強化を議会に求めていることや、関連立法の動きがあることを踏まえると、状況は流動的だ。Corsairのような米国籍企業がCXMT製品を広くグローバル展開するには、規制リスクの精査が避けられない局面が来る可能性がある。

構造変化の入り口

「中国製DRAMは地域ブランドのもの」という認識は、今回の確認で揺らぎ始めた。

Corsairが世界的に認知された米国のPCコンポーネントブランドだ。そこにCXMTのダイが使われたという事実は、中国製DRAMが製品の差別化要素ではなくコスト・調達上の解として機能し始めていることを示している。CXMTとYMTCは今年、ウェーハ生産能力を倍増させる計画を進めており、その規模が実現すれば、Corsair以外のブランドでも同様の動きが出てくる可能性は排除できない。

もっとも、今回の確認は一つのモジュールのスクリーンショットに基づくものだ。Corsairが本格的に CXMTへの調達シフト を進めているのか、それとも一時的な代替措置なのかは、まだわからない。一枚の画像が業界の転換点になるのか、例外で終わるのかは、続報が決める。


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